子どもにとっての「遊び」とは ~「遊び」の発達心理学的役割~

子どもの生活の中で多くの時間を費やす「遊び」。遊びは子どもの成長にとってとても重要な成長の役割を果たします。子どもが遊びによってどのような成長を果たしているのか、ママやパパが意識をすることで、より多くの異なった体験をさせ、様々な成長を促すことが出来ます。

子どもの心と脳の成長の上で、幼児期に一番大切にしたい「遊び」の役割について解説します。

子どもの「遊び」について考えたい理由

砂遊びをする子

子どもにとって「遊び」とは、成長のために必要なことが全て詰まったものです。産まれたばかりの赤ちゃんは、原子反射という生物学的な反射によって生きていける状態で生まれてきます。その後、「遊び」を通して様々なスキルを身に着けて成長していくのです。子どもにとっての遊びは、授乳や食事、睡眠、などと同様に成長に不可欠な大切な要素のなのです。

しかし、現実には科学技術の急速な発展や、生活様式の変化より幼児が身体を動かす機会が減少傾向にあります。そして、その変化はこのようにも危惧されているのです。

 幼児にとって体を動かして遊ぶ機会が減少することは、その後の児童期、青年期への運動やスポーツに親しむ資質や能力の育成の阻害に止まらず、意欲や気力の減弱、対人関係などコミュニケーションをうまく構築できないなど、子どもの心の発達にも重大な影響を及ぼすことにもなりかねない。

文部科学省 幼児期運動指針 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm

これは、逆に言うと遊びの役割と成長させていきたいスキルを意識することによって、子どもの心や身体の発達を促すことも出来るということでもあります。まずはママが「遊びの役割」を知ることが大切です。

遊びの役割

 

子どもは生まれて間もなくから、そのステージに合った遊びを絶えず続けていきます。子どもが遊びを通して、どのようなスキルを発達させていっているのでしょうか。

1.体力・運動機能の発達

落ち葉遊びをする子

まずは身体を動かすことによって、子どもは体力をつけていきます。少し動くだけでも疲れて寝てしまう赤ちゃんが、1,2年で走り回って遊べるようになるほど体力をつけます。

また、産まれてから3歳までに脳の80%が作られるほど、幼少期には神経機能の発達が著しいです。生まれてから3歳までに遊びの中で様々な運動刺激を受けることによって、動きや力のコントロールなどを習得することが出来るのです。

子どもは、まずは肩や腕、脚などの大きな動きをするようになり、徐々に手首や指先など細かい動きも出来るようになります。子どもの発達に合わせて、様々な運動刺激をあたえてあげられるのが「遊び」なのです。

子どもは成長と共にお気に入りの遊びが変化します。高い所に上りたがったり、本棚から全部本を落とすことをひたすら繰り返したり。ママとしては「危ないからやめさせないと!」「片づけが大変だからやめて!」と思うかもしれませんが、子どもは運動機能を成長させるために特定の運動を繰り返し行っているのです。

子どもが今伸ばしたい運動機能がどのようなことなのか、よく観察して安全に、ママにとってストレスにならない環境を提供してあげたいですね。

2.興味や好奇心を高める

家遊びをする子

遊びは誰かから強制的にさせられるものではなく、子どもが自ら進んで行うことです。遊びはいつも、その子どもの興味があることで行われます。何かに対して興味関心を示し、それに注意を向けていく、という子どもの意欲的な心が成長する大切な役割があるのです。

自分からやりたい、という自発性や何かに好奇心を持つということは、なかなか外から教えにくいことです。兄弟や親、お友だちが楽しく遊んでいる様子を子どもに見せてあげることは出来ますが、実際にその子が興味を示すかどうかまでは子ども次第。

この貴重な興味や好奇心、自発性を育てていくのが「遊び」の役割でもあるのです。子どもは大人とは大きく異なる視点を持ち、大人にとっては「つまらないこと」に興味を示すことも多々あります。

せっかく動物園に連れていってあげたのに、展示されている動物ではなく、足元を這うアリやダンゴムシにばかり興味をしめすなんていうこともよくあります。

親としては、せっかく動物園に連れてきたのだから、と象やキリンに注意を向けようとしたくなりますが、まずは子どもが興味を示しているアリの観察の時間も大切にしてあげたいですね。

3.社会適応力の発達

子どもが少し大きくなってくると、一人遊びから徐々にお友だちと一緒に遊ぶようになります。

  • 他の子のオモチャが欲しくなったときに突然奪うのではなく、「貸して」と言う
  • ぶつかってしまったら「ごめんね」を言う

などということから、見立て遊びやごっこ遊びの中でコミュニケーションを取るようなります。

お友だちと遊ぶ中で、自分の要求ばかりは通りません。そのやりとりの中で、自己を制御することも学びます。幼稚園生では、遊びの中でのルールを作ったり、そのルールを守ることなど、様々な社会性をのばしていけるのが「遊び」なのです。

お家で遊んでいると、ごっこ遊びに誘われて、戸惑ってしまう親もたくさんいますが、ごっこ遊びは社会の凝縮です。親自身がごっこ遊びの中の役割次第でいつもとは違う立場から子どもに様々な気づきを与えられるチャンスでもあります。

役になりきって、真剣に「演じる」ことで子どもの社会性が向上します。何時間も付き合うことは難しいかもしれませんが、15分や30分だけ、など子どもと時間の約束をした上で、その時間は女優になったつもりで全力でごっこ遊びに付き合ってあげたいですね。

4.認知的能力の発達

自由に遊ぶ子ども

遊びの中で、子どもは状況を判断したり、予測するなどの思考力、そして必要に応じて身体を動かす指令を脳内で出すなど、脳内の多くの分野の発達を促進しています。

遊びの中で想像力を働かせ、新しい遊びを創り出すこともあれば、見立て遊びの中では四角い積み木が食べ物にもなれば家にもなり、船にも何にでもなります。このような豊かな創造力を育むことが出来るのが「遊び」なのです。

大人は、オモチャなどを「こう遊ぶもの」という固定観念を多く持っています。ボールを落として遊ぶオモチャ、グルグル回して遊ぶオモチャ、など確かにオモチャを作った人や、それを使わせたいと思った大人には「こんな風に遊んで、こんな機能を成長させたい」という想いがあることも多いです。

しかし、この枠に当てはめないで自由に遊ばせてあげることが、子どもの想像力や独創性、創造力を育むことになるのです。

子どもがオモチャや道具を用途以外の使い方で使っている場合も、子どもの命や大けがに繋がるような場合でない限りは、見守ってあげる姿勢も大切にしたいですね。

まとめ

子どもの遊びには、こんなにもたくさんのスキルを伸ばせる可能性が秘められていたのです。どんな遊びを与えてあげられるのか、ということが子どもの成長にも大きく影響してきます。

子どもがどんな発達段階にあり、どんなことに興味を示しているのか、そして今どんな遊びが子どもに適しているのかを適切に捉えながら、その時々にあった「遊び」を子どもに提供していってあげたいですね。

【参考文献・サイト】

文部科学省 幼児期運動指針
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm

厚生労働省 保育所保育指針解説 序章 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b_0002.pdf

ABOUT US
久保田 由華心の相談室 こころラボ 代表
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。
これまでに9500ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。
その活躍からメディアからの取材や出演多数