社会激変の影響〜子どものストレス反応とその対応〜

ストレスを受けた子供

世界的に感染症が大流行することによって、社会として「生活の仕方」が変わらなくてはならないような変化がありました。ママやパパのお仕事の勤務形態が変わったり、休日の過ごし方が変わったり、おじいちゃん・おばあちゃんに会える頻度が変わったり、と日常生活に影響の出ているご家庭が多いと思います。

こちらの記事ではそんな生活の変化から、子どもたちが受けるストレスやそのストレス反応への対応についてお伝えします。

ストレスとは?

そもそもストレスとは何でしょう。

ストレスとは、もともとは物理の用語で、何か物が外から力をうけて歪んでいる状態のことを表していました。そして、心理学や医学において、心や身体に外から受ける刺激ストレッサーといい、心や身体がそれらのストレッサーに適応しようとして現れる状態のことストレス反応といいます。

「ストレス」と聞くと、「悪いもの・ない方がいいもの」と思われる方もいますが、このストレス自体は悪いことではありません

適度なストレスは人間にとって必要ですし、そのストレスを克服することで成長にも繋がります。

子どもにとってストレスになり得ることには以下のようなことがあります。

  • 妹や弟の誕生
  • お引越し
  • 幼稚園や保育園への入園
  • 進学や進級
  • 新しい場所へ行く
  • 知らない人に会う
  • ママから離れる
  • 日常と違うことをする

などなどです。
人生においての嬉しい出来事もストレスになっているのです。

子どものストレス反応

子どもも大人と同じようにストレスを受けますが、その現れ方は大人とは違います。このストレス反応は、大人のストレス反応の個人差が大きいように、子どもも個人差が大きいですが、以下のような子どもならではの特徴もあります。

子どもはまだことばで表現することが未発達のため、ことばの代わりに身体の症状となって現れたり、行動として表現することがよくあります。

身体にあらわれるストレス反応の例

  • お腹が痛い
  • 食欲がない
  • 眠れない

行動にあらわれるストレス反応の例

  • 泣く
  • 怒りっぽくなる
  • 落ち着きがない
  • ぼーっとしている
  • ママから離れない
  • 赤ちゃん返り

心にあらわれるストレス反応の例

  • 不安
  • イライラ
  • 気持ちの落ち込み

その他、なんだか漠然としているけれど「いつもと様子が違う」とママが感じる時は、ストレス反応である可能性もあるので、普段以上に注意をしてみてあげてくださいね。

ストレス反応への対応

母に抱かれて安心する子

子どもはまだ「自我」が未発達なために、自分で自分の心を守るシステムが出来上がっていません。そのためにストレスから受ける影響が大人よりも深刻になることもあります。

一方で、子どもの適応力や回復力はとても優れているので、適切なサポートを受けられれば回復への期待も大きく持てます。

子どものストレス反応が見られた時には、以下のような対応を心がけてください。

1. 子どもの好きなことを思いっきりさせる

大人も同じですが、ストレスが溜まった時には発散することが大切です。
子どもの好きなことを思いっきりさせてあげることによって、ストレスを発散させ、心のバランスを取り戻すことが期待できます。

2. 日中、身体を動かす遊びをたくさん取り入れる

好きなことが集中力の必要なことだったり、好きなことに取り組むのが難しければ、日中に身体をたくさん動かすのもいいでしょう。

人間の心と身体は繋がっています。心の中にあるモヤモヤしたストレスを、身体を動かすことによって消化させることも出来ます。

大人でも、ストレス発散にスポーツをする人もたくさんいますよね。心地よく身体が疲れて夜にグッスリ眠れば、心を整えていくことができます。

3. ママやパパとのスキンシップや会話を増やす

子どもは、ママに抱きしめられることで大きな安心感を得ることが出来ます。抱きしめてあげたり、子どもの気持ちが少し落ち着くまで背中をトントンしたり、頭を撫でたり、スキンシップは子どもの心の安定剤になります。

中には触覚過敏であったり、スキンシップが苦手なお子さんもいますが、そんな時は会話をたくさんするのもいいでしょう。

子どもの話したいことをじっくり聞いてあげる。そのことによって、子どもは自分は大切にされている、話を聞いてもらう価値のある存在だと心のパワーをつけていくことが出来ます。

4. 子どもの気持ちを受け止め、寄り添う

上の会話をする、と連動していますが、子どもが気持ちを表現してきた時には、気持ちを楽にしてもらおうと「そんなことないわよ」「大丈夫、大丈夫」などと子どもの気持ちを否定する発言はせずに、子どもの気持ちをしっかりと受け止めて、その気持ちを共有してあげてください。

子どもがまだ話す準備が出来ていない時に無理に聞き出すことは逆効果となりますので、子どものタイミングで話したい時に聞いて受け止める、を大切にしてくださいね。

こんな時には専門家へ

心の専門家

何かストレッサーからの刺激を受けると、ストレス反応を示すのは正常な反応です。しばらくママが寄り添ってあげていることでいつものようなお子さんに戻ることがほとんどです。

しかし、以下のような状態がみられた場合には、小児科医・小児精神科医・公認心理師などの専門家に相談しましょう。

学校にお通いのお子さんがいるご家庭であれば、スクールカウンセラーに相談するのも良いと思います。面接予約の仕方などは担任の先生にお問合せくださいね。

・日常生活に支障が出ている (例えば、ご飯を食べられなくなった。眠れなくなった。など)
・自分や周りの人を傷つけるような行動がある時
・ママがあまりにも手に負えない時

幼少期の子どもは、自己中心性と言って、自分中心にしか物事を捉えられず、そしてことばで表現したり、自分の心の中のモヤモヤを形にすることがまだ発達中です。

そのために、ママからすると刺激(ストレスの原因)に対してストレス反応が大きすぎる感じてしまうこともあるかもしれません。

ひとつひとつのママの対応が、お子さんの心の成長へと繋がります。ぜひ、ママが困る時こそ母子ともに成長のチャンス!と捉えて一緒に乗り越えていってくださいね。

まとめ

子どもも大人もストレスを感じることは必ずありますし、ストレスを感じたらそれに対する反応が出ることも自然なことです。

子どもは、まだ心や身体が発達段階にあり、言葉による表現も出来ない子どももたくさんいます。子供の発達段階に合わせて、対応していくことで、お子さんの心の成長も促してあげましょうね。

【参考サイト】

文部科学省 心のケア

ABOUT US
久保田 由華心の相談室 こころラボ 代表
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。