子供に怒鳴ると脳が萎縮するの?怒鳴る影響の「本当」とは

子供 怒鳴る 脳

「子供に向かって怒鳴ると、子供の脳が萎縮してしまう」

「ひどく怒ると脳が変形する」

そんなことを、一度でも耳にしたことはないでしょうか?

育児中の筆者自身、子供を怒鳴ると脳が萎縮すると聞いたことがあります。とはいえ、育児中につい子供をきつく怒ってしまったり怒鳴ってしまったりしたことのあるママもいるかもしれません。

「うちの子は大丈夫かな?」と心配するママに向けて、今回は子供を怒鳴るとどんな影響が出るのか、そのリスクと対応法をご紹介します。

子供を怒鳴ると脳が萎縮するのは本当?

2歳児 怒る

早速、怒鳴ると子供の脳が萎縮するのかどうかについて考えていきましょう。リスクを正しく知り、「怒鳴ることが子供に及ぶ影響」を理解することが大切です。

不適切な怒りをぶつけ続けると脳に影響は出る

怒鳴ったり怒り任せに子供に冷たい言い聞かせを日常的に繰り返していると、当然脳に悪影響が出ます。「日常的に怒鳴る」というと虐待をイメージしますが、虐待を受けた子供の脳は傷つき、変形することが分かっています*1。

具体的に言うと、暴力や体罰を受けた子供は理性をつかさどる「前頭前野」の萎縮が見られます。前頭前野が萎縮すると、自制心が働かなくなり衝動的、暴力的な行動を起こすことが多くなるでしょう。

このように「子供を怒鳴ると脳が萎縮する」というのは、親に「子供を怒鳴ってはいけない」と教えるための例えではなく、実際に脳に影響が出ることは頭に入れておきたいものです。

子供の対人関係に支障が出ることも

不適切な怒りをぶつける子供への対応、いわゆる虐待の中でも「怒鳴る」のは子供に対する暴言に当たります。暴言を浴びせ続けると、脳の聴覚野が肥大化する可能性が高くなります*2。

聴覚野が肥大すると、主に語彙力の理解が失われ、大切な言葉や本質を聞き逃しやすく、会話を聞き取れないなど支障が生じます。ものごとへの理解力が低下し、対人関係に支障をきたすことも考えられるでしょう。

不安が募り「愛着障害」として現れることも

怒鳴るなどの不適切な怒りを受け続けた子供の多くが「愛着障害」を持つと言われています*3。

愛着障害とは、親との精神的・心理的なつながりをうまく築けていない状態を指すもの。小さな子供にとって自分を無条件に守ってくれ、理解してくれる親の存在は安心そのものです。子供は成長の過程で、さまざまなものに興味を持ち、失敗を繰り返しながら行動範囲を広げます。外部で受けた刺激は、安全な親の元に戻ることで精神や不安感が回復するのです。

しかし、親との関係が悪い状態だと、子供の戻る安全な場所がありません。常に不安が続き精神的に不安定になってしまいます。すると「挑戦してみよう」「冒険しよう」といった意欲が出にくくなったり、親に褒めてもらう・認めてもらうといったご褒美を感じにくくなったり、成功体験が得られなくなるのが愛着障害の子供がよく経験することです。

子供を怒鳴るシーンはよくあること。脳に影響の出ないやり方とは

親子 手をつなぐ

子供にとって悪影響が出る「怒鳴る」という行為。ですが、子供と向き合う中で一度も声を荒げたことがなくイライラをぶつけたことはない、という方は稀です。

この記事を読むママは、「子供に対して怒鳴ってしまった。心配だから解決法を知りたい」と思っているのではないでしょうか。子供を怒鳴ること、これは決して珍しいものではありません。問題は、子供を怒鳴り続ける脳に悪影響が出る、損傷してしまうという点です。

そこで、子供を「怒鳴る」のではなく他の方法で子供に言い聞かせできるよう、ママにおすすめの行動をポイントにしてまとめました。チェックしていきましょう。

なぜ「怒鳴る」の?根本原因を考えて解消する

怒鳴ってしまったことのあるママ、一体なぜ怒鳴ってしまったのでしょうか?

  • 何度も言っているのに言うことを聞いてくれない
  • パパとの関係が悪く、イライラしていた
  • 疲れが溜まっていて怒りの感情がこぼれやすかった

根本原因を考えてみると、「子供が何かをしたから」ではなく自身のコンディションが悪く、怒りをぶつけてしまった場合が多いかもしれません。

当然ママも人間なので、普段よりも疲れている時や機嫌が悪い時、気持ちが焦っていて余裕がない時は子供に対しての叱り・言い聞かせも強くなりがちです。何度も繰り返し怒鳴ってしまう場合は「なぜ怒鳴ってしまうのか」の根本原因を一度考えてみましょう

朝や夕方は家事が溜まっていて忙しいのなら、「自分は怒りやすくなっている」と自覚して家事の手を抜いたり、子供への言い聞かせは時間がある時に、と改めるのもひとつの手段です。パパとの関係が悪くイライラしていたら、夫婦関係を見直すと良いでしょう。「最近疲れているな…」と感じたら、一人の時間を意識的に作って自分自身をケアするのも大切です。

イライラの詳しい対処法は、こちらの記事をぜひ参考にしてください▼

「怒鳴る」を違う方法に変える工夫を

次は、怒鳴ってしまったシーンを思い返してみて、「違う方法で伝えられなかったかな?」と考えてみましょう。育児中の私自身、子供に怒鳴ってしまった経験はゼロではありません。

私が怒鳴ってしまったのは、子供に「着替えてね」と言っていたにもかかわらずテレビに集中し、言うことを聞いてくれなかったとき。朝の支度中で忙しく、気持ちが焦った私はつい「いい加減にしなさい!」と怒鳴ってしまったのです。

これは、私がやっていた家事の手を止めて、テレビの前に行き子供と視線を合わせて「着替えようか」と誘えば済んだ話。「ママも手伝うよ。〇〇くんの好きな服だよ、着替えよう!」と子供をやる気にさせる言葉がけも効果的ですよね。

子供がちゃんと話を聞いているかを確認し、目線を合わせてママのメッセージを伝えましょう。怒鳴って言い聞かせするよりもずっとうまくいきます。

子供への言い聞かせは1分以内で分かりやすく

ただ、「怒鳴りたくなくても声を荒げてしまうシーン」はあるのではないでしょうか。例えば子供に危険が迫っていたり痛みを感じていると「危ない!」「痛いよ!」と大きな声を出してしまいますよね。

「怒鳴らない育児」とは「子供を叱らない、自由にさせる育児」ではありません。当然、社会で生きるためにはルールやマナーを学ぶことは必須です。そんな言い聞かせをする場面では、長々と回りくどくしつこく話すよりも、1分以内に切り上げて分かりやすい言葉で端的に説明しましょう。

子供を怒鳴ると脳に影響が。ケアで治るの?

公園で遊ぶ 親子

子供を怒鳴ると悪影響が出るのは間違っていませんが、かといって「一度でも怒鳴ると取り返しがつかない」わけではありません。

怒鳴ったあとのフォローの仕方を知っておきましょう。

罪悪感を覚えるなら、子供に謝る

ひどく怒鳴ってしまったりきつく叱ってしまったり。「言い過ぎたな」「これは私がイライラしていたからだな」と罪悪感を覚えたら、子供に素直に謝りましょう。この時「ママは〇〇だったから怒鳴ったんだよ」と理由を添えるとよりよいです。

ただ、言ってはならないNGワードが「あなたがママを怒らせたんだよ」「あなたに腹を立てたから怒鳴ったんだよ」と怒鳴る理由を子供のせいにするもの。一見謝っていますが、結局怒鳴った原因を子供に押し付けています。

まずは子供に言い聞かせをし、子供の主張や不安を取り除いた最後に子供に謝りましょう。疲れていた、イライラしていた。どんな理由でも構いません。謝ったら最後に「これでおしまい」と言い聞かせの時間を知らせると、子供にとっても気分を切り替えやすいです。

スキンシップや同調行動でフォローする

脳科学の研究が進むにつれ、子供が受けた脳へのダメージは治療によって回復することが分かっています*4。回復に大切なのは「子供が安心する行動」です。

子供にとって心地よく安心感を与えられるスキンシップは、怒鳴ったあとのフォローになります。子供を抱きしめて、「大好きだよ」と伝えてあげても良いかもしれませんね。

また、同調行動も子供にとって安心感を与えます。同調行動とは、互いに呼吸を合わせる運動や行動のこと。例えばキャッチボールもそのひとつで、「投げるよ」と相手にコンタクトを取り、そのボールを「受け取るよ」と準備しますよね。

互いの呼吸を合わせることで、親子の動きがシンクロする同調行動によって、親子関係性が修復するのです*5。

このように子供との関係を深めるスキンシップ、同調行動を日常的に取り入れていきたいですね。「怒鳴るのをやめて子供に安心感を与える」これを習慣化すると、親子関係が良好に築けるようになるでしょう。

まとめ

子供を怒鳴ると脳が萎縮する。よく聞かれることですが、結論として脳の萎縮は一部分には起こりますし、日常的に不適切な怒りをぶつけていると子供にとって悪い影響が及びます。

ただ、だからといって「一度でも怒鳴ってはいけない」「叱らない育児が最適」というわけではありません。リスクは正しく知り、生きる上でのマナーとルールを教える場面では子供とうまく向き合うようにしましょう。

【参考】

*1 *3 【特集】“子どもの脳”を守れ 脳科学が子育てを変える | NHK健康チャンネル

*2 子どもの脳を傷つける親たち NHK出版新書 著:友田明美

*4 *5  見えてきた 子どもの脳を回復させる道筋 | NHK健康チャンネル

脳が変形するって本当!? 子どもの脳を傷つける “親のNG行為”

「言葉の暴力」は身体的暴力よりも「子どもの脳にダメージ大」 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン

キレてしまって子どもに悪い影響などが今後出ないか心配 | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。