「早くして!」子どもを急かす弊害と急かさない方法を【公認心理師】がお伝え

「早くして!」「急いで!」「早く早く!」
こんな声がけを子どもにしたことのないママはいないと思います。

中には毎日何十回も言っているママもいるかもしれません。

働くママであればなおさら、
そうでなくても出かける時間の決まっている朝の忙しい時間
ゆっくり遊び食べをしてないで、ご飯をサッサと食べて
ソファーでゴロゴロしてないでお着替え終わらせて、
保育園や幼稚園の準備を早くしてほしい!と思うのは、
大人としては仕方のないこと。

しかし、子どもを急かすことには弊害があります。

この記事では、朝の支度を急かすことの弊害と、
どのようにしたら急かさずに子どもと向き合えるかについてお伝えします。

急かすことの弊害

急かされて食べる子

1.指示待ちの依存的な人間になる

「急いで!」「早くして!」「あれして!」「これして!」
とママがいつも子どもに指示をしていると、
その子どもはどうなるでしょう。

ママの指示がないと何もしない子どもになるかもしれません。

せっかく何かに集中していたのに、
何かを自分のペースでやっていたのに、
ママの「何やってるの!早くして!」にその子どもの意欲は折られてしまいます。

ママとしては時間内に用意が出来るようになるために、
と思っているかもしれませんが、
子どもはまだ大人のように未来への予測をしたり時間概念を持った上で計算をして行動をすることは出来ません。

大人のように効率よく物事をこなせるようになるのは、
たくさんの経験と概念を身に着けてからです。

子どもがいま何に興味を示して何をしているのか。
まずは子どものことをよく観て理解することから始めたいですね。

2.待てない子どもになる

待てない子

「早く早く!」といつも言われている子どもは、
子ども自身も待てない子になります。

自分の思うタイミングでないと嫌。他者をコントロールしないと嫌。
そんな子どもに育ってしまいます。

子は親の鏡。
親が子どもに接するように、子どもは他の人に接していくようになります。

相手を思いやり、忍耐強い子どもになって欲しいのであれば、まずはママが急かさないことを大切にしたいですね。

3.子どもが不安になり、よけいに行動が遅くなる

子どもを急かすことによって、
子どもはバタバタした雰囲気に、ママの気のたった様子に不安を感じるでしょう。

そして、その不安感は子どもの行動を止めてしまいます。
気持ちが落ち着いていれば出来ることが出来なくなったり、
出来たとしてもミスや忘れ物をしてしまったりすることも増えます。

急かしているのによけいにグズグスされて、ママの怒りもますますアップ。

これは子どもにとってもママにとっても嫌なパターンですね。
子どもは急かされても、大人のように理性的に合理的に素早く行動は出来ないもの、と頭の中に留めておきましょう。

4.いつも急かしていると、子どもが聞き流すようになる

聞き流す子

これはどんな言葉にも当てはまることですが、
いつもいつも言われていることは、子どもは言われることに慣れてしまいます。

そして、聞き流すという術を身につけます。

スーパーや公園で、ママがすごい剣幕で怒っているのに、
全く気にしない子ども、見かけたことありませんか?

恐らくそんなママ達は、子どもによくすごい剣幕で怒っているのでしょう。
そんなママに慣れっこの子どもはママがいくら怒ってもへっちゃら。

そんなママは力づくでどうにかしようと思うので、
もっと怖い顔や大きな声で怒る

最初は効果あるけれど、また子どももそれに慣れてきかなくなる

ママがもっとエスカレート…

なんて悪いサイクルにはまらないようにしたいですね。

急かさないための方法

1.理由を伝える

「急いで!」「早くして!」とだけ言われて、なんで急かされているのかもわからずアタフタ。
急ぐ理由がわからなければ、少しでも早くしよう、という気持ちにならないのも当然。
どうして急ぐ必要があるのか、急ぐその理由も合わせて伝えていきたいですね。

2.予め時間を知らせておく

時計

未就学児はまだ時間の概念がわかっていないことも多いです。
どのくらいのペースで食べるのが急いでいることなのか
いまいちイメージ出来ていないこともあります。

オモチャの時計を7:30にセットしておいて「本物のお時計が同じところに針がきたら、お出かけだよ。」であったり、
「この時間までにご飯を食べ終わってね。」と時間が、
子どもがわかる形で伝えておきます。

3分や5分の砂時計を使うのもいいですね。
「このお砂が全部落ちるまで」という説明であれば、
低年齢の子どもにもわかりやすいものです。

時計の針が進む速さや、「あと5分」などの時間の感覚は、
経験を通して身につけていくもの。

この感覚がないうちから、時間だけ口で伝えたり、
ましてや、「急いで!」と漠然としてことを言われても子どもには伝わりません。

3.具体的に何をするか伝える

「さっさと用意してね!」というような、
漠然とした指示では具体的に何をするのかわからない子どもが多いです。

また、「顔洗ってお着替えしてご飯食べて!」などと複数の項目を伝えても、
それを記憶しておくワーキングメモリはまだ育っていません。

1~2歳の子どもであれば、ウォールポケットに

  • 歯磨きカード
  • お着替えカード
  • ご飯カード
  • トイレカード

などを用意して入れておき、
出来たら子どもが自分で裏返す
(裏にはできたよ!などとお気に入りのキャラクターがあると、子どもはやる気になるかもしれませんね)というように、

目に見える形にして次に何をしたらいいのか
子ども自身で確認できる環境を整えてあげると
子ども自ら自分でやることを確認してやるようになります。

そして、次はこれだね、と一緒に確認をするのもいいでしょう。

3~4歳の子どもで、
すでに朝の支度など一通りのことはわかっているような場合には、

「次は何をするのかな?」と子どもに考えさせる声掛けをすることで
子どもが「自分で考えてやる」ようになります。
具体的にやることがわかることで、子どももその行動を起こしやすくなりなす。

4.子どものモチベーションを上げるアプローチを考える

準備をする親子

大人も子どもも、誰かに怒られながら何かをさせられることは楽しくもなければやる気も起きません。

ママの想像力と柔軟さで、朝の支度を楽しくする工夫をしてみましょう。

子どもは競争が大好き。
「ママとお着替えどっちが先に終わるか競争ね!」など競争を取り入れることであっという間にお着替えを終わらせるかもしれません。

電車好きの子どもであればママが車掌さんの真似をして、
「え~、まもなくお着替えの時間が終わります。お出かけの方は、お急ぎください」なんてアナウンスがあったら、喜んでお着替えをするかもしれません。

ママの遊び心は子どもにもママにも気持ちのゆとりと笑顔を運びます。
お子さんがどんなことが好きで、どんな遊びになら乗ってくるのか。

ぜひ考えてみてくださいね。

まとめ

ただ頭ごなしに「早くして!」と急かすことは
子どもの成長にとってもいいことはありません。

ちょっとした工夫をすることで、子どもの自立を促しながら、
ママも気持ちよく朝を過ごせるかもしれません。

ママがイライラせずに、ニコニコしていることで、
子どもも元気に楽しく朝が始められるといいですね。

ABOUT US
久保田 由華心の相談室 こころラボ 代表
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。