子どもの自己肯定感を高める「褒め方」

「自己肯定感を高める」育児が大切というのはもはや育児の常識となっています。

「子どもを否定せずに褒めて育てる」ことがいいと言いますが、実際にはどのように褒めたらいいのでしょうか?具体的な褒め方がイマイチイメージがつかない方もいるでしょう。 こちらの記事では公認心理師*臨床心理士YUKAが子どもの褒め方についてお伝えします。

褒めることの弊害

子どもを否定することは、子どもの脳の成長さえも阻害するので、子どもを否定せずに、褒めれば子どもはのびる!と思っているママも多いと思いますが、実はそうではないのです。 スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授はこう言っています。

「褒めるという行動は、適切になされなければマイナスの力にもなりかねない。一種の麻薬のようになってしまい、生徒を強くするのではなく、他人の意見に依存した受け身の人間にしてしまう。」

受け身の人間…それはまさに多くのママが子どもに求める自主性、自発性、自己肯定感が高く、前向きで簡単には諦めないなどと正反対の人物像ですね。

どうして褒めることが受け身の人間に育ててしまうのでしょう。

自分は「生まれつき頭がいい」「天才だ」と思っている人たちは何か困難にぶつかった時に、簡単に諦めてしまうのです。

  • 困難に打ち勝つほど頭がよくなかったから
  • 何か環境が悪かったから

と考え、今ある状況を何か変えようという努力をしなくなるのです。

頭の良さは生まれつき備わっているものだから、それで対応出来ないことは仕方のないこと、と諦めるのです。

そして、自ら難しい課題に取り組んだりすることはせずにクリア出来そうな課題だけを選び、周囲に褒められることのみを求める「受け身人間」になってしまうのです。

褒める時のポイント

それでは課題を解決するための粘り強さを育てるためにはどのように褒めたらいいのでしょう。

それは子どもを褒める時に 「頭がいいね」と子ども自身を褒めるのではなく、 「頑張ったね」と子どもの努力を褒めることです。

1988年のドゥエック教授の論文ではこんな研究結果が報告されています。 小学校5年生128人にパズルをさせました。 Aグループの子どもたちはパズル完成後に「頭が良い」と褒められ Bグループの子どもたちはパズル完成後に「頑張ったね」と褒められました。 その後、このパズルより難しいパズルをするか最初のパズルと同程度の難しさのパズルをするか子どもに選ばせたところ、 Aグループの子どもたちの67%は簡単なパズルを選び、Bグループの子どもたちの97%は難しいパズルを選びました。

子ども自身を褒められた子は難しい課題を諦めるようになるのです。

何かに挑戦してうまくいったときは 「頭が良いから」「能力があるから」 でも、失敗したときは 「頭が悪いから」「能力がないから」なのです。 だから、難しいことは諦めるようになるのです。 そして、このような子どもたちは失敗をするとその後もうまくいかず、失敗をかさねていきやすいということです。

グリット(粘り強さ)

子どもに自信を持たせよう子どもの能力を伸ばそうと思って褒めていた言葉が逆効果に繋がっているとは… これは衝撃的な事実です。

一方で「頑張ったね」と過程を褒められた子どもたちは、

努力しさえすれば、たいていのことは上手くいく

というマインドが育っているので根気よく、努力するようになります。

グリット」と言われている力ですね。粘り強く、取り組み続ける強さと意欲のこと。 これが子どもにとって将来、成功に向かわせる大切は力となります。 困難にぶつかってもなんとかやり遂げようとする力それがしいては成功・達成へと導いてくれるのです。

子どもの共感力を育てる褒め方

これまで、グリット(粘り強さ)を育てるためには子ども自身ではなく、 その行動や過程を褒めることが大切であることをお伝えしてきました。

一方で、子どもの共感力や親切さを育てるためにはどのような褒め方がいいのでしょうか。

実は、その子自身を褒めることが共感や寛容さを育てることになることを示した研究もあるのです。 ある研究では子どもを二つのグループに分けて 1.子ども自身が人として褒められるグループ 2.行動を褒められるグループ

数週間後に寛容さを示すような機会を与えられたときに 1の人として褒められたグループの子ども達は行動を褒められたグループの子ども達よりも寛容な行動を示した、ということです。

また、3~6歳の子どもに 1.「お手伝いして」 2.「お助けマンになって」とお掃除の手伝いをお願いした時に、 1の行動を頼んだグループよりも2の「お手伝いマン」になることをお願いされたグループの方が実際に掃除のお手伝いをしてくれた、という研究結果もあります。

お荷物を運んでもらいたい時など「この荷物運んでくれる?」というよりも「お荷物屋さん、お願いします!」の方が子どもが実際にお手伝いをしてくれるということなのですね。 これは忙しいママの重要な豆知識になりそうですね。

まとめ

その子自身を褒めるか・過程や行動を褒めるか ちょっとした声掛けの違いがその子の心の育ち方を大きく変えてしまうのです。 これまでお子さんをどのように褒めてきましたか? 一度振り返りご自身の傾向と子どもの育ち方を見て 今、何を伸ばしていきたいのか。 それを意識しながら褒め方をママが意識していけるといいですね。

ABOUT US
久保田 由華心の相談室 こころラボ 代表
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。