赤ちゃんを出産した女性には、その日から24時間、365日育児というお仕事「ママ」という役割が産まれます。慣れない育児に戸惑いながらも、一生懸命に育児について調べたり、小児科医、保健師、などの専門家に相談しながらなんとかやっています。
それでも、突然訪れた「自分の時間のない日々」「いくらあやしても泣き止まない子ども」「頑張りすぎて疲れてしまった」ママは、子どもから離れる時間が必要な時もあります。
こちらの記事では、子どもを預けることについてのママの気持ちの背景と出来ることについてお伝えします。
子供を預けることへの罪悪感
多くのママの口から出る言葉が、子どもを預けることへの罪悪感です。
子どもが産まれた時から、毎日一生懸命にお世話をしてきているママほど感じる子どもを預けることに対する罪悪感。
この罪悪感を感じる背景には、どんなママの考えがあるのでしょうか。
- 母親なんだから、子どもの世話をするのは当然
- 専業主婦なんだから(育休中だから)自分がしなくては
- 子どもを預けるなんて、母親として「ダメ」な証拠
「母親が子どもを育てるべき」という思考や、「完璧な母親像」や「理想的な母親像」を自分の中で作り上げて、そこに自ら縛られてしまっていることがあるかもしれません。
もしかしたら、その思考や母親像はママ自身が一人で作り上げたものではなく、配偶者や親兄弟など身近な人とのやりとりの中で作り上げられたものかもしれません。
しかし、本来人間は「共同養育」するように進化を遂げてきたのです。
チンパンジーと人間の育児の違い
人間に最も近い類人猿と言われているチンパンジーは700万年前に、共通の祖先から分かれて進化をとげてきてきました。このチンパンジーと人間には、決定的な子育ての違いがあるのです。
それは、人間は他者と協力して共に子どもを育てる「共同養育」をし、チンパンジーは母親が5年間子どもに付きっきりで一人で育てることです。
人間の赤ちゃんは、他の人に預けられるように、体温が自分で維持出来る機能があり、母親は「共同養育」をするためにも、ホルモンの影響で不安や孤独を感じやすくなっているのです。不安や孤独を感じたら、仲間を頼りたい、一緒に育てたいと思うからです。
人間本来の形であれば、人を頼って、協力して子どもを育てる、というのが自然な形なのです。しかし、核社会の現代の日本では、身近に頼る親せきがいなく、「孤独感や不安」をママが抱えやすい環境にあるのです。
理想化された母親像
本来であれば「共同養育」する人間社会の子育て。
今では大家族で住んでいる家庭の方が少なく、都市部では地元から離れて実親にさえなかなか頼れない家庭もたくさんあります。
そんな家庭環境でも、理想化されている母親像。
- 子どものお世話が出来る。
- 家事もそつなくこなし、家がキレイ。
- 子どもに手の込んだ料理を作っている。
- 夫にも優しく出来て、関係が良好。
- いつも笑顔で明るいママ。
- ママ自身のオシャレにも気を遣っている。
- パパのお休みの日には家族で仲良くお出かけ。
こんな母親像が作られています。
SNSの普及により、より多くの「一般人」の生活を、誰でも簡単に垣間見られるようになりました。その中で作り上げられ、高められていく「キラキラママ像」。
著者もSNS発信をしている一人として、ママ達のアカウントを見させていただくことも多々ありますが、本当にスゴイ人が世の中にはいるのです。
- モデルさんかと思う程の子どもとママとのオシャレショット
- 離乳食なのに、可愛くデコレーションされた写真
- 作るのに朝何時に起きてるのだろうと疑問の思う手の込んだキャラ弁
- 乳幼児がいるように微塵も感じられないキレイに片付いた家や部屋の写真
- 乳幼児を連れて、オシャレなカフェやレストランでの食事
- 手作りの知育オモチャで子どもと遊ぶ様子
- ママがネイルやヘアをいつもキレイにしている様子
例を挙げているときりがないのでやめますが、本当に実在しているママかと思う程の「一般の方」がたくさんいます。
こんな様子を見てしまうと、「周りには出来ている人がいるんだから」と知らず知らずのうちに脳に刻み込まれ、勝手に全てを備え合わせた「理想の母親像」が出来てしまっているのかもしれません。
SNSはものすごく膨大な方の発信を短時間に凝縮してみることが出来るので、あたかも毎日こんなに「キラキラ」輝いているような誤印象を受けますが、多くの方の場合は、意図的であれ無意識であれ、「生活の中でキラキラ輝いた一瞬」だけが切り取られ掲載され、そのピースを続けることで、あたかも「いつもキラキラ」のような印象を受けているのです。
育児の基本~疲れたら休む!~
ママをしていると、それまで当然のこととしてやってきたことが出来なくなります。
- お腹が空いた時に食べたいものを食べる。
- 出かけたい時に出かける。
- 寝たい時に寝る。
- トイレに行きたい時にトイレに行く。
- 休みたい時に休む。
全て、自分一人の都合では出来なくなります。赤ちゃんが全てにおいて優先され、ママ自身のことはいつも二の次になってしまうからです。
それでも可愛い我が子のため、そのことに苦痛を感じないこともあります。
しかし、子どもを出産してママになったからといって、人間であることに変わりはありません。
寝不足であれば疲れはなかなか回復しませんし、育児に家事に頑張っていれば当然疲れも溜まります。そして「家庭」という閉ざされた時間で過ごすことが多くなり、他の人や社会との繋がりが希薄になると精神的にも辛くなってくることもあります。
そんな時には、ママは休む権利があります。子どもが寝ている間に家事を済ませなくていいのです。掃除や洗濯はサボってパートナーに任せてもいいのです。ご飯だって手を抜けるところは抜きましょう。
子どもと一緒だとなかなか休めないママは子どもと離れる時間も必要です。これまで四六時中一緒にいた子どもと離れることは、ママにとっても心配なことかもしれませんが、ママの心身の健康状態を整えてあげることが、それからの子どもとの生活にとって何よりも大切なことです。
日本では、医療の発展により、出産における母子の死亡率は非常に低くなっています。一方で、産後鬱で出産後1年以内に自死する方も何十人もいるのです。育児に慣れない、3,4か月までに自らの命を絶つ人もいれば、少し子どもとの生活に慣れてきたであろう8,9カ月以降に亡くなる方もいます。
そこまで症状は重くなくても、産後鬱は10人に一人の割合でなるとも言われています。自分とは無関係、と思っているメンタルの病気も、実は身近なところに潜んでいるかもしれません。
ママ自身の心身の健康は、家族の要となる大切な要素であることを、いつも頭の片隅に入れていてくださいね。
子どもを預ける
心身の疲れがたまった時には、子どもから離れる時間も必要です。とはいえ、誰にどのように預けたらいいのでしょうか?ママの周りに頼れる人は、誰がいますか?H31年度の厚労省の発表資料によると、2014年時点で、地域に子どもを預けられる人がいると答えたひとは27.8%。2003年時では57.1%だったものが半減しています。そこからさらに時間は経過しています。子どもを預けあれる人がいないと思っている人は、とても多いのが現状です。
パパ
一番身近なパートナー。子どもパパは、子育てを一緒にする人です。それまでの子育てにどのようにパパが関わっていたか、パパのタイプによって頼みやすさ/頼みにくさもありますが、「共に家族として子どもを育てる」上で、パパを信頼して子どもを預けることは必要です。
両親や義両親
近くに住んでいないと難しいですが、預けられる距離に住んでいるのであれば、頼ってみましょう。義両親などへは遠慮もあり、なかなか言い出しにくいかもしれませんが、パパに伝えてもらうなどするのもいいかもしれませんね。孫とだけの時間というのは、おばあちゃんやおじいちゃんにとっても貴重な時間。あまり長時間は難しいかもしれませんが、少し気分転換をする1,2時間ならばお願い出来るかもしれません。
託児サービス
行政のサービスで、一時預かりをしている所があります。保育園であったり、遊び場と併設していたり、施設は様々です。まずは、住まいの自治体に確認をしましょう。事前登録などが必要な場合も多いですし、予約の取りやすさなども違います。どれくらい前に予約しなげればいけないのかなど確認をしましょう。
一時預かり事業とは、保護者の出産・病気・冠婚葬祭、習い事、ショッピング、美容院などのほか、育児疲れで子供からちょっと離れたいときなど、理由を問わず利用できます。ただし、区市町村や施設によっては、就労や通院などの利用理由を要件としていることもありますので、詳しくは区市町村又は実施施設へ直接お問い合わせください
ベビーシッター
東京都では、待機児童対策としてのベビーシッター活用が推進されるなど、ベビーシッターへの利用も推奨されています。
子どもをマンツーマンでみてもらえる手厚さというメリットがある一方で、自宅に他人が子どもと二人っきりになることに対しての不安を感じる人もいるようです。ママが在宅で、他の部屋で休みながら、などの利用の仕方からすることで徐々に親子ともに慣れていくのもいいもしれませんね。
子どもを預けるメリット
子どもを預けるメリットは、ママの心身の健康の向上だけではありません。
パパや両親など家族に預けることは、その家族の「育児力」を育てることにもなりますし、また預けられた大人と子どもとの愛着関係も深まります。
保育のプロに預ける場合はどうでしょう。
子どもの月齢や、これまでのライフスタイルも大きく影響しますが、家族に預ける場合よりも、見知らぬ人・場所に預けられる場合、子どもはおそらく大泣きをするでしょう。ママと離れる不安に泣き叫ぶ我が子を見ると、ものすごく酷いことを子どもにしているのではないかと心苦しく思ったり、「自分勝手なママ」と自分自身を責める気持ちが出てくるかもしれません。
子どもにとって、ママと離れることは不安なこと。それは、これまでママがしっかりと子どもとの愛着関係を築けてきた証でもあります。子どもが泣いているのは、それまで自分が育児を頑張って、子どもと信頼関係を築けてたから。
そして、ママと離れることによって、子どもは新たな成長の階段を上ることになるのです。
プロとの時間は、子どもにとってもママとは違った大人から良い刺激を受ける絶好の機会です。初めは泣いていても、慣れれば喜んで行くようになります。
まとめ
初めての時は、子どもを預けることに心の抵抗を感じてしまうこともあるかもしれませんが、自分のために、子どものために、家族のために、子どもを預ける選択肢を大切にしましょう。
【参考・引用サイト】
東京都福祉保健局「一時預かり事業・定期利用保育事業について」 東京福祉保健局「ベビーシッター利用支援事業」