さまざまな情報であふれる現代を生きる子どもには、「何が自分にとって必要か」「自分は何がやりたいのか」を選び取る考える力が求められます。非認知能力を育む、自分で考える力を身につける…そんな子どもにとっての思考力を育てようと思っても、なんとなくうまくいかないと焦るママもいるかもしれませんね。
実はこの「考える力」は精神面の要素が強く働きます。単に子どもに「考えなさい!」「ママはお手伝いしないよ。自分でやって!」と突き放すだけではうまくいかないのです。
今回は考える力を育むために、子どものメンタルの鍛え方を解説。スタンフォード・オンラインハイスクールの校長を務める、哲学博士の星 友啓先生著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』を参考に、思考力と感情の関係性をご紹介します。
- 子どもの「考える力」がうまく身につけられないと悩むママ
- 自分の「安定したメンタル」にも自信がないママ
- 子どもの情緒が不安定、気分の浮き沈みが激しいと感じるママ
- 思考力とメンタルの関係性
- 安定したメンタルとは何か、構成要素からわかりやすく解説
- 親子でできる簡単なメンタルトレーニング
「考える力」と「安定したメンタル」は関連がある?
考える力というのは何となく理性が強く働く印象があり、「楽しい」「嬉しい」「悲しい」といったメンタルは関係のないもののようなイメージがされがちです。
しかし、もう一歩踏み込んで考えてみるとわかりますが、子どもがぐずぐずしているときに「落ち着いて考えたらわかるよ」「こことここから選んでね」と言っても、その思いは伝わるわけがありません。
まずは考える力にはなぜ安定したメンタルが必要なのかを解説します。
人間の理性と感情は表裏一体!
考える力には当然理性が必要です。興奮しきった状態では何も冷静に判断できず、思考が遮られてしまうからです。反対に、心が落ち着いた状態だと物事をしっかりと考えられるため、自分にとってよい選択ができます。
なんとなく考える力を身につけることを思うと、「感情を捨てて思考力だけを育てる」と思ってしまいますよね。鋼のメンタルも確かに大切ですが、今はそうした自分の心の声を無視して思考だけを追い続けるのではなく、「自分の気持ちを大切にしながら思考力を育む」ことがスタンダードな考えになっています。
子どもには考える力が大事!だから、泣いても悲しくても怒っていてもそれは我慢。こうした教え方では、実は逆効果です。
現代の子どもが生きる環境にはさまざまな「社会」がある
さらに「安定したメンタル」が求められるのは、考える力のためだけでなく子どもを取り巻く現代社会の特徴も背景にあげられます。
今の子どもが作る社会関係とは、
- 園や学校のお友達関係、ご近所の関係
- SNSや通信ゲームなど、オンライン上の人間関係
などなど、大人が把握できる範ちゅうを超えています。
小さなうちは「誰と仲良しか」「誰と喧嘩してトラブルを起こしたのか」を親が把握できますが、すぐにその助けは届かなくなります。ママの中にもSNSを利用する方も多いですが、オンライン上の人間関係を築くときにも、また現実とのやり取りとは違うストレス、異なる強いメンタルが必要になることがわかりますよね。
こうしたさまざまな「社会」を生きる子ども、さらに親の手助けが届かない複雑化した情報社会の中では、子どもが自ら「安定したメンタル力」を発揮し、自分自身で考える力が必要になるのです。
安定したメンタルを作る5つの基礎
では、考える力を育てる「安定したメンタル」とは何を指すのでしょうか。この基本的な構成要素を、アメリカの教育トレンドSEL(Social Emotional Learning)が提唱しています。
わかりやすい言葉に入れ替えてご紹介するので、次の表を参考にしてみてくださいね。
自分を理解する力 | 自分の弱い部分、強い部分を理解して「自分はできる!」と自信を持つ力 |
セルフ・マネジメント力 | ストレスや怒りの感情などを適度にやりすごす力 |
他者を理解できる力 | 他人の意見を受け入れる力、他人とは違う部分を認める力 |
人間関係スキル | 周りの人と上手にコミュニケーションが取れ、不健全な場や自分にあわない場の空気に流されない力 |
責任ある意思決定をする力 | 安全かどうか、本当にやってよいことかを考えて選び取る力 |
親子でやってみよう!安定したメンタルの鍛え方
「考える力がなかなかピンとこないのは、安定したメンタルが足りていないからかも…」と感じたママも多いかもしれません。今回は子どもの思考力に注目してお伝えしていますが、実はどの要素も「ママ自身にも大切なこと」だとわかりますよね。
では、安定したメンタルを身につけるために親子でできるトレーニングをいくつかみていきましょう。参考にした『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』では、3つのトレーニング方法が紹介されています。
ディスタンシング・エクササイズ
ディスタンスエクササイズとは、子どもと一緒にできる5~10分程度の短い思考力トレーニングです。ディスタンシングとは「距離」を意味する言葉。「自分の感情から距離を作り、一度冷静になって考える」というエクササイズです。
まずは、子どもに「最近嫌だったことってあるかな?」と尋ねてみましょう。もしくは、嫌なことに出くわして、悩んでいる最中にエクササイズを試すのも効果的です。
この「ネガティブな出来事」とどう折り合いを付けるかを、以下の4つから選びます。
- 自分を呼ぶ:心の中で過去の自分を呼んで慰める、声をかける。どんなことを言ってあげたい?と尋ねる
- 友達に声をかける:もし、仲のいいお友達が同じ状況になったら、と想像して声をかける。過去の自分に声をかける想像がしにくいときに、おすすめ。
- 心のタイムマシーンに乗る:「今から1か月後は夏休みだね。夏休みになったら、今の悲しいことはどう思うかな?」「入学式のときはどんな気持ちだった?そのころの自分は、今のことをどう思うかな?」など、未来と過去の視点を交えて今の感情を考える
- 気持ちと体の動きを特定する:嫌なことがあったとき、お腹や頭などに変わりはなかったかな?もし痛いなど動きがあったら、その部分に手を当ててゆっくり深呼吸。心と体のつながりを意識してセルフケアする
小さな子には少し難しいかもしれませんが、わかりやすい言葉を使えば小学校の子でも真似できます。ママ自身も、自分と向き合うトレーニングをしてみましょう。
CBT
CBTとは「認知行動療法」の略称です。精神科やメンタルクリーニングなどで取り入れている病気を治すための方法ですが、実は家庭でも簡単に真似できるつくりになっています。
CBTは自分の中にある思い込みやネガティブな思考のループを断ち切って、前向きな認知へと修正することに有効です。以下の手順でやってみましょう。
何がおきたのか、どんな気持ちになったのかを親子で話し合う
お友達にひどい言葉を使ってしまった。腹が立ったけれど、お友達と喧嘩して悲しかった。
思い込みを探し出す
ムカッとしたときに、なんでも言っていいと思ってしまった。お友達が自分に危害を加えたと勘違いしてしまった。
思い込みを批判的に見つめ直す
もっと他に言い方があった。お友達もわざとしたわけじゃなかった。喧嘩にならないやり取りが他にあったはず。
全体を見直す
そもそも喧嘩の原因は、二人が落ち着いていなかったから。ムカッとしたときに、一度深呼吸をして話し合おうと呼びかける。
子どもと一緒にマインドフルネス
当ブログでもお伝えしたマインドフルネス。
これは子どもと一緒にできます。
音がある程度長く鳴るもの(ベルや音叉など)を準備して取り組みましょう。
- 始めの言葉を決める:今から心を静かにする練習を始めます。
- 音を鳴らす:今から聞く音だけに集中して、音を聞きましょう。聞こえなくなったら手をあげます。
- 呼吸をする:手が上がったら、お腹か胸に手を当てます。自分の呼吸だけに集中して、心を静かにします。吸って、吐いて。
- 終わりの言葉を決める:音を鳴らして、おしまいにします。
大人のマインドフルネスよりははるかに短い時間ですが、子どもの集中力は数分だと考えておきましょう。最初はうまくいかないかもしれませんが、心がざわざわするときや落ち着きたいときに、親子で一緒にやってみてくださいね。
まとめ
子どもの考える力を養うためには、何も響かない「強いメンタル」ではなく、自分を許し褒めてあげられる「安定したメンタル」が必要です。
そして、毎日育児で子どもと向き合うママにもそれは同じ。自分の心と向き合えるメンタルの鍛え方を意識して、親子でポジティブな毎日を送りましょう。