親子関係において、「アタッチメント」は外せない要素です。
アタッチメントとは愛着のことであり、この愛着形成がうまくいかないと、親子関係に問題が生じる可能性があります。ママなら一度は「愛着形成」「愛着障害」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんね。
今回はそんなアタッチメントとは何か、愛着障害や正しい愛着形成の方法を解説します。
愛着(アタッチメント)とは?
そもそも、アタッチメントとはどういったものを指すのでしょうか。親子関係に大切な「愛着」とは何かを今一度チェックしていきましょう。
親子関係のこと
アタッチメントという言葉を提唱したのは、イギリスの児童精神科医であるボゥルビィです。ボゥルビィは子どもが危険を感じたとき、もしくは危険を予知して不安や恐怖などネガティブな感情が強く引き起こったときに、親にしっかりとくっつく・くっついてもらうことを通して、安全な感覚を取り戻そうとする心理行動をアタッチメントと呼びました。日本語にすると愛着となり、簡単に言うと「子どもが親に守ってもらう、もしくは親が子を守る行動や心理のこと」です。
小さな子どもにとって外の世界は危険が多く、怖い・恥ずかしいと勇気を出せない子もいます。最初から何もかもこなせる子どもは少なく、誰しも失敗や挫折を味わいますよね。けれども、愛着形成がしっかりできていると子どもは親や家庭に安全を求め、おうちに帰ることで安心し、自分の心を正常な状態に戻せます。よく「おうちは子どもにとって最大の安全基地」とも言いますが、これは良い親子関係が築けているからこそ、子どもが安心しておうちに戻れる、だからこそ踏み出す勇気が湧くのです。
愛着とは親子関係とここではご紹介しましたが、最も子どもに近い大人との関係すべてを指します。どちらかというとパパと子どもよりもママと子どもの間にある絆をアタッチメントと呼ぶことが多く、ママと子の親子関係はとても大切だと分かりますね。
成長するにしたがって他人との対人関係に影響する
アタッチメントは成長するにしたがって、子どもが親の手を離れて自分で人間関係を形成するように形を変えていきます。いつまでもママとの愛着が続くわけではなく、母親からの愛着を離れて幼稚園や保育園の先生へ、周りのお友達へ、それから社会に出ると一緒に働く人へと変わります。
対人関係にはさまざまな要素が必要です。相手が何を思っているのかを知覚し、どう思われているのかを評価し、「この言葉を使うと相手は嫌がるだろうな」と予測して行動を変えていきます。こうした対人関係のための行動を「愛着パターン」と呼びます。
愛着パターンは愛着形成が正しくできていないと歪み、不都合が出てきます。そこで、次にこの愛着形成がうまくできなかった場合の愛着障害とは何かを説明していきましょう。
愛着障害とは?アタッチメントが築けないとどうなる?
正しくアタッチメント(愛着)が築けないと愛着障害として子どもの心が傷つきます。この愛着障害とはどんなことを指すのでしょうか。特徴は二つあり、
- 人に対して度を過ぎた警戒心を持つ(反応性アタッチメント障害)
- 人に対して度を過ぎたなれなれしさ、執着を持つ(脱抑制型愛着障害)
に分けられます。どちらも5歳までの子どもに見られるのが愛着障害です。
細かい愛着障害の特徴を見ていきましょう。
親だけでなく誰にでも信頼感が持てなくなる
過度に人に対して警戒心を持つ愛着障害では、親子関係が築けなかった親、ママとパパだけでなく、保護してくれる大人やお友達みんなに信頼感が持てなくなります。通常子どもは大人に助けと安らぎを求めるものですが、愛着障害は正しくSOSが出せず過剰に他人をはねのけたり、警戒したりします。
安心できる場所がないからこそ、自己防衛で警戒をする。その悪循環が起こると対人関係は正常に築けません。
不必要に人へと執着する
次に脱抑制型愛着障害の特徴です。こちらは他人を過剰に警戒するものとは反対に、妙になれなれしい態度を取ったり執着したりする状態を指します。社交的、人懐こいと評価されることもありますが、注意を引こうとして見境なく話しかけたりいたずらしたりというのも特徴のひとつ。
単に外交的な性格の子であれば他人と協力して遊ぶことができますが、人への執着心ゆえに愛着障害があると協力・共感ができません。
不安になりやすい、意欲・やる気の軽減
全体を通して愛着障害というのは、精神的に不安定です。不安感が強いために警戒心や人に執着する特徴があります。
意欲ややる気というのは、「安心できる親、おうちに帰ることができる」と本能的に分かっているからこそわくものですが、愛着形成が不完全だと常に不安なため、チャレンジ精神も育ちません。素直に大人に甘えることができない、大人を安全基地として見ていないために、
- 親と離れるとき、再会したときに視線を逸らしながら近づく
- 抱っこされていてもその人を見ない、違う方を見ている
- 見知らぬ場面や不安の強い出来事と遭遇したとき、大人に助けを求めない
といった小さな違和感を覚えることがあります。
子どもとの愛着関係を築くには?
愛着障害とは親子関係が不完全なために現れるものですが、ここまで知るとママの中には「私の愛情が不足していて、愛着障害になるのでは?」と不安になる方もいるでしょう。抱っこ癖が付くから抱っこしないという子育て方法の認知が広まったときに、愛着障害を器具するママも多くいました。
ただ、子どもへのアタッチメント不足、愛着形成を心配してこの記事を読んでいるママは、その時点で十分子どものことを考えていると思えます。より良い親子関係を築くために、愛着関係の作り方、子どもとの向き合い方をご紹介します。
特別なことはしなくて大丈夫。毎日のスキンシップを大切に
「○○をしなかったから」といって愛着障害が引き起こるわけではありません。抱っこを子どもが求めていても、そのときママは家事で手いっぱいかもしれないし下の子のお世話があったかもしれませんよね。すべての子どもの呼びかけに答えられるならそれに越したことはありませんが、特別子どもと触れ合う時間を設けるというよりも、毎日続けてスキンシップを大切にしてみましょう。
夜寝る前におやすみのハグをする、寝かしつけで頭を撫でたり体をトントンする、絵本を読んで会話を楽しむのもスキンシップのひとつです。特に朝は子どもが幼稚園や保育園に行く離別の時間になるため、忙しくても意識的に子どもとのスキンシップを楽しみたいですね。
子どもの不安を取り除いてあげるやり取りを
子どもの不安を取り除くやり取りをしましょう。間違っても、
- あなたは拾ってきた子なのよ
- 子どものお世話は大変
- そこに置いていくからね
と子どもを怖がらせる、不安感を強める声掛けをするべきではありません。
子どもが不安そうになっていたら、「ここにいるよ。大丈夫だよ」と優しく声掛けしましょう。言葉が伝わらない年齢の子は、手をつないだり抱っこしたり、体の一部を触れ合うだけでもOK。ママの子どもを思う気持ちは、必ず子どもに伝わります。
子どもを「子ども扱い」しない。一人の人間として向き合う
アタッチメントでとても重要なのが、親子関係とは「主従関係」でも「上司と部下の関係」でもないという点です。人間と人間のやり取りであり、「言うことを聞かせる」のが正しい親子関係ではありません。
子どもは確かに小さくて、まだまだできることも少ないでしょう。しかし、だからといって子どもを子ども扱いせず、一人の人間として個性を認めて向き合うようにしましょう。そう考えると自然と声掛けの方法も変わってくるため、良い親子関係が築けます。
まとめ
愛着障害を防ぐため、またより良い親子関係を築くには「アタッチメント」が重要です。普段何気なく行っている親子のコミュニケーション、スキンシップですが実は大きな効果があるもので大切なことだと分かりますよね。
ぜひ毎日の子どもとの触れ合いを大切にして、より良い親子関係を目指してみましょう。
【参考】
愛着(アタッチメント)の意味 | こころの健康クリニック芝大門
愛着障害(アタッチメント障害) | 仙台の心療内科・精神科・美容内科マドレクリニック
なぜ子育てにアタッチメントが必要なのでしょうか|(社)日本アタッチメント育児協会