スターンの情動調律とは?0歳から始まる子どもとのコミュニケーション方法

スターン 情動律動

子どもの考えていること、言いたいことが分かれば育児にとってとても便利ですよね。ですが、0歳の赤ちゃんがママに何を伝えたいのか、ママの言うことをどう伝えたらいいのか困ることは多いはず。

この悩みは、スターンの情動調律を参考にしたコミュニケーション方法で解消できることもあります。今回は「情動調律とは何か」「0歳から始まる子どもとのコミュニケーション方法」を一緒に考えていきましょう。

スターンの情動調律とは?

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情動調律とは、

相手の行動や状況から相手の感情を推察し、その感情に対して反応する行動を情動調律という

心の癒し 情動調律 | 日本タッチ・コミュニケーション協会

を指します。調律とはピアノをはじめとする楽器の音程を整えることを指し、情動調律は心を整え揃える意味を持つのです。

この情動調律は乳幼児精神医学者であるスターンによって提唱され、実験を通じて「親と子は情動調律によって精神交流を図ることができる」と研究されています。この情動調律とは何か、わかりやすく解説していきましょう。

情動調律の例

情動調律とは、相手の行動・状況から相手の感情を想像し、その感情に対して反応する行動のことです。当たり前のことですが、訃報に悲しんでいる相手に笑って欲しいからといってふざけたり冗談を言ったりすることはありませんよね。相手の気持ちを考えて、一緒に悲しみを分かち合う方がほとんどだと思います。これが、情動調律です。

その他にも、

  • 愚痴を言うママ友と話していたら、怒りがこちらにも伝わってきた
  • ドラマの主人公に感情移入して、涙が出てしまう
  • 子どもが賞を取ってきた!一緒に「嬉しいね」と喜ぶ

これらも情動調律の一例と言えるでしょう。無意識のうちに、大人は相手の気持ちを推察して寄り添う行動を起こしているのです。

育児における情動調律とは?

発達心理学の視点からすると、この情動調律をママが子どもにすることで、子どもは「ママが分かってくれる!認めてくれる!」と感じ自己肯定感の向上を促すとされています。大人でも悲しいときに一緒に悲しんでくれる人、怒りを分かってくれる人は信頼できますよね。これを子どもにも適応させると、心の成長にとってポジティブな効果が得られるのです。

また、子どもの気持ちは大人が理屈で考えても理解できません。衝動的でうつろいやすく、そんな子どもの感情に寄り添うにはもっと感覚的なコミュニケーションが必要。小さなうちは子どもが自分で自分の感情を言い表せないため、ママは日ごろ子どもとしっかり向き合って、感情を揃えて調律してあげる必要があります。

情動調律の上手な表現方法とは?

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では、育児の中で情動調律をどのように発揮すればよいのでしょうか。上手な表現方法を以下の3つにまとめました。一つずつチェックしていきましょう。

子どもが感情を表したら「○○だね」と言葉にしてあげる

子どもは些細なことで泣いて、笑ってと感情を表します。赤ちゃんが泣いたら、無言で育児をしていないでしょうか。このとき、

  • おむつが濡れちゃったね、冷たくって気持ち悪かったよね
  • お腹空いたね、すぐにご飯にしよう
  • 疲れたね、いっぱい遊んだからだね

ママが感情を言葉にしてあげてください。もちろん生後間もない赤ちゃんには伝わらないかもしれませんが、感情を受け止めて言語化する癖をつけておくと、次第に子どもとの信頼関係も築けるようになるのです。

赤ちゃんに対してどう声掛けしていいのか分からない…と悩むママも珍しくありません。情動調律はとても簡単で、今すぐできます。大切なのはネガティブな感情こそ受け止めることで、子どもが泣いたらその気持ちに寄り添い、一度受け入れて言葉にしてあげてくださいね。

子どもの感情を察知して一緒に表現する

声を掛けなくても、一緒に表現するだけでも情動調律になります。子どもがどこかに頭をぶつけて、「痛い」と泣き出したとしましょう。ママも一緒に悲しい表情を作って、「痛かったね」と撫でてあげると心を通わせることができます。

また、テレビを見て子どもが楽しく踊っているときはママも一緒にダンスしても構いません。歌を一緒に歌ったり、「キャー!」と嬉しそうな声を出したら一緒に喜んだりしてみてくださいね。

子どもが動くようになったら一緒に同じ動きを真似する

子どもが一人で遊んでいるから、ママは違うことをしていよう。そう思うことも多いのですが、動きを真似するというのも情動調律の一つです。子どもが嬉しいときや楽しいとき、ママの方を振り返りますよね。ママも一緒になって動きを真似して、同じ喜び・興奮・悲しみを共感してみましょう。

真似している間、子どもがママを認識していると情動調律が成立しています。こうして親子間のコミュニケーションを取り続けると、ママは子どものことが理解できますし子どももママの気持ちを少しずつ分かってくれるはずです。

情動調律を繰り返すとどんなメリットがある?

ミラーニューロン

情動調律は良いコミュニケーションのひとつ。これを繰り返すとたくさんのメリットが得られます。どうして情動調律を意識すると良いのか、ママと子どもにとって起こるポジティブなメリットをここからはご紹介します。

子どもが「ママは共感してくれる」と思うようになる

大人でもそうですが、自分の気持ちを察してくれる方は信頼できますよね。好印象を持ちますし、安心できる存在になりそうです。子どもにも同じことが言えるでしょう。嬉しいときに一緒に喜んでくれる、悲しい気持ちを分かってくれる。この反応を繰り返すと、「ママは共感してくれるんだ」と子どもが認識するようになります。

その後の育児においても、親子で互いに共感するのは大切です。情動調律は今すぐできることなので、ぜひすぐに心がけて試してみてください。

大人の存在によって安心できる、信頼感が生まれる

子どもの世界において、大人は常に一緒にいる存在であり、世界は「大人と自分」がほとんどを構成しています。大人の存在を「安心できるもの」と認識するのは幼児期の過ごし方が重要であり、情動調律はその考えを促してくれるでしょう。

0歳のころから子どもにとって、「ママは安心できる存在」と教えてあげられると理想ですね。気持ちを互いに分かり合おうとすることで、信頼感が生まれます。たくさんの感情表現をし、さまざまなことを吸収する乳幼児期に、親子の信頼の基礎をしっかり築けることが大切です。

心のストレスを軽減できる

自分が苦しくて誰かに助けて欲しいとき、誰かに話して気持ちを分かってもらえるとすっと気分が楽になる瞬間があります。ママが育児の悩みを抱えていて、周りのママから「分かるよ、うちもそうだったよ!」と言われて救われることも多いですよね。

共感、情動調律にはこうした心のストレスを軽減する効果があります。赤ちゃんだった子どもは次第に大きくなり、第一次反抗期であるイヤイヤ期を迎えるかもしれません。そのとき、もやもやした気持ちをママが共感してくれたら、気持ちがぐっと楽になるかもしれませんよね。

ただ、情動調律は「共感」が得られるという大きなメリットがありますが、これを無視すると大きな負担になる点にも注意が必要です。子どもが嬉しそうにこちらを見るその瞬間を見逃さず、大切なコミュニケーションのきっかけを作ってみてくださいね。

まとめ

スターンの情動調律は、一見難しそうな概念にも思えますよね。ですが、実際には身近なコミュニケーション方法であり、簡単に実践できることです。メリットもたくさんあり、親子の信頼関係構築において大切な要素も詰まっています。

ぜひ今日から情動調律を意識して、子どもと楽しく心の交流を始めてみましょう。

【参考】

情動調律 | スクールカウンセラー養成所

心の癒し 情動調律 | 日本タッチ・コミュニケーション協会

【療育プチコラム】情動調律~感情の調整力や安定性はどこから発達する?~ – さいころボックス

【0歳からの情動調律】共感・信頼する身体をつくる情動マネジメント | 放課後の図書室☆オトノネ

D.N.スターン (D.N.Stern)

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。