フロイトの子育ては正しいの?精神科医フロイトについて解説

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ジークムント・フロイトとは、オーストリアの精神科医。この名前を育児書や教育関連の場で見たことがある方は多いかもしれませんね。

心理学の世界では、フロイトは有名人です。今回は心理学から子育てを考えるうえで欠かせない「フロイトとはどんな人物か」「フロイトが提唱したこと」「フロイトの子育ては正しいのか」という3点をわかりやすくご紹介します。

難しくて聞きなじみがない…と心理学を避けていたママも、簡単に説明するのでぜひ参考にしてくださいね。

フロイトとは?「自我の芽生え」の自我を提唱した精神科医

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ジークムント・フロイトとは、ママ達にもなじみのある「自我の芽生え」の自我を提唱した精神科医です。心理学の第一人者、精神医学の創始者とも言われています。

育児書でよく見るフロイトとは?

オーストリア生まれのジークムント・フロイト。フロイトが子育ての中でよく見かける名前である理由は、子どもの自我の芽生えの「自我」を提唱した人物だからです。

フロイトについて、もう少し詳しく知っておきましょう。フロイトは精神医学者であり精神分析者で、1856年にオーストリアで生まれました。今では精神医学は発達し、さまざまな生き辛さや個性、生まれ持った気質による「普通とは異なる感覚」に対して理解が深まりつつありますが、この時代は精神分析があまりされず、フロイトが精神分析学の第一人者・創始者と言われています。

フロイトの考えでは、人間の行動すべてに心理的裏付けがあり、その全部が「無意識下で行われている」とされています。意識をもって「私はこちらを選ぼう」と思っても、実はこの行動も無意識という領域の支配を受けているのです。これがフロイトの考えの根本です。

フロイトの提唱することがすべて正しく、現代のスタンダードというわけではありませんが、このほかにも育児に関連した理論には興味深いものがたくさん残っています。

自我、超自我、エスとは?

フロイトが提唱した

  • 自我
  • 超自我
  • エス

というのは、以下のコラムでも詳しくご紹介しました。

ママにとっては、「自我」はよく聞く単語の一つかもしれませんね。自我とは1歳を過ぎたあたりでよく言われるもので、これまで単純な要求しかしなかった赤ちゃんの心がより複雑になり、場合によっては育児の壁を感じることを「自我の芽生え」と呼んだりします。

これは自我の芽生えというよりも赤ちゃんが自我に気付き、自分の主張をし始めた証拠です。自我は生まれつき持っている「自分が自分であること」の意識で、自我の他にも「超自我」「エス」で心は構造されています。それぞれ心のバランスをとるための大切な要素で、フロイトはこれらが複雑に絡み合いながら、社会性や理論と自分の本能や衝動を結び付けているとしています。

少し聞きなれない難しい言葉ですが、我慢することや人と快く付き合うことといった心の成長をフロイトの考えから見たもの、と覚えるとよいでしょう。

フロイトの基礎的な精神理論とは

フロイトに限らず精神分析には、意識して行動するという当たり前のことを「氷山の一角」としてあらわすことがあります。氷山が見えているのはそのほんの一部であり、大部分は海面に潜っていて見えません。見えている部分が自分が意識し、コントロールできることで、その他大部分は無意識であるという考えです。つまり、心の大部分は普段隠されていて、そこに本能や衝動、観念、記憶があります

フロイトの基礎的な精神理論もまさにこの通りで、普段意識していることも、大部分の無意識がそうさせているというのが基本。この「意識」「無意識」の他に努力や他者の指摘によって左右できる「前意識」という部分も人間は持っているとフロイトは分析しています。

フロイトが提唱した心理的発達理論

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フロイトの基本的な考えの他に、子育て中ママ達が知っておきたい心理的発達理論もあります。精神分析を進めて行く中で、欠かせない幼児期~青年期の心の成長をフロイトが段階的に表したもので、成長過程の中で、年齢ごとに欲求・興味を持つ場所があるとしています。

これらの欲求を満たしてあげると子どもがより精神的に成長できると言われているため、一緒に見ていきましょう。全体で5段階ありますが、今回は親が育児にかかわる大切な幼児期の3段階に注目します。

口唇期

~1歳までに訪れる口唇期。欲求の目的は母乳を吸うことと関連しており、唇に赤ちゃんの欲求が集中しています。

授乳の時期もこの頃で、確かに赤ちゃんはおっぱいやミルクを求めて泣きますよね。その欲求を満たしてあげるのが育児の基本かもしれません。この欲求が満たされないと、良好な親子関係が構築できないともフロイトは提唱しています。

肛門期

2、3歳になると母乳やミルクからも離れ、次はトイトレが始まります。排泄後のすっきりした気持ちや「おしっこに行きたい」といった排尿欲を取得するのもこの時期で、とはいえうまくいかないのが肛門期の子と結論づけられていました。

子どもは「うんち」などの単語できゃっきゃと笑うことがありますが、フロイトの肛門期でもその特徴は指摘されています。これまでは肛門周りの何が面白いのかを理解していなかった子どもが、トイトレを始めて人間の基本的な動作である「排泄」に興味を持ち、欲求を持ち始めるのがこの時期です。

男根期

関心が男根に集中する時期を、男根期と呼びます。この時期の子どもは5、6歳。「ちんちん!」と男根に関する単語を話すだけで、子どもは大笑いする頃です。大人から見ると「はしたない」「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、性器は誰しもが持つもので男女の身体的な違いを明確にするものです。ジェンダーの在り方は何も外見や身体的特徴だけで判断されるものではありませんが、子どもが男根に興味・欲求を持つのは自然な反応と言えるでしょう。

男女の違いが認識できると、精神的な成長の早い子は「好きな子ができた」「○○くんが好き」と恋愛感情も抱き始めます。「誰と結婚したいの?」と質問すると「ママ!」と答える子もいるかもしれません。これも社会的な立場、好きな人と結婚するという概念を学んだ証拠です。

男根に限らず、子どもの「よく見る」行動を大人やママは止めたくなります。ですが、周りに迷惑をかけていないのならそのままでOK。欲求を満たせない子は大人になって偏った傾向を持つとフロイトは警鐘しています。

フロイトの子育てで注意したいこと

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フロイトの理論には興味深いものが多く、提唱からずいぶん時間が経った現代でも検証されていることが多いです。しかし、「幼児期こそ大切で、この欲求が満たされないと子どもの精神が偏る」とするフロイトの考えは現代の子育てに少しそぐわないこともあります。

「成長分類が男性的」という見方も

これまで幼児期の成長段階をご紹介しましたが、「男根や肛門に興味を持たない…」とピンとこない女の子のママも多いかもしれません。成長分類が男性的で、この点に関しては心理学の世界でも疑問が残るものとして議論が進んでいます。

「親の育て方」だけが重要ではないことも頭に入れておいて

フロイトの子育てを極端にいうと、「幼児期の意識づけこそが大切。無意識の形成が失敗すると取り返しがつかなくなる」と最初の過ちが人生すべてに影響するという表現も含まれています。口唇期には必ず母乳を与えないといけない、肛門期にはトイトレを完璧にしなくてはならないなど、やや乱暴な子育て論には教育の現場でも疑問が繰り返されています。

フロイトの考えこそがすべてではなく、大切なのは現実の育児とママが「ママなりに」向き合うことです。育児は取り返しのつかないことはなく、親子関係や子どもの人格形成はリカバリーができます。

成長には個人差があるので、我が子のペースで進む心の成長を見守り、適切な方へと向かえるようにママを含める周囲の大人が子どもを手伝ってあげましょう。

まとめ

育児書でよく見るフロイトの子育て。その理論から学ぶものは多く、興味深い考えであるために保育士の試験にも出題するほどです。ですが、考え方によってはママの子育てに沿わないこともあるため、子どもの成長をフレームに当てはめて考えるのではなく、我が子自身を見つめながら一緒に成長するようにしましょう。

【参考】

精神分析学の創始者”フロイト”の発達理論ってどんなもの?|お役立ち保育コンテンツ|保育士の転職求人なら「保育ぷらす+」

赤ちゃん&子育てインフォ|子どものこころを育てる

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。