2020年3月より、文部科学省の新学習指導要領が公表されました。これまでの学習要領をより現代の社会構造に合わせた形に見直され、そこに「生きる力を育む保育」が盛り込まれています。
生きる力とは、「明日そして将来につながるように、子どもの学びを進める」ことを目的としています。とはいえ、ママ達にとっては「生きる力って何?」と疑問に思うことも多いもの。
今回は今求められている教育とは何か、生きる力を育む保育についてわかりやすく解説します。
「生きる力を育む保育」とは?
2020年3月からの新学習指導要領では、新しく「生きる力」が公表されました。やや抽象的でなじみの薄い言葉ですが、これは以前から学習要領の基礎として求められていた能力でもあります。
新学習指導要領では、生きる力を実現するためにこれまでの学校現場での課題を踏まえて、より具体的に子どもの成長を促し指導していく案が盛り込まれています。まずは、生きる力とは何かを少し詳しくみていきましょう。
生きる力の3つの要素
生きる力には、3つの要素があります。これは保育士試験の範囲である「教育原理」に記された文言です。生きる力の3つの柱、3本柱ともよばれており、生きる力とは何かを考えたときに理解しやすい言葉が使われているので、今一度見てみましょう。
- 知識及び技能の基礎
- 思考力、判断力、表現力などの基礎
- 学びに向かう力、人間性など
少し難しい考え方ですが、保育において「体験し知識を得て、そこから想像力や判断力を養い、学びの中で人間性を獲得する」という基本を説明するのが3本柱です。
保育においても生きる力は重視されており、学習指導要領として小学校からいきなり「生きる力を求める」わけではないのが分かりますよね。
では、教育の場面でどのように生きる力が問われているのか、次は学習指導要領の中身を見てみましょう。
知・徳・体のバランスが取れた教育のこと
生きる力とは、文部科学省によって定義づけられています。これは3つの要素がバランスよく盛り込まれた教育のことを指し、
徳=豊かな人間性
- 自らを律する
- 周囲と協調し、他人を思いやる
- 感動する心など豊かな人間性を育む
体=健康・体力
たくましく生きるための健康的な体力をつける
以上の知・徳・体が大切です。
こちらは先ほどの3本柱を具体的に記した内容となっています。社会のグローバル化、インターネットや人工知能の普及、生活への浸透によって、現代社会は目まぐるしく変わります。そんな変化する時代において、柔軟に対応でき健やかに生きる力が、今の教育の目的といえるでしょう。
生きる力を育む教育、これまでと違うこととは?
この新学習指導要領は、これまでのものとはいくつか違う視点で教育が行われています。生きる力を育む保育・教育を知るために、これまでと違うことをチェックしていきましょう。
偏差値や点数ではなく「人間としての資質」に目を向けている
偏差値や点数はもちろん大切な要素ですが、新学習指導要領では数字で表す学力とともに人間性や人間としての資質を育むことに重きを置いています。例えば道徳は特別な教科化として「主体的・対話的で深い学び」を中心にするよう、変化を求められています。
具体的にいうと一方的に先生が教える授業だけでなく、児童も一緒に考える体験が増えるのが一つの変化です。
また、この道徳はこれまで「ある事柄についての自分の意見を持つ」だけだったのに対し、マネジメントの視点を取り入れ、各教科や学校行事と道徳を関連させることもあります。これはビジネスシーンでは大切な「全体を指揮・管理できる能力」を育むためのカリキュラムだといえるでしょう。
自分で意見を発信する機会が増える
新学習指導要領では、外国語授業時間が増え、活発な意見交換が求められています。従来の国語でもコミュニケーション能力を培うカリキュラムが盛り込まれるなど、これからのグローバル化社会に合わせて言語活動を充実させる方針です。
そのため、答えが一つとは限らない問いかけも多く見られます。自分の意見を持ちすすんで発信することで、自律性を育む狙いが新しい学習指導要領には込められています。
自律性が求められる
先ほども説明した「自律性」とは、ルールに乗っ取ったうえで自分で課題を見つけ、自分で行動し実行する力を指します。自律性は社会人になっても求められる資質であり、問題や壁にぶつかっても自分で解決できる自律心は将来の子どもたちにとって大切な要素でしょう。
そのため、「自分で課題を見つけて調べる」という目的学習も盛り込まれています。ある小学校では夏休みの宿題をあえて決めず、自分でテーマを作って調べて学ぶという取り組みも見られました。児童の主体性を伸ばすことを目的としており、このような自主性・自律性がこれからの教育では求められます。
家庭でも生きる力を育む保育はできる!
生きる力というのは、これまでのゆとり教育や詰め込み教育とは異なります。単純に勉強時間を増やすだけでなく、総合的な人間性を育むというのは少し難しくも感じますよね。
ですが、家庭でも生きる力を育む保育は可能です。次は、家庭でできる生きる力を育む保育をチェックしていきましょう。
生活リズムを整える
知・徳・体のバランスを取るためには、まず規則正しい生活リズムで健康な身体を作ることが大切です。自宅では早寝早起きの習慣を身につけ、夜遅くまでゲームなどをしないように十分な睡眠時間を確保しましょう。
また、「さまざまな体験が必要だから」と子どもが求めていない習い事や予定でがんじがらめにする家庭も少なからずあります。現代の子どもは、学校や用事でスケジュールはいっぱい。たまには家族でゆっくり過ごす時間も作りながら、子どもの生活リズムを整えるだけで学習に意欲的に取り組めます。
さまざまな体験をする、親子のコミュニケーションを取る
どんな些細な体験でも、小さなことを積み重ねると生きる力を育めます。旅行など大掛かりな行事でなくてもよいので、「夕食は家族全員で囲んで会話を楽しむ」「親子で散歩に出かける」などのコミュニケーションを増やしてみましょう。
家庭での会話は、子どもにとって大人と話をする重要な機会です。また、会話のテーマや用意する体験は、子どもの興味に合わせるとよりうまくいくでしょう。
子供と一緒に大人も遊ぶ
子どもだけで体験や遊びをさせるのではなく、大人と一緒に遊ぶことで先ほどの「コミュニケーション」や「ルールを学ぶ自律性」を育めます。子どもと一緒に遊ぶ機会を増やすのも、生きる力を育てる上で大切な要素といえるでしょう。
生きる力は、子どもだけに必要なことではありません。ご紹介したようにどんな人、どんな場面においても生きる力が大切であり、働く社会人にも求められる能力です。
特に移り変わりの激しい社会をこれから生きる子どもを育てる中で、大人も柔軟な考え方ができるように、ママも子どもと一緒に成長できるとよいですね。
まとめ
新しい学習指導要領に盛り込まれた「生きる力」。生きる力を育む保育というと難しく考えられがちですが、その内容はどれも日常で培える要素ばかりです。
新しい時代を生きる子どもの教育のために、ママも一緒に学んで成長してみましょう。家庭でできることも多いので、少しずつ取り入れてみてくださいね。
【参考】
家庭でしかできない!生きる力が育つ大切な8つのこと [子供のしつけ] All About
“宿題は原則なし”一体なぜ?取り組みを始めた学校のねらいは | NHK | 教育
文部科学省が定めた「生きる力」って?学校教育はどう変わるの? | ママソレ| 子育てママのくらしがちょっぴり軽くなる生の声メディア
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