みなさんはボウルビィ(Bowlby J. M.)をご存じですか?この人物の名前を知らなくても、「愛着形成」というとよく聞く単語かもしれません。
子育てにおいて大切な要素である愛着形成を提唱した人こそ、ボウルビィです。今回はそんなボウルビィとはどんな人物なのか、彼が提唱した愛着形成について詳しく知っていきましょう。
ボウルビィについて詳しく解説
ボウルビィはイギリスの精神科医です。心の分析を進めるうちに、「愛着」という心の動きがあることに気付き、これが親子関係において大切な要素だと結論づけました。
まずはボウルビィについて詳しく解説していきます。
ボウルビィ(Bowlby J. M.)とは
ジョン・ボウルビィ(Bowlby J. M.)とは精神分析学、児童精神医学を専門とするイギリスの精神科医です。ボウルビィの理論は戦後の孤児院や乳児院に収容された戦災孤児への調査によって成形され、子どもの心の動きに着目する人物でした。
育児の中で「子どもが何を考えているのか分からない」「この子にとって何がより良いのか分からない」と悩むママは多いです。そんなとき、過去に子どもの心を研究した専門家から学べることはたくさんあります。
特にボウルビィはママの中でもなじみ深い「愛着形成」を提唱した人で、愛着とは何か、愛着がなぜ親子関係に大きな影響を及ぼすかを理論づけて説明しています。ボウルビィはこうした愛着の実証的な研究も行い、のちにハリー・ハーロウというアメリカの心理学者をはじめとする何人もの学者が裏付けを取っています。
愛着理論を提唱した人物
ボウルビィは「この場所に愛着がある」「愛着がわいてきた」といった心の動きである愛着に注目しています。子どもの精神分析を愛着という動きに注目して行っており、育児や保育の中で現代でも生かされています。
人と人との親密さ、愛着行動をボウルビィは「愛着理論」として提唱しました。これまでぼんやりとした概念だった愛着とは、ボウルビィによって理論づけられています。
理論というと少し難しいイメージを持つ方も多いかもしれませんね。そこで、次の項目からわかりやすくかみ砕いてご紹介します。
ボウルビィの愛着理論とは?
ボウルビィの愛着理論は、「人の愛着は4つの段階に分けられている」とされています。まずは親子関係における愛着とは何かを解説し、次にボウルビィの理論で解説された4つの段階について見ていきましょう。
子どもとママに大切な「愛着」とは
子どもとママにとって大切な愛着とは、ボウルビィは
「人が生まれて数カ月の間に特定の人とのあいだに結ぶ情愛的な絆」
愛着発達の第4段階は「いつも心にママがいる」。 │BLOG│モンテッソーリの子育て│浦和教室
としています。どんなに離れていても、「ママの元に戻れば大丈夫」と思えることこそ愛着であり、愛着形成ができていると子どもは外の世界を恐れずさまざまな挑戦ができます。
愛着のある場所、愛着がわいたという言葉があるように、「大好き」「安心できる」というのが親子の愛着の基本です。何があっても好きでいてくれる存在こそが親であり、これを小さなうちから親子間で育むことが大切です。
ボウルビィの愛着理論とは
では、ボウルビィの愛着理論の本質にせまってみましょう。愛着理論で分けられた4つの段階をご紹介します。
第一段階:人物を特定せず働きかける愛着
第一段階は生後8~12週までとされています。この頃の赤ちゃんはやっと「お世話をしてくれる存在がいる」ことに気が付く、うっすらと認識する時期。お世話をする人はママでなくても限らず、無差別に周囲の人間に興味を持ちます。
乳幼児が近づくとにこにこ笑ったり、誰があやしてもご機嫌を直したりしますよね。この行動があるからこそ乳幼児の周りには人が集まり、そばにいる時間が長くなります。
第二段階:特定の人物に対して働きかける愛着
この段階は生後12週から6か月くらいまで続きます。人間に対して親密な行動が、特に多くの時間を過ごすママに対して顕著になります。ママと他の大人の区別も十分につくようになりますが、人見知りをしたりママのいない場面で不安がったりするのはもう少し先です。
ただ、泣いてママを求めることは多くなり、これまでは誰でもよかったのに抱き上げるのはママじゃないといやだ!と主張する子もいます。ママとしては、少しずつ心の成長をしてきた我が子に対して育児の困難さを自覚し始める時期かもしれません。
第三段階:本当の愛着形成ができる
この段階では子どもが親は誰なのか、ママはこの人でこの人はお兄ちゃんといった家族をはっきり認識するようになります。2~3歳ごろまで続き、愛着形成ができるからこそママ以外の人物を拒否することもあるでしょう。
人見知りや場所見知りが始まるのもこの頃。3歳というとちょうど幼稚園や保育園への通園を検討する時期ですが、これまで自宅で過ごしてきた子ほど登園しぶりが見られますよね。
ママと離れるときに泣き出す、ママのところがいい!と訴える子は、愛着形成がきちんとできている証拠です。
第四段階:協調性が形成される
人見知りやママでないとダメ!と訴える子でも、次第に自立して母親がいなくても情緒の安定がはかれるようになります。この時期を協調性が形成される第四段階と呼びます。
早くて2歳、多くの場合は3歳には協調性の形成が始まり、母子間にも協調性が活かされる時期です。協調というと他人と協力し互いに心地よく過ごすことを指しますが、小さな子でも協調性はそなわっているという点に着目しておきましょう。
ボウルビィの提唱する愛着行動とは
これまで子どもの愛着はどのように成長するかをご紹介しましたが、肝心の「愛着行動とは?」という点をご紹介します。愛着形成ができているつもりだけど…と不安なママは、以下のボウルビィが提唱する愛着行動も参考にしてみてくださいね。
発信行動
発信行動とは、赤ちゃんが泣いてママを呼んだり、周囲からの注目が得られない子がわざと興味を引くような行動を取ったりすることです。ネガティブな発信ばかりでなく、笑ったりママを見つめたり、大きな声で呼んだりするのも発信行動のひとつ。
イヤイヤ期では子どものぐずりが気になるママがほとんどです。ただ、これは「ママの前だから発信行動ができる」とも捉えられ、子どもの心が成長しているのだと認識できるとよいですね。
接近行動
接近行動とは名前の通り、子どもが愛着のある人物に近づく行動を指します。赤ちゃんの後追いや幼稚園に迎えに行った子がママの元に抱き着くなど、こうしたことを接近行動と呼びます。特にハイハイ、ズリばいといった赤ちゃんが最初に取る自力移動は、ママに向かうことが多いです。
定位行動
定位行動とは「今、ママがどこにいるのか?」を確認する子どもの行動です。定位行動が見られるのは第三段階の子なので、赤ちゃんのうちからママへの認識が少なくても心配する必要はありません。
ママの行動を常に確認しなくても、気付いたときに探したりママの声を追ったり、ママによく似た人物がテレビに映っていると「ママ!」と認識したりするのが定位行動です。簡単そうに見える行動ですが、視力や視野、聴覚がきちんと発達している必要があり、首のすわった赤ちゃんでないと定位行動は不可能です。
まとめ
ボウルビィ(Bowlby J. M.)の提唱する愛着理論。子どもの成長に関する「大丈夫かな?」という不安をぬぐってくれるものでもあります。また、理論を紐解くと子どもとの愛着形成がいかに大切かも実感できますよね。
今子どもに足りていないものが分かったら、焦ることなく子どもに愛情を伝えるようにしましょう。我が子の成長を見守り、いつでも味方でいる親子関係を築いてくださいね。
【参考】
ジョン・ボウルビィの愛着理論 その生成過程と現代的意義 中野明德
愛着発達の第4段階は「いつも心にママがいる」。 │BLOG│モンテッソーリの子育て│浦和教室
子どもの発達には”愛着”が重要!?ボウルビィの愛着理論について|お役立ち保育コンテンツ|保育士の転職求人なら「保育ぷらす+」