「お手伝いしてくれたらお小遣いをあげる」「次のテストで満点が取れたら、おもちゃを買ってあげる」そんな言い聞かせをしたことがあるママは、実は多いのではないでしょうか?
この行為には注意すべき点がいくつかあり、いわゆる「もので釣る」ことでアンダーマイニング効果という現象を引き起こすと、子供のやる気が失われてしまう場合もあるのです。
今回は子供のやる気を引き出すために、アンダーマイニング効果について解説します。子供のやる気を自然と引き出し、よりよい向き合い方を見つけましょう。
やる気がなくなるアンダーマイニング効果
アンダーマイニング効果とは、どんな現象なのでしょうか。アンダーマイニング効果が子供に与える影響について、まずは考えてみましょう。
子供のやる気には2種類ある
アンダーマイニング効果は子供の「やる気」に関係するものですが、このやる気というのは大きく分けて2種類あります。
外発的動機づけ
まずは外発的動機付け。これは「○○をしたら○○がもらえる」といった、報酬や評価、賞賛などの外部からの刺激によってやる気を出すものです。大人の世界でも、例えば仕事を選ぶときにもちろんやりがいも重視されますが、報酬が希望に満たしていないとその仕事を選ぶ気持ちになれませんし、続けていても正当な評価がもらえない場合はモチベーションが下がることもままあります。
子供でいうと、おもちゃやおやつなどを「あげるからお片付けしてね」とお願いするのは外発的動機づけです。みなさんの中にも、一度は経験がある方は多いのではないでしょうか。
内発的動機づけ
次は、内発的動機づけです。先ほどの外発的動機づけに対し、おもちゃやおやつなどを目的とせず「キレイにしないと遊びにくいから」と子供がみずから片付けるのは内発的動機づけと呼べます。その他にも「おもしろいからやる」「好きだからやる」のは子供の内部から生まれるやる気であり、内発的動機づけです。
外発的動機づけと比較すると、内発的動機づけはやる気の持続がしやすいものです。子供の興味も向きやすいので内発的動機づけを大切にしながら、子供のやる気を引き出すとよいとされています。
アンダーマイニング効果とは
この2種類のやる気のうち、外発的動機づけを行いおもちゃやおやつなど「ご褒美」のために行動していると、このご褒美がなければやる気はなくなってしまいます。例えきっかけは「楽しいから」「やりがいがあるから」といった内発的動機づけでも、ご褒美が与えられそれが尽きた瞬間にやる気を失ってしまうこともあるでしょう。これが、アンダーマイニング効果です。
分かりやすく例えてみましょう。今、あなたはボランティアで公園の花壇に水やりをしているとします。花の成長を楽しみに水やりをしていたところ、どなたかが「時給600円を支払います」と申し出ました。花の成長のために行っていたことを、金銭的な報酬に換算されると「1時間でたったの600円か…」とやる気をなくしてしまわないでしょうか。もしくは、水やりの目的が時給になった頃、ある日突然「報酬が支払えない」となると途端に「続けなくてもいいか」という気持ちになるかもしれません。
これが、アンダーマイニング効果です。先ほどご紹介したやる気を引き出す内発的動機づけを、奪ってしまうものこそアンダーマイニング効果といいます。
アンダーマイニング効果の特徴から見る、やる気を引き出す方法とは
せっかくの子供のやる気を台無しにしてしまうアンダーマイニング効果。外発的動機づけはおすすめできない方法ではありますが、育児の中ではよく見られるものです。そこで、アンダーマイニング効果を踏まえたうえで、子供のやる気を引き出す方法を考え直してみましょう。
「ご褒美」は形のないもので
勉強を頑張る子供に、何かご褒美をあげたいなという気持ちは大切です。ですが、先ほど例に出したように「テストで〇点が取れたから好きなゲームを買ってあげる」と報酬を与えると、勉強への興味がご褒美への興味に代わってしまいます。
そこで、ご褒美は形のないものにしましょう。ぎゅっと抱きしめても、「よく頑張ったね、すごい!」と声かけをしてもよいですね。ママと一緒に遊ぶことでも、子供にはとっておきのご褒美になります。このような形のないもの、値段が付けられないご褒美はいくら与えてもアンダーマイニング効果を引き起こすことはないでしょう。
ただし、褒めるときに「できた」「できない」を基準にしてはなりません。もし失敗したときに「どうせできないから」と子供の意欲を下げてしまうからです。取り組んだこと、その過程で頑張ったところに注目し、褒めてあげてくださいね。
ご褒美はポイント制にする
長らくもので釣っていた子供は「頑張ったからご褒美が欲しい」と期待されてしまいますよね。外発的動機づけを内発的動機づけに切り替えるには、移行期間を作ってみましょう。
ショッピングをすると、お店によってはポイントが貯まり、そのポイントと商品やお買い物券を交換できることがあります。このように、ご褒美をポイント制にしてみるのもおすすめです。「○○したからおもちゃを買ってあげる」のは1度につき1回の報酬ですが、ポイント制にすると何度かの行動を重ねたことによって1回の報酬がもらえます。その分達成感を味わうことができる上、子供にとっても「続けて挑戦できた」ことが自信につながるのです。
ただし、すぐに気持ちが切り替わるわけではありません。移行期間はある程度時間を作らなくてはなりませんし、目的が「ご褒美」から「ポイントを貯めて認めてもらえること」になるまでには繰り返し形のないご褒美を続ける必要があります。
ご褒美をやめて欲しい行動に対して与える
アンダーマイニング効果を利用して、好まない行動をやめてもらうこともできます。例えば「勉強して欲しいのに、ずっとゲームしているな…」と思ったら、反対にゲームをしていることに対してご褒美を与えるのです。
ステージをクリアしたらおやつをあげる。すると、子供はおやつのためにゲームをクリアし続けます。ですが、ある日「ご褒美がなくなっちゃった」とおやつをなくすと、子供はゲームに対してもやる気をなくすかもしれません。
極端な例ではありますが、アンダーマイニング効果をこのように使うと、子供にやめて欲しい行動をストップさせる効果も期待できるでしょう。
子供に影響の出るアンダーマイニング効果には要注意!
やる気を失うこともあるアンダーマイニング効果。ご褒美には十分に気を付けたいものですね。最後に2点、アンダーマイニング効果において気を付けるべきことを見ていきましょう。
「もので釣る」ことが内的動機づけのきっかけになることも
もので釣るのは決しておすすめできませんが、内発的動機づけのきっかけになることもあります。世界的な体操選手が、スポーツを始めたきっかけは「おもちゃが買ってもらえるから」と答えても珍しくありませんよね。
親が子供を思うからこそ、外発的動機づけは育児においてよく見られるのかもしれません。大切なのは続けて欲しいのなら、次第に内発的動機づけにつながるように子供を正しく導くことです。
子供が何にやる気を見出しているのかチェックしよう
アンダーマイニング効果において、気を付けておきたいのがママが「そのつもりはなかったのに」子供のやる気を奪ってしまうことです。スポーツや習い事など、子供が何にやりがいを持ち、やる気を見出しているのかはしっかり見守ってあげてください。
褒めたいな、と思ったら声を掛けるだけでよいのです。また、声かけは「次も○○できるね」といった期待や「頑張ったね。でもお兄ちゃんはもっとできていたよ」といった比較を決して使ってはいけません。適したご褒美を見つけて、子供と一緒に成功を喜び、気持ちを共感できると理想的です。
まとめ
子供のやる気を引き出すのは、とても難しいもの。よかれと思って与えたご褒美が、アンダーマイニング効果によってやる気を奪うこともあります。
アンダーマイニング効果の特徴をしっかり知っておき、「やる気を失くす」リスクについても頭に入れておきましょう。ご褒美は適した方法で上手に与えて、子供のやる気を育めるとよいですね。
【参考】