「古典的条件付け」を知ると育児が楽になる!心理学的に詳しく解説

古典的条件付け

パブロフの犬」という言葉を耳にしたママは多いですよね。これは「ある特定の刺激に反応すること」を指す心理的現象です。

パブロフの犬は正しくは「古典的条件付け」と表され、実はこの心理学は育児のシーンで便利に活用できます。心理学を知ると育児が楽になる、今回は古典的条件付けとは何か、育児への活かし方や気を付けるポイントまで詳しくご紹介します。

古典的条件付けとは?

古典的条件付けとは、端的にいうと「自然に起こる無条件な反応を、ある特定の刺激に反応するようにする」ことを指します。何となく言葉にすると分かりづらいですよね。例を挙げてどんな現象なのか、詳しくチェックしていきましょう。

無条件反応を生成する条件付けのこと

古典的条件付けを実証する実験として「パブロフの犬」が最も有名です。パブロフとはロシアの生理学者。パブロフは実験の中で犬に餌を与える前に、ベルを鳴らすことを繰り返し行いました。犬は食べ物を見ると無条件で唾液を出しますが、パブロフの犬は食べ物が目の前にないにもかかわらず、ベルの音を聴くだけで唾液を出すようになったのです。

「食べ物を見ると唾液が出る」のは生理現象です。これは犬だけでなく人間も同じように備わっており、例えばテレビでレモンや梅干しを見ると、唾液が出ることがありますよね。高所からバンジージャンプをする映像を見て、実際に体験していないのに足がすくむこともあるかもしれません。これが古典的条件付けです。

この古典的条件付けは、育児において活用できるシーンが実は多いと言われています。犬と子供を一緒にするのは少し語弊がありますが、生き物としての無条件反応を利用すると生活リズムを整えるのに役立ったり、取り掛かるのに勇気が必要な場面で楽に取り組めたりできるのです。

オペラント条件付けとの違い

同じように育児に活用できる心理学として「オペラント条件付け」があります。古典的条件付けを調べてみるとわかるのですが、この2つはしばしば混同して考えられがちです。

当ブログでもオペラント条件付けをご紹介しましたが、オペラント条件付けは「無条件反応を生成する」のではなく「褒められたい、何かを得たいから自発的に行動を繰り返す」特徴があります。人間の生理に働きかけるのが古典的条件付け、心理に働きかけるのがオペラント条件付けと考えるとわかりやすいかもしれません。

育児ではオペラント条件付けは「褒めるとき」「叱るとき」に活かすとよいとされています。褒めるタイミングがわからない、正しい褒め方で悩んでいる…というママはオペラント条件付けについて解説した記事を参考にしてくださいね。

古典的条件付けを育児に活かそう!

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では、古典的条件付けを育児に活かしてみましょう。さまざまな場面で活用できるので、今困っている育児の問題点が解決できるかもしれません。

寝る前に嗅ぐ香りを固定する

無条件反射というと、聴覚や視覚、味覚、触覚と嗅覚を指します。先ほどご紹介したような、「レモンや梅干しを見ると唾液が出る」といったような無条件反射は視覚から得たもので、パブロフの犬に関しては「ベルの音を聞く」という聴覚に訴えかける反射でした。このうち、嗅覚は他の間隔よりも無条件反射が起こりやすいと言われています。

例えば子供の寝かしつけに時間がかかっている場合、リラックス効果のある香りを毎晩寝室で楽しんでみてはいかがでしょうか。匂いは記憶と結びつく効果もあり、「この匂いがしてきたら寝る時間」と子供に働きかけることができます。

アロマを炊いてみたり寝具に匂いをつけてみたり、最近では入眠に適した香りのアロマオイル、ナイトクリームも販売されているため、試してみるとよいかもしれません。

お掃除、お片付けのときに音楽を流す

実際に幼稚園や保育園、小学校で実践されている古典的条件付けです。お掃除やお片付けのときに、「お掃除の音楽」が流れていないでしょうか?無意識のうちに子供たちがこの音楽を繰り返し聞くことで、音楽が流れると「掃除の時間」と気づくようになります。

お片付けとは言い聞かせてもなかなか習慣化してくれないものですが、「音楽が鳴る=お片付けの時間」と覚えてくれると取り掛かりやすいですよね。習慣になるまで時間はかかりますが、おうちでも音楽を流して「何をする時間か」を教えてあげると便利です。

テレビ番組を使って「○○が始まったらお着替えするよ」

こちらも音楽と同じ効果がありますが、朝の支度に使える古典的条件付けの活用法です。朝通園や通学前の支度は大仕事。「時間が迫っているのに子供がなかなか支度をしない!」とイライラするママは多いですよね。朝は同じ番組が流れているので、「○○が始まったらお着替えしようね」と声掛けすると子供も反射的に支度できることもあります。

時計を見る、自分で時間を把握するのも大切ではありますが、小さな子だとなかなか時計を見る習慣が身に付いていないことも。時計が読める年齢かどうかもかかわってくるでしょう。そのためテレビ番組を合図にすると、子供にとっても分かりやすいのがメリットです。

朝起きたらカーテンを開ける、換気する

子供だけでなく大人にも良い習慣づけになるこちらの方法。朝起きたらカーテンを開けて朝陽を浴びるだけで体に「朝がきた、起きよう」と呼びかけることができます。育児中、「子供がなかなか起きてこない!」と悩むことも多いですよね。寝起きは機嫌が悪いという子でも、自然と起きるための条件を揃えると楽に起き上がれるようになります。

古典的条件付けを育児に活用。気を付けるポイント

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古典的条件付けは育児に活用しやすいのですが、気を付けたいポイントもいくつかあります。もっと古典的条件付けを知るために、気を付けておきたいことを見ていきましょう。

条件が消えることもある

古典的条件付けは条件が満たされ反射が起こるまでも時間がかかります。「寝かしつけのためにアロマを炊くことにしたけど、その日のうちに効果が出るわけでない」といったように、毎日繰り返し行うことで達成できるものです。

さらに、条件の消失もあるため注意しなくてはなりません。例えばこの寝かしつけの香りを普段からずっと嗅いでいると、次第に眠たくなるような効果が得られなくなるのです。お片付けの曲を普段から聞いてしまうと、いざお片付けの時間に流しても子供にとっては反射が起こらないでしょう。

これは気を付けるべきポイントではありますが、間違った条件付けが起きてしまっても修正は可能です。合わせて覚えておくとよいでしょう。

嫌悪の条件付けにならないように注意

次に嫌悪の条件付けにならないよう注意が必要です。例えば風邪気味のときに特定の食べ物ばかり与えていると、健康な状態で食べ物を摂ったときに「体調が悪い気がする…」と錯覚してしまうことです。また、怒られたときに見ていたもの、聞いていたものも嫌悪の条件付けになってしまうかもしれません。

古典的条件付けは育児に活かせる分、ポジティブな使い方が理想ですね。嫌悪も条件付けに入ってしまうことは覚えておいて、普段の生活の中で気を付けておけば変に怖がる必要もありません。

まとめ

心理学の中でも有名な古典的条件付け。育児に活用できることもあれば、ママ達大人の生活にも取り入れたいものもあります。活用の仕方には気を付けつつ、育児のお悩みの解決に使ってみてくださいね。

【参考】

科学的な子育てのヒント―やさしい教育心理学―|人類の育て方―子育てや教育などのおすすめ本

発達心理学でもっとも有名な実験:アルバート坊や| 同志社大学 赤ちゃん学研究センター

ジョン・B・ワトソンと「恐怖条件付け」「子育て論」「行動主義」

古典的条件付けとは? オペラント条件付けとの違いや日常例|「マイナビウーマン」

古典的条件づけとオペラント条件づけ、違いを説明できますか? | 四谷学院心理学講座_公式ブログ

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。