みなさんは「ミラーニューロン」をご存じですか?神経細胞のひとつであり、他人の行動と自分の行動が共感する神経のことを指します。
「なんだか難しい…」と感じる方も多いかもしれませんが、実はミラーニューロンは子育てにおいて大切な存在。今回は「子は親の背を見て育つ」ことを詳しく解説します。
ミラーニューロンって何?
子育て中でも知っておくとよいミラーニューロン。そもそも、ミラーニューロンとはどういったものを指すのでしょうか。基本的な知識からチェックしていきましょう。
相手が経験していることを自分も経験しているような感覚のこと
ミラーニューロンとは、
「ミラーニューロン」は、他者の行動やその意図を理解する手助けになると考えられている神経細胞
他者と自己の区別をしない神経細胞:ミラーニューロン | WIRED.jp
を指します。簡単に言い換えてみると、「他の人の行動を見て、自分ごととして学ぶ」ために必要な細胞がミラーニューロンです。
ミラーニューロンはイタリアのパルマ大学で発見されました。研究者がサルの運動前野を調べていたとき、手指を動かしていないのに一部の神経が活動したといいます。「何かが動くのを見たサルが、自分が動いていないにもかかわらず神経細胞が活動した」ことから、人は目で見たことを自分が体験しているように感じる神経が備わっているのが分かったのです。
例えばテレビでカレーが出てきたら、匂いを嗅いでもいないのに「おいしそう!」と思うことがありますよね。お腹が空いてしまうという方もいるでしょう。これはミラーニューロンが活動しているために、目で見た映像を体験しているような感覚になり、自分の気持ちが共感しているのです。
「親の姿を子供は見て学ぶ」
では、育児においてなぜミラーニューロンは大切なのでしょうか。よく「子は親の背を見て育つ」と言われますが、実際に子供はママやパパの行動をしっかり見ています。ここで、ミラーニューロンが働くことで、親の姿を子供は見て学んでいるのです。
子供とお話していると「話し方がパパそっくり」「私の口癖を子供も使ってる!」と気づくことがありますよね。これも、ミラーニューロンが活動している証拠です。他にも赤ちゃんはハンドサインを見て覚え、喋れなくてもママに気持ちを伝えることができます。育児する上で、親の姿勢を見せて学ぶことはとても大切なのです。
身近なミラーニューロンの例
身近なところにもミラーニューロン効果は見られます。もう少し詳しく知るために、ミラーニューロンの例をご紹介しましょう。
動画や映像、テレビを見て「できる感覚」になる
自分にとっては難しいことでも、テレビや映像で見ていると「できる感覚」が起こります。スポーツ選手が自分のプレイ映像を録画し、練習後にチェックするのと同じ現象です。
例えば私の息子は回っている長縄に入るタイミングが掴めず、どうしても参加できませんでした。しかし、長縄を楽しむ子供の動画を繰り返し見ていると、いつの間にかできるようになっていたのです。
子供は目で見て覚えるもの。「なかなかうちの子がスポーツをやってくれない」というママは、動画などで子供に興味を持ってもらうとうまくいくかもしれませんね。
ネガティブ思考の人と過ごすと気分が落ち込む
身近に愚痴や不満が多く、常にネガティブ思考の方はいないでしょうか。「目で見て共感する」のは何も映像や実際の行動だけでなく、気持ちも当然共有してしまいます。ネガティブ思考の人と過ごしていると、なんとなく気分が落ち込み「私も何をやってもダメかもしれない」と感じてしまうかもしれませんね。
反対に、努力する人や一生懸命にものごとを取り組む姿を見て「私もやってみよう!頑張ってみたい!」とやる気が出るのもミラーニューロン効果のひとつ。動画サイトでは活動的な芸能人やおしゃれな生活を送る人の「ルーティン動画」が人気ですが、これは自分の理想的な暮らしをしている人を見て、まるでそんな生活をしている気分になれるという共感の表れかもしれません。
子供を褒めるときょうだいが張り合ってくる
これも育児で見られるミラーニューロン効果です。子供が目的を達成して「すごいね!頑張ったね!」と褒めると、きょうだいが「僕も、私も頑張ったよ」と張り合ってくることはないでしょうか。保育現場でもたびたび見られるこの現象は、他人に与えられている「すごい」という感情に共感し、欲しいと思う表れです。
また、子供が一人泣き出すとつられて我が子も泣き出したり。特に病院などでよく見られるものですよね。無意識の中ではありますが、意外と大人も子供も周りにいるさまざまな人の影響を受けているのです。
ミラーニューロンを子育てに活かすには?
悪い影響も良い影響もあるミラーニューロン。この効果は子育てに活用することができます。少し意識するだけで育児がぐっと楽になるので、ぜひ参考にしてくださいね。
【乳児期】コミュニケーションを取って子供の成長を促す
乳児期は目で見てさまざまなことを学び、急速に成長する時期。言葉をまだ理解しない赤ちゃんだから声をかけなくていいか、笑顔で接する必要はないと思わずに、赤ちゃんだからこそ自分の姿勢を顧みて繰り返し言葉に出して話しかけましょう。
乳児は親の
- 話す言葉
- 口の動き
- 表情
などを読み取って自分の表現として落とし込みます。体を動かして見せてもよいですし、たくさんコミュニケーションを取るようにしましょう。
赤ちゃんの時期にどれだけ感情豊かに子供に向き合って接するかは、その後の子供の心の成長に大きく影響します。今まであまり意識してこなかった、という方は今日この瞬間からぜひ心掛けてみてくださいね。
この時期に「あまりテレビを見せない方がよい」とは言われていますが、子供にも手のかかる時期でテレビ視聴をゼロにはできないママがほとんどです。テレビを見せてもよいけれど、ママも一緒に視聴して、歌あそびや体操など一緒に体験・共感できるように心がけましょう。
【幼児期】ママが「やって見せる」
3歳以降の幼児期はママがする掃除や調理など、日常的な動作にも興味が出始める頃。なんでも真似をしたがり、「やってみたい!」「自分で!」と自我も発達します。このときこそ、ミラーニューロン効果を利用して子供にさまざまな体験を与えるチャンスです。
お手伝いなどに興味を示したら、一緒にやってみましょう。ママがやって見せることで、子供は手や道具の使い方を学びます。同じようにママ自身がやって欲しいことがあれば、まずはお手本を見せてやり方を伝えましょう。
例えばお片付けして欲しいときは「片付けなさい!」というよりも、一緒におもちゃを道具箱まで運び、どのように収納するのかまで見せた方が子供にとっても分かりやすいです。お手伝いなどの良い習慣は幼児期から始めておくと身につきやすので、ぜひ始めてくださいね。
こちらの記事ではお手伝いについて詳しくお伝えしています。▼
【学童期】親の行動を見直すのも大切
小学生以降の学童期では、子供には子供の意見があり交友関係も広くなり、子供は自立へと少しずつ進んでいきます。しかし、親の姿はいつになってもしっかり見ているもの。「最近言うことを聞かなくなってきた。言い聞かせも伝わらない」と感じるときは、親の行動を見直してみてもよいかもしれません。
- 勉強をして欲しかったら、親も学ぶ姿を見せる
- 優しい子になって欲しかったら、優しく接する
- 言葉遣いが汚いときは、親も乱暴になっていないか思い返してみる
「勉強しなさい」「○○しさない」とつい命令口調になってしまいますが、こうして言葉で伝える前に子供のミラーニューロンは親の行動からさまざまなことを感じ取っています。大人でもそうですが、言葉だけで強制されると途端にやる気をなくしてしまいますよね。ミラーニューロンの働きに訴えると、言って聞かせるよりもうまくいくかもしれません。
まとめ
子供は親の姿を見て学ぶことが証明できるミラーニューロン。少し意識するだけで、育児において子供との接し方も大きく変わるかと思います。
子育てにも役立つうえ、子供に何かを伝える場合も楽になるので、ぜひ暮らしの中でミラーニューロン効果を利用してみてくださいね。
【参考】