育児にはさまざまな壁がありますが、中でもママの悩みとなるのが「9歳の壁」です。この時期の子どもは心が揺らぎやすく、他者と自分との違いを認識し、「自分はこれでいいのかな?」と悩む段階に入ります。
今回はそんな9歳の壁を、発達障害のある子がどう乗り越えるかを解説します。少しやっかいなものに感じるのですが、上手に乗り越えられると子どもが大きく成長できることも。ママができる子どもへの声掛け方法をご紹介します。
9歳の壁とは
そもそも9歳の壁とは何を指すのでしょうか。9歳の壁は////ものであり、健常児と発達っ子に違いはありません。
子どもの心が成長し、周囲と自分との差を認識し始める9歳
9歳というと小学3~4年生。これまで、子どもは「家族と自分」といった身内だけで完結された関係性を持っていましたが、友達を認識し「他人と自分」のような他者との違いや区別がよりはっきり感じ取れるようになります。
すると、周囲と自分との差を認識し始め、
- 「○○ちゃんはこうだけど、私はこれでいいのかな」
- 「周りのみんなはできるのに、私はできない」
- 「どうして私と違うことばかり言うんだろう?」
と悩みを持つようになるのです。
特に発達障害・グレーゾーンの子どもだと、苦手なことやできないことが多く、「周りのみんな」と同じようにするのが難しいもの。より自分の劣っている点やできないこと、周囲から浮いている…などに気付きやすく、自信を失って自己肯定感を低めてしまうのです。
学習はより難しい段階に
9歳以降の学習は「具体的なこと」から「抽象的なこと」に変化します。分かりやすい例だと算数の授業では、
から
0.235+0.522=?
と頭ではイメージしにくい設問が増えます。少数、分数といった子どもの生活の中ではあまり身近でないものも学習しなくてはなりません。
発達障害やグレーゾーンの子にとって、抽象的な概念は特に理解が難しいです。頭の使い方や考え方に慣れるとどんどん学習が進む子もいますが、思考力・理解力を求められる小学校高学年の学習ではつまずきを覚えやすいのも事実です。
ママの働き方を考え直さなくてはならないことも
また、9歳の壁は子ども自身が乗り越えるものとママにも乗り越えなくてはならないものもあります。公立学童は小学3年生以降は利用できないことが多く、学童保育を変えたりママの働き方を見直したりする必要も出てくるでしょう。
子どもの交友関係が変化するにつれ、放課後は子どもが一人でお留守番する機会も増えるかもしれません。9歳は心の大切な成長過渡期であるからこそママはそばにいたいものですが、家族の時間・親子の時間をうまく作れず、より大きな壁を感じてしまう方も多いです。
発達障害のある我が子、9歳の壁ではどうなる?
発達障害のある子だと、9歳の壁はどう感じるのでしょうか。ここからは「発達障害・グレーゾーンの子」であることを踏まえて、9歳の壁を考えていきます。
他人の気持ちが察せないことで友人関係を築くのが難しい
9歳の壁では、子どもの心情環境に大きな変化が見られます。周りの子もこれまでの主観が強い世界から、次第に客観視ができ「誰と仲良くしたいのか」と考える子も出てくるでしょう。この気持ちの変化を発達障害・グレーゾーンの子は「察する」のが難しいことも多く、トラブルが起こるケースも少なくありません。
グレーゾーンの9歳の子が、ある日「お友達がお話してくれなくなった」と言います。ママが聞いてみると「お友達が違うお友達の悪口を言っていた。だから悪口を言われたお友達に教えてあげたら、お友達が怒り始めた」といった出来事があったそう。いわゆる陰口によるトラブルですが、「何か意見があれば直接伝えるべき」と考えているその子には、なぜお友達が怒っているのかが理解しにくいようです。
このように、友人関係でトラブルが増えるのもこの時期。子どもの関係性にどこまで親が踏み込んでいいのか、悩むママも実際に増えます。
抽象思考が理解できない
抽象思考が求められる9歳。ですが、発達障害・グレーゾーンの子はこの思考を苦手とする子が多いのも事実です。そもそも抽象思考とは、
私たち大人には、「心の中に(あるいは自分の外に)もう一人の誰かがいる」という感覚があります(心理学でいう「メタ認知」)。考えるプロセスとは、まさに「もう一人の誰か」との対話です。本を読むときでも、文章を書くときでも、私たちは無言の対話をしています。
9歳の壁・10歳の壁:遊び・おもちゃが子どもを賢くする12の理由
このように、自分の中にいるもう一人の誰かを認識することこそ抽象思考です。“自分”だけじゃなく“もう一人の誰か”が客観視することで、その対話を通じて物事を抽象的・俯瞰的に捉えることができます。
9歳はこの思考を学んでいる最中といえますが、発達障害・グレーゾーンの子は理解するまでに時間がかかります。ママとしては相当やきもきする時期だとは思いますが、発達障害とは「発達しない障害」ではありません。「通常よりもゆっくりと、もしくは特異的に発達する障害」なのです。子どもを信じて、成長を見守ることもときには大切です。
周囲の子との学習能力の差が気になることも
さまざまな特性を持つ発達障害・グレーゾーンのある子なので、学習能力の差を感じやすいのも9歳の壁の特徴。周囲の子は我が子よりずっと頭がよくて、簡単に壁を乗り越えているように感じるかもしれません。また、周囲との差に子どもが気付き、悩むことももちろん多いです。
ただ、困っているのは何よりも子どもであるのを意識しておきましょう。とはいえママをはじめとする周囲の大人が心配・不安を感じるのは不自然ではありません。「子どもが壁を乗り越えなきゃいけないんだから」と自分の感情を押し殺すのではなく、発達の凹凸や子どもの心理状況を考えながら、時には専門家の力も借りつつ9歳の壁を乗り越えていけるとベストです。
発達障害のある子の9歳の壁、乗り越え方とは
悩みの元にもなる9歳の壁。この壁を乗り越えると、発達障害・グレーゾーンの子は大きく成長できます。適切な向き合い方、声掛けの方法を一緒に考えてみましょう。
子どもを認める、受け入れる
さまざまな考え方、客観的な見方ができるようになる9歳とはいえ、まだまだ考え方も未熟で大人から見るともどかしいかもしれません。ですが、子どもの言動に対して「普通はそう考えない」「あなたは間違っている」と強要しないようにしましょう。
繰り返しになりますが、9歳の壁を乗り越えるのは子ども自身であり、一番悩みを抱えているのも我が子です。ママとしてはそんな子どもの一番の味方になってあげて、考えを聞いてあげられると良いですね。
周囲からの理解を得ることが難しい、周りを理解するのに時間がかかる発達障害・グレーゾーンの子だからこそ、ママは安心できる存在になれると理想的です。子どもの行動そのものを何でも肯定するのではなく、「そう考えている」という我が子の主張は「そうなんだね、そう思うんだね」と認めてあげましょう。簡単なことですが、実は忘れてしまいがちな育児のポイントです。
子どもの強みをさらに伸ばす
発達障害・グレーゾーンの子は特性に凹凸があり、得意なことと苦手なことの差が大きいです。どんな状況が苦手なのか、また、どんな状況なら強みを押し出しやすいのかを把握しサポートしてみましょう。
記憶力が良い子だと、9歳になって難しくなった学習面を記憶することで補えるかもしれません。抽象思考が難しい子は、絵や図形にして説明すると把握できるかもしれませんね。学習をサポートするためには、自宅であればさまざまな手段を講じられるでしょう。
ここで子どもの強み、どんなところでつまずきやすいのかの弱みを知っておくと、今後の育児はずっと楽になります。できないことばかりを見て悩むのではなく、できることに目を向けて特性を生かしてみましょう。
「他には何が困ってるの?」
9歳になって変化する周囲の環境、また困っていることを子どもが伝えてくれる機会があるかもしれません。一度悩みを聞き出せたら、「他にはない?」と引き出してあげましょう。
「それで?他には?」
というのは、一見突き放しているようにも見えます。ですが、この言葉があると子どもは「ママは話を聞いてくれる」と信頼するようになるのです。溜まったストレスを発散することもでき、子どもにとっては気持ちが楽になるかもしれませんね。
悩みを聞いて、すぐに解決できることは少ないです。発達障害・グレーゾーンの子を持つママなら何度も経験したことかもしれませんが、たった今解消できる育児の問題はほとんどありません。ですが、話を聞いて一緒に考えることは今すぐできます。子どもの意見を最初から否定せず、受け入れて他の悩みも聞き出してみてください。
まとめ
発達障害・グレーゾーンの子にも出てくる9歳の壁。少しやっかいで避けたくなるようなイメージが持たれがちですが、子どもの成長にとっては欠かせない壁であり、これを乗り越えると大きく成長できます。
正しい向き合い方をママは頭に入れておき、子どもの一番の味方になってあげてくださいね。
【参考】
9歳の壁を乗り越えて、発達障害の子どもの「やってみよう!」が育つお母さんの声かけ | 発達科学コミュニケーション
9歳の壁・10歳の壁:遊び・おもちゃが子どもを賢くする12の理由
小学生の発達障害 | 特徴と支援のポイントを解説 : 診断別・年齢別の特徴まとめ – TEENS
「9歳の壁」は発達障害の特性を目立たせる!友達トラブルに悩むお子さんには『おうちカウンセリング』で対応しましょう | パステル総研
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