思うようにいかない、予想外のことばかり起こる育児中。子供に対してイライラし、「叩きそうになる」「叩いたことがある」というママもいるかもしれません。
育児中にママがイライラするのは、当然のことであり「怒りの感情」自体は否定しなくてもよいものです。しかし、怒りのあまり子供を叩くと悪い影響が及びます。
ママ自身、思わず手が出てしまったときは「なんで叩いてしまったんだろう」と後悔しますよね。
今回はイライラして子供を叩く・叩きそうになる方に向けて、叩かず言い聞かせする方法やママ自身をストレスからケアする方法をご紹介します。
イライラして子供を叩く…。その影響とは
育児中、どうしようもなくイライラして子供を叩いてしまう。そんな事態は決して珍しいものではありません。ただ、子供を叩くことが習慣づくと子供にとって悪い影響が起こるのです。
まずは子供を叩くと起こるデメリットについて、詳しく知っておきましょう。
繰り返し叩くと子供の脳は傷を受ける
「叩いているのは躾のため」と子供を叩くことを正当化する方もいます。ですが、2020年4月に児童福祉法が改正され、親が子供をしつける場合に体罰を加えてはならないと決められました。
子供を繰り返し叩いたり、ひどく怒鳴りつけたりする体罰を続けると、脳の感情や思考をコントロールする「前頭前野」が萎縮します*1。また、集中力や意思決定する際に使う「前帯状回」も小さくなるため、
- 長時間じっとできないため座学がこなせない
- 何も決定できず、自分の意思を他者に伝えられない
- 善悪の区別がつかず、暴力的になったりする
などの問題行動が増えることも分かっています*2。
常に親の顔色をうかがい、行動するようになる
子供を叩くのは「言うことを聞いて欲しいから」と理由があるのかもしれません。しかし、叩いたからといって子供に言い聞かせできるかというと、そうではないのです。
子供を怒鳴り、叩くことで子供は言われた通りに動くかもしれませんね。「ごめんなさい」と反射的に謝る子も多いです。ただ、その行動は「悪いことをした」「なぜやってはならないのかを理解した」からではなく単純に「叩かれたくないから」問題行動をやめているだけです。
ずっと叩く育児をしていると、子供の行動目的が「悪いことだからやらないようにする」から「ママに叩かれないようにする」に切り替わってしまいます。常に親の顔色を窺い、自分で何が良いことで何が悪いことなのかを考えないため、結局しつけ・言い聞かせにはならないのです。
怒りの表現方法は「叩くこと」と覚えてしまう
子供は親の行動や仕草を生活の中で見習い、真似するようになります。良い行動を真似するとその分子供にとって学習になりますが、真似には親の口癖や真似して欲しくない行動も含まれる点に注意しておきましょう。
ずっと怒りながら子供を叩くと、子供の中で怒りの表現は「叩くこと」と覚えてしまいます。下の子を叩いたり、お友達を叩いたりと子供が親を真似してしまうのです。
以上のように子供を叩くと悪い影響が起こり、決してメリットはありません。子供を言い聞かせる方法は叩く以外にたくさんあるので、まずはイライラに任せて子供を叩くことをやめなければなりません。
イライラして子供を叩く前に。子供との向き合い方
ただ、育児中のイライラはそう防げるものではありません。毎日仕事に家事にと忙しいママにとって、思うようにいかない育児中はストレスが溜まります。
「叩く育児」は否定しますが、「イライラする気持ち」自体は認めてあげて、子供との向き合い方を考えましょう。
まずは「叩かない」「怒鳴らない」とママ自身が決意する
叩かない育児をするためには、まずママ自身が「叩かない」「怒鳴らない」と決めるところから始めます。当然のことのように思えますが、「ついイライラすると手を出してしまう」ということがクセとなっている方には、まずは自分自身の中で「決意」をすることが大切です。
叩いたり、怒鳴ったりしても自分の思うように子供は動いてくれないのは、先ほど説明した通りです。しつけのために叩くのは「必要悪」と考える方もいるかもしれませんが、叩いたところで子供に言い聞かせの本質は伝わりません。
育児で言い聞かせする手段から、まずは叩くと怒鳴るの選択肢を消しましょう。
イライラしたら「怒りの感情」を落ち着ける
自分がイライラしているな、と思ったら怒りの感情を落ち着ける行動をとるのもひとつの手段です。怒りにはピークがあり、それはたったの6秒間と言われています。
イライラして手を出しそうになったら、まずは目を閉じてわざとゆっくり呼吸をし、7秒を数えてください。怒っている時は早くカウントしがちなので、7秒のカウントがおすすめです。カウント中は決して他のことを考えず、ただ数字を数えることだけに集中するとうまくいくでしょう。
怒りのピークを越えてから子供に言い聞かせすると、怒鳴ったり叩いたりするのを防げます。また、どうしても子供にイライラしてカウントすらできない時は、子供の安全を確保したうえで部屋を出たり、放置したりして距離を取ってもOKです。
「放置、無視するのも子供にとって良くないのでは…」と考える方もいますが、叩く・怒鳴るのが日常化する方がよっぽど子供にとって悪影響。怒りを感情的に子供にぶつける前に、自分でできる対処は試してみるべきです。
イライラの原因を考えて解消する
イライラして子供を叩きそうになる。この時に一度考えてみたいのが、怒りは突如として現れるものではないという点です。
- 朝の支度中、時間がなくて「焦っていて」イライラする
- 大切なものを壊されて「悲しくて」イライラする
- 体調不良や頭痛が続き「苦しくて」イライラする
など、イライラには根本原因があります。
忙しくて焦りを覚える時は、時間をたっぷり用意して子供と向き合いましょう。大切なものは壊される前に安全な場所にしまっておくと良いですね。
ママ自身の体調不良は、特にイライラに繋がりやすいものです。体調が悪ければパパに相談したり家事の手を抜いたり子供と一緒にお昼寝したりして、自分の休憩する時間を意識的に作りましょう。
イライラして子供を叩くママは多い。ケア方法もチェック
子供を叩くと悪い影響が出る。では、みなさんが「イライラして子供を叩いたことはない」のかというとこれは少し違います。
NHKが行った1歳以上の子供を持つ親に対するアンケートによると、
Q.子どもをたたいたことはありますか?
ある…71%
ない…29%
子どもの虐待を考える② 〜たたく子育て どうすればやめられる?~NHK すくすく子育て情報
約7割の親が子供に手を上げたことがあると回答しました。
「子供を叩いてしまった。他のママはずっとうまくやっているのに…」と自分を責める必要はありません。また、一度手を上げたからといって子供の脳が元に戻らないわけではありませんし、取返しがつかないことではないということも知っておきましょう。
ただ、「子供を叩く育児」は繰り返さないように、ママ自身をケアするのが大切です。
「やりすぎた」と思ったら素直に認めて謝る
子供に対してイライラし、ひどく怒ってしまった、叩いてしまった。ママ自身「やりすぎた」と思ったらその行為を認めて素直に謝りましょう。
子供に謝るのは、言い聞かせをすべて終えてからがおすすめです。子供に同時にいろいろと言い聞かせても、メッセージが伝わらないことがあるからです。
- 「ママは疲れていて怒ってしまった」
- 「叩いたのは良くなかったよね。ごめんね」
- 「〇〇して、ママは悲しくて怒ってしまったんだよ」
など、理由を添えて子供に伝えてみてください。親子間で起きた問題はどちらも納得できる形で解決すると良いでしょう。
どうしても解決できなければ専門機関に相談を
子供を叩くのがやめられない。イライラが収まらないというママももちろんいます。自分だけで解決できなければ、子供の安全を第一に考えてしかるべき機関に相談しましょう。
- 保健センター
- 子育て支援センター
- 児童発達支援センター
- 児童相談所
- 小児科 など
では子供の育児で起きた問題を相談できます。
この時「子供を叩いてしまい、正しいやり方が分からない」と子供を主語にして相談すると、求めていない育児のアドバイスを受けたり本当に相談したい「自分が苦しい」点が説明できません。
「子供を叩いてしまい、自分が辛い。誰にも頼れず自分が壊れそう」と主語をママにして助けを求めましょう。正しくSOSを出すことで、自分の感じる苦しみが緩和するだけでなく、子供の健やかな成長も守れます。
まとめ
イライラして子供を叩く。もちろん、育児中にイライラして手を上げてしまうシーンもあるでしょう。子供を叩くことが一度でもあったからといって、取返しの付かないことではありません。大切なのは「なぜ叩いたのか」をママ自身が理解し、「次は叩かない」と決意して適切な言い聞かせ方法に変えることです。
イライラする気持ち自体は否定せず、イライラの解消法を考えてよりよい親子関係が築けるよう、ママは自分のことも大切にしてみてください。
【参考】
*2子どもの脳を傷つける親たち NHK出版新書 著:友田明美
”まねっこ”は学習行為のひとつ。 子どものまね心をくすぐって「やってみたい!」を引き出すコツ たまひよ