忙しい時に子供がいたずら。出かける直前に遊び始めて、言うことを聞いてくれない。一度言ったのに繰り返されると、子供を思わず「こら!」と怒鳴りたくなる時もありますよね。育児をするママなら、みなさん一度は身に覚えのあることかもしれません。
ですが、この「子供を怒鳴る」のはよくないこと。怒鳴る親は子供に対して、悪い影響を与えます。
「なら、一切怒鳴らず叱らない育児をしたらいいの?」と思いますよね。今回は怒鳴らない親と怒鳴る親どちらがいいのか、また怒鳴る親が子供に与える影響やつい「怒鳴ってしまった」時の対応法をご紹介します。
怒鳴る親が子供に与える影響とは?
まずは怒鳴る親が子供に与える影響を見ていきましょう。
「怒鳴る」などのマルトリートメントで子供が傷つく
- 子供を日常的に怒鳴りつける
- 体罰を与える
- 夫婦喧嘩を見せる
- 子供の発達を阻害するような行為
などの子供への行動、不適切な養育のことを「マルトリートメント」と呼びます。
子供に対して悪い影響が出る養育の仕方というと、虐待などの度が過ぎた行為をイメージする方は多いです。しかし、「強く叱りつける、怒鳴る」「スマホに夢中になって子供の呼びかけを無視する」などの日常的に起こり得る養育の中にも、マルトリートメントは含まれているのです。意外と「心当たりがある」という方もいるかもしれませんね。
マルトリートメントを繰り返すと、子供の脳は少しずつ傷つき萎縮することが分かっています。脳が傷つくと、問題行動が見られたり親子関係が悪化したりと、マイナスの影響が目立ちます。
親の機嫌や顔色でよしあしを判断するようになる
親が子供に怒鳴ると、子供はどう受け取るでしょうか。
- 大きな声で叱られて、びっくりした
- 突然怒られて泣き出した
- とにかく親が怖い、機嫌が悪そうだ
子供に対して怒鳴ると一時的に問題のある行動はストップするので、言い聞かせできたようには感じます。しかし、それは「怒鳴る親を止めたい」一心で行動するだけ。「これはやってよい」「これはやってはいけない」という善悪の判断は、「ママに怒鳴られるかどうか」で決めるようになるのです。
何が問題かというと、
- 結局なぜ親が怒鳴っているのか
- 怒鳴った原因や悪かった点は何なのか
は伝わっていない点です。親の顔色をうかがって行動する癖がつくと、子供の行動も萎縮してしまいますよね。怒鳴ると「良い子に育つ」のではなく「親にとって都合の良い子に育つ」のです。これでは、本質的には子供は何も学べていません。
本来ならば「やってはいけないこと」を子供が隠すようになる
怒鳴り続けているとその恐怖だけを覚えてしまい、もし「やってはいけないこと」を子供がした場合に、親に「怒られたくない」という気持ちから、そのことを親に隠すようになります。子供には素直に、正直に育って欲しいと思う気持ちはみなさんが持っていることと思いますが、日常的に怒鳴るとその反対に子供は行動してしまうのです。
最初は子供が隠すのはささいないたずらや、自分にだけ都合の悪いことで済んでいたかもしれません。しかし、次第に周囲に迷惑をかける行動に対しても親に隠すようになるので、大きなトラブルの原因になる可能性もあります。
子供に怒鳴る親、怒鳴らない親どちらがいいの?
子供に怒鳴る親が与えるのは、悪影響しかありません。
では、「一切怒鳴らず育児をする」のがベストなのかというとこれは難しい話です。ママなら経験があるように、子供が社会で生きる一人の人間である以上、マナーやルールを教えなくてはいけない場面は必ず出てきます。
ポイントとしては「怒る」「叱る」二つの違いを考え、子供にとって適した言い聞かせをすることです。
まずは「怒る」「叱る」二つの違いを考えよう
怒鳴る親と怒鳴らない親、どちらが良いのかを考える前に「怒る」「叱る」の違いをはっきりさせておきましょう。
- 怒る…イライラした感情を子供にぶつける
- 叱る…子供のために語気を強めて言い聞かせする
同じ意味合いで使われることもある「怒る」と「叱る」ですが、両者を区別するとしたら以上の考え方ができます。怒鳴ることは自分のイライラをとにかく相手に伝えたい、発散させたいだけで、子供のことは考えていないのです。
「怒鳴る」のはNG、でも時には「叱る」のも大切
怒ると叱るの違いが分かったら、怒鳴る親と怒鳴らない親のどちらがよいかは明確です。子供に日常的に感情まかせに怒りをぶつけるのは、当然親としてあってはならない教育態度でしょう。
では、「怒鳴らず叱らず育てる」のが良いのかというと、これには少し違和感があります。子供に危険が迫っていたり他の子に迷惑になるような行動をとっていたりしたら、“子供のことを考えて”言い聞かせするべきですよね。子供の行動すべてを許して好きにさせるのは現実的には難しいため、「怒鳴らないやり方」で子供を叱ることは時には大切です。
効果的な「叱り方」についてこちらの記事で紹介しています。参考にしてください▼
叱らない育児だとどうなるの?
子供の自主性を重んじるために、叱らず子供の自由に育てる。そんな育児観を持つ方も当然います。また、どんな子供にもそれぞれ個性があるため「うちの子は叱らない方がずっとうまくいく」と気づいているママもいるでしょう。「叱ること」は絶対に必要なわけではなく、子供の性格や特性を生かしながら社会のルール・マナーを教えていけるとよいですね。
しかし、実際は叱らず子供を育てるのは難しいものです。「うちは子供の行動すべてを容認している」と自由な子育てにこだわるあまり、「子供にルールを教えない」のは親の責任逃れにも感じます。親としての責任を持ちながら、子供と向き合うことが何より大切です。
子供に怒鳴る親が知っておきたいこと
怒鳴る親は子供にマイナスの影響しか与えない。そうは知っていても、みなさんは「一度だって怒鳴ったことはない」でしょうか?イライラしていたり忙しかったり、ママのコンディションは常に良いわけではないので、状況によっては子供を怒鳴ってしまうことだってあるでしょう。
怒鳴ることを認めるわけではありません。しかし、怒鳴ったことを反省し繰り返さないよう見直すのなら、いくらだって子供に及んだ怒鳴る影響を取り戻すことができます。次は、子供に怒鳴ってしまったと後悔するママが知っておきたいことをご紹介します。
怒鳴るのは「取り返しつかないこと」ではない
最初に知っておきたいのは、子供に怒鳴っても「取り返しがつかない」わけではないことです。冒頭でお伝えしたように、怒鳴る親は子供の成長や性格形成において悪い影響を与えます。しかし例えばこぼれてしまったコップの水のように、何をしても元に戻らないわけではないのです。
子供に怒鳴ってしまい「やりすぎた」と感じているのなら、素直に謝りましょう。「ママ疲れていたみたい」「急いでいたから怒鳴っちゃったんだ」と理由を話し、子供にも「何をして欲しかったのか」を冷静にしっかり伝えてください。また、なぜ怒鳴ったのかを考えて「怒鳴らず子供と接する」方法を習慣づけましょう。
怒鳴るのをやめると気づきますが、怒鳴らない方が今よりもずっと子供はママの話を聞き入れてくれます。
繰り返し怒鳴りたくなる時は「自分がいつ怒鳴るのか」を知っておく
子供に怒鳴るのは1~2回程度なら悪い影響はまだ出ません。しかし、毎日怒鳴っている、繰り返し子供を怒鳴りつけることがある状態なら、改善する方がよいですよね。
繰り返し怒鳴るママは、自分の中で怒りをパラメータ化していつ怒鳴ってしまうのかを知っておきましょう。「子供が三回以上悪さをしたら」「忙しい時は簡単に怒鳴ってしまう…」。さまざまな気づきがあるかもしれませんね。
ある程度の怒りは理性で押さえられますが、感情があふれる瞬間は必ずあるので、限界を超える前に気持ちを落ち着けたいものです。
また、「このラインまで子供が言うことを聞かない、悪さをすると怒鳴ってしまう」と気づいたら「これをやったらママは悲しい、やめて欲しいと思う」と子供に伝えるのも大切。次第に子供も「これはやったらダメ」と程度を学んでくれるはずです。
なぜ怒鳴るのか、本当の原因を探る
怒鳴る=感情が爆発してしまった本当の原因はなんでしょうか?
夕方でママ自身疲れていたかもしれませんし、パパと喧嘩していたからかもしれません。仕事や生活のストレスが重なっていたり、月経前にはホルモンバランスの乱れから、些細なことでイライラするママもいますよね。
このように「子供以外の原因」が怒鳴る根本理由としてきっとあるはずです。気分や体調がすぐれない時は「私は今イライラしている」と自覚して、普段よりも時間を取ったり子供にも完璧を求めず「大体できればOK」とゆったり構えたりすると良いでしょう。
まとめ
怒鳴る親が子供に与える影響をご紹介しました。ご存じの通り、子供を怒鳴ることにメリットは一つもなく、怒鳴ったところでママの本当の想いは伝わりません。子供にイライラの感情をぶつけても、事態は良い方向には進まないことをしっかり覚えておきましょう。
どんなに気をつけていても、育児をしている限り「怒鳴ってしまった」経験はあるものです。その時は怒鳴った後で子供をフォローし、繰り返さないよう自分の中で意識づけていきましょう。どんなママでも「怒鳴る自分」を変えることはできます。
【参考】
【特集】“子どもの脳”を守れ 脳科学が子育てを変える NHK健康チャンネル
怒鳴ることはしつけになるか? [子供のしつけ] All About