幼児期に育みたい!生涯学ぶ力を支える非認知能力について徹底解説

お子さんの将来を思い、教育についてしっかりと考えているママパパは、幼児教育関連の書籍やニュース、育児書などで「非認知能力」というワードを目にすることが増えたのではないでしょうか。

目に見えない、点数化できない力で、「あと伸びする力」「生きる土台となる力」「生涯学び続ける力」「社会情緒的スキル」などとも言われていますよね。

この非認知能力は、幼児期のうちに育むことが重視されていますが、その詳しい理由についてはよく分からないし、家庭で具体的にどんなことをすればよいの知りたいママパパも多いのではないでしょうか。非認知能力が幼児期に育みやすい理由と詳しい関わり方のポイントが分かれば、育児の中に取り入れていきたいですよね。そこで今回は

  • 幼児の子育てをしていて、非認知能力について詳しく知りたいママパパ
  • 幼児期に家庭で非認知能力を身につける方法について知りたいママパパ

に向けて分かりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

文部科学省が求める非認知能力とは?

こちらの記事でご紹介しています。気になる方はぜひこちらの記事をお読みください。

https://cocololabo.com/blog1/210310-2/

幼児期に育みたい非認知能力とは?

非認知能力とは、OECD(経済協力開発会議)によると、「社会情動的スキル」とも言われ、

  • 「目標の達成(忍耐力、自己抑制、目標への情熱)」
  • 「他者との協働(社交性、敬意、思いやり)」
  • 「感情の抑制(自尊心、楽観性、自身)」

のことを指します。

より具体的には、

  • なにかに熱中・集中したりして取り組む姿勢、
  • 自分の気持ちをコントロールできること、
  • 他者とうまくコミュニケーションできること、
  • 自分を大事にできること

などを指します。

非認知能力が必要な理由

非認知能力が世界的に注目され始めたのは、アメリカのノーベル経済学賞受賞者のヘックマン(2015)の研究です。幼児期から非認知能力を高める教育を受けた子供の方が、学歴や収入が高く、人生の幸福度も高いというものでした。

AI時代に突入し、21世紀のこれからの社会はますます変化すると言われています。今の子供たちが大人になるころには、今ある職業の多くは、AIにとって変わられ、新しい発想や自由な考えが求められます。

これまでの暗記型の学歴重視のやり方はすぐに限界を迎えます。答えのない問いを解決する力が求められる今、非認知能力が身についているかいないかは、個人においても社会においても重要な観点となっています。

幼児期に非認知能力が育みやすい理由

非認知能力は、「あと伸びする力」とも言われ、その成果は目に見えない形で後から現れてきます。

人生の中で、できるだけ早い段階で非認知能力を育んだ方が、その後の人生の心の安定や幸福感、社会的経済的効果を高められると考えられています。また、幼児期は脳の発達が急速に進む時期です。

好奇心や意欲も高く、さまざまな体験や刺激から学びを得やすいのです。ママパパが幼児期にしっかりと子供と関わることは、子供の非認知能力を高めることにおいて、とても重要なことのなのです。

幼児期に特に育みたい力とは?

幼児期において特に育みたい力は、自分の気持ちをコントロールする力(自己抑制)、何かに熱中したり集中したりする力、想像・創造力などがあります。もちろん、幼児期だけで育めるものではありませんが、土台となる部分は幼児期にしっかりと育みたいところです。具体的な方法やポイントについては、次の章で詳しく解説します。

幼児期に育みたい非認知能力のポイント

幼児期の子ども

親子のスキンシップを通して心の安定させること

幼児期に一番大切なことは、まず何よりも大人から無条件に愛される経験をもつこと(精神医学や心理学の分野では「アタッチメント」と呼ばれるもの)です。親などの身近な大人との基本的な信頼感を持つことが全ての基盤となってくるといえます。

特別なことをするわけではなく、泣いている子供に対して、抱っこしてあげたり、共感して語りかけたりすることです。子供はありのままの自分を温かく受け止めてくれる大人がいることによって、自分の感情をコントロールして、自ら物事に取り組めるようになります。

その子らしさや主体性を大切にすること

子供の個性や好み、興味関心があることは一人ひとり違っています。例えば、ただいたずらをしているだけのように見えて、実は何かを試して熱中していることもたくさんあります。道端に咲く花を見ても、花に対して擬人的に想像をふくらませたり、花びらを一枚一枚ちぎってみたり、食べ物に見立ててみたりと、それぞれ違った視点をもっています。もちろん、花に全く興味を示さない子供もいます。

大人が思う理想の姿と子供の実態には差があって、知らず知らずのうちに価値観を押し付けていることもあります。もちろん、最低限のルールやマナーはきちんと教える必要がありますが、できる限りその子の主体性を大切にしてあげましょう。

子供のがんばっている姿を認め、小さな成功体験をつませること

子育てをしていると、どうしても結果に目が行きがちですが、できるだけ子供の頑張っている課程を認めてあげるようにしましょう。例えば、鉄棒の前回りができるようになるまでには、鉄棒を上手につかみ、体を持ち上げ、恐怖心もある中勢いをつけて体を回すなど、スモールステップが隠れています。

忙しい毎日の中で、なかなか見落としがちですが、小さな成功体験や達成感を積み重ねることによって、「粘り強く頑張る力」「物事に向かい続ける力」が身についてきます。

様々な遊びの中で好奇心を育んだり、夢中になる体験をすること

幼児期にとって、「遊び=学び」です。遊びにはいたずらなども含まれます。好きなもので遊んでいるときの子供は、大人では考えられないくらいの高い集中力を発揮します。周りの音が全く耳に入ってこないといった感じです。

幼児期にできるだけたくさんの遊びをして、夢中になって遊ぶ経験をすることは非認知能力を高めてくれます。また、好奇心に沿って自分で問いをもち、解決しようとすることで、結果として学力などの認知能力も上がります。

外遊びを通してしっかりと身体を動かしたり、自然とふれあったりすること

遊びの中で、自然との触れ合いの中で生まれる遊びには、たくさんの学びが詰まっています。自然の中での遊びは五感をフルに使うことが多いため、脳とってとても好ましい刺激でいっぱいです。また、運動能力も同時に育っていくので、積極的に取り入れたいところです。

絵本の読み聞かせを通してコミュニケーションや言葉への関心を深めること

絵本を通して自然な形で語彙力や想像力が高まってきます。また、子供とママパパが一緒に絵本を楽しむことで、親子のスキンシップの時間にもなります。

大好きなママパパの声で、安心できる環境のもと物語に想像をふくらませることのできる読み聞かせは、ぜひ取り入れたいポイントです。「もう一回」と何度も何度も同じ話を読むようにせがんでくることもありますが、できる限り付き合ってみましょう。

家庭でできる!幼児期に非認知能力を伸ばす具体的な方法の例

身近なもので遊ぶ

いくらおもちゃを用意しても、身近なものへと興味関心がいきがちな幼児。お財布のカードを全部出してしまったり、新聞紙を全部ビリビリにちぎったり、箱の中の洋服を全部だしたりという経験があるのではないでしょうか。不思議なことに、いくらおもちゃのリモコンを渡しても、本物を欲しがりませんか?

身近なものへの興味関心は、主体的な学びへの第一歩。誤飲や危険には配慮しつつ、できる限りやらせてあげるようにしましょう。逆に、絶対触ってほしくないものは目につかないところに置いておくのがおすすめです。

自由な発想で工作を楽しむ

工作は発想力を高めるのに最適です。わざわざ材料を買う必要はなく、卵のパックやトイレットペーパーの芯、ペットボトルのキャップなどで十分です。子供の発想力は大人が思っているよりもずっと高く、遊びの天才です。ポイントは同じものが複数あると、発想が広がりやすくなります。

子供のペースでお散歩を楽しむ

何も目的地を設けず、お散歩に行くことは意外と少ないですよね。目的地や用事があると、どうしても時間を気にしがちなので、子供を急かしながら歩くことになりがちです。目的地を決めず、子供のペースでお散歩を楽しむ時間を作ってみましょう。道路の標識、道端に落ちているもの、空の音、石ころなど、子供の興味が赴くままに足を止めつつ、子供が何に興味をもっているのか観察してみましょう。

ごっこあそびに本気でつきあってみる

繰り返し同じことをするごっこ遊びにうんざりしてしまうことがあるママパパもいますよね。しかし、ごっこ遊びには、非認知能力を高めるポイントがたくさん詰まっています。子供のごっこ遊びは空想、想像力をフルに使っています。

ハンカチ一枚でどこまでもお買い物にいったり、お人形の寝かしつけをしたりできます。意外と一人で集中してごっこ遊びをしていることもありますが、誘われたら1日1回くらいは本気でごっこ遊びに付き合ってみるのがおすすめです。

いくら汚してもよい環境を作る

クレヨンや絵の具、水遊びなど、子供の興味関心が強いものには、家が汚れたり散らかったりする心配がつきものです。家の中に一箇所、どんなに汚してもいい場所をつくるのがおすすめです。大きなダンボールを用意してその中で遊んだり、ビニールシートを大きく広げた空間を作ったりすることで、子供の熱中を妨げることなく、ママパパも安心して見守れることができます。

触れ合いがある遊びをする

親子の触れ合いは、お世話や抱っこのときにはありますが、意識的に時間をとって触れ合うのもおすすめです。手のひらで優しく体をなでてあげたり、手遊びをしたり、ストレッチをしたりと簡単なものでよいので、時間をとって十分にスキンシップをしてみましょう。

絵本の読み聞かせで親子の時間作り

絵本の読み聞かせは、最高の親子の時間です。工作ができる環境がなかったり、外遊びもあまりできなかったりするときでも、読み聞かせなら誰でもどこでもすることができます。図書館で絵本を借りるのを習慣化するのもおすすめです。寝る前のルーティンとして読み聞かせを取り入れるのもよいでしょう。

旅行先やお出かけ先を工夫してみる

旅行先を子供の興味関心が強そうな場所にしてみるのもよいでしょう。例えば、飛行機が好きな子なら、飛行機の博物館や空港見学に行ってみるなど、普段とは違う風景や景色を見るのも、子供の興味関心を広げ深めるきっかけとなります。

季節の行事遊びをする

季節の行事を積極的に取り入れてみるとよいでしょう。本格的なことではなく、季節にちなんだ工作をしたり歌を歌ったり、ちょっとした料理をしたり、できる範囲で楽しく季節を感じてみましょう。昔ながらの行事には、先人の知恵や思いが込められていて、そこから学べることもたくさんあります。

まとめ

非認知能力を高めるために家庭でできることはたくさんあります。「非認知能力」という言葉を知って調べているママパパは、その時点でお子さんへの愛情も強く、すでにやっていることばかりかもしれませんね。大事なことは、ママパパとお子さんが笑顔で過ごせていることです。無理のない範囲で非認知能力を高めることを意識した関わり方ができるとよいですね。

【参考文献・サイト】

大豆生田啓友 大豆生田千夏 「非認知能力を育てる遊びのレシピ」2019 講談社

学研りんごちゃんのおけいこラボ「話題の非認知能力ってなに?幼児期に育てたい理由とは」

ベネッセ教育総合研究所 これからの幼児教育2016「生涯の学びを支える『非認知能力』をどう育てるか」

NHKエディケーショナルすくコム「世界で注目される非認知能力って?」

ABOUT US
【監修】 公認心理師YUKA久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。