育児放棄件数は増加傾向。育児放棄しないためにママができることとは?

育児放棄 件数

育児中、子供がいうことを聞かなかったりママ自身のコンディションが悪かったりすると、「子供の育児を投げ出してしまいたい!」と思うことがあるかもしれません。もちろん、その気持ち自体が悪いわけではないのですが、実際に子供を放っておくと「育児放棄」という虐待につながります。

育児放棄件数は年々増加傾向。「いつか育児放棄してしまいそう」と不安に思うママに向けて、今回は育児放棄しないためにできること・子供との向き合い方をご紹介します。

育児放棄件数は増加している

子供 怒られる

ニュースでも見かけることの多い「育児放棄」。育児放棄(ネグレクト)とは、

ネグレクト

家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など

児童虐待防止対策 厚生労働省

このような虐待を言います。

育児放棄件数は年々増えており、その背景には社会的な情勢や経済不安、親自身の幼少期の育ち方などがありますがどんな理由があるにしろ、起きてはならないことで、親なら育児放棄をしてはなりません。

2020年度の虐待件数は過去最多に

2020年度に報告された虐待件数は過去最高に上っています。全体の数字で見ると、育児放棄は報告された虐待件数全体の15.3%を占めています。件数で言うと3万1420件と決して少ない数ではないことが分かるでしょう。

ただし、件数で表されるのは報告された数でしかなく、育児放棄=ネグレクトは子供に対して加害を与えるわけではないため表面化しにくく、ネグレクトを受けている子供もしている親も自覚がない場合もあります。実際に起きている育児放棄件数は、これ以上だと思われます。

育児放棄(ネグレクト)は判明しにくい側面も

先ほども説明しましたが、育児放棄は虐待の中でも「危害を加える」のではなく「必要なものを与えない」ものです。行き過ぎると

  • お洋服がいつも一緒で不潔であり、お世話されている様子がない
  • 学校に来なくなる、ずっと家に閉じこもっている
  • 自宅に帰れなくなり、ずっと屋外で過ごしている

など、周りの目から見ても育児放棄・虐待だと判断できます。しかし、中には「子供からの呼びかけを無視する」「子供を隠して周りの目から遠ざけるようにする」といった育児放棄も含まれるため、判明しにくいのも特徴です。

さらに親はネグレクトの言葉を知っていても、自分のしていることは「しつけのため」とネグレクトとは別と思っており、その虐待をやめない場合もあります。このように育児放棄は見過ごされやすく、近くで虐待が起きていても周囲が気付きにくいのです。

「これって育児放棄?」と感じるママは多い

子供 不機嫌

さらに育児放棄について考えてみましょう。ママの中には、

  • 今日は子供と向き合うこともできない
  • 気持ちに余裕がなくて、子育てを放棄してしまいたい
  • 子供と話す時間すら持てない…

と「これって育児放棄?」と悩む方も多いかもしれません。さらに言えば「子供には自由に育って欲しいから」「自立して欲しいから」と敢えて子供を放っていることもあるのではないでしょうか。

ここからは「育児放棄」と「しつけ」がどう違うのかを解説します。

ママの8人に1人が「育児放棄かも」と思い悩んでいる

「育児放棄してしまいそう」「育児放棄になるのかも…」と不安に感じるママ、その気持ち自体は悪いことではありません。子育てする環境は人それぞれで、育児書通りにはいきませんし、子供がママの思い通りになることは決してありません。育児の壁にぶつかった瞬間は、どのママも経験しています。

子育て中の親に対して行ったアンケートによると、数字上では8人に1人のママが「これは虐待かも」と悩んでいる結果が出ました。私自身子育て中のママですが、育児でいっぱいいっぱいになったとき「もう無理!子育てはしたくない!」と子供のことを放って部屋を出てしまったことがあります。一歩間違えると、これも育児放棄になったかもしれません。

ひとつ言えるのは、「虐待してしまうかも」と感じる不安は、ママが子供のことを思うからこそです。行動に起こすのは絶対にあってはならないことですが、こうした育児に対する不安自体は悪いことではなく、自分の行動を顧みて繰り返さないように工夫すること、子供から逃げず育児と向き合い直すのが大切です。

育児放棄としつけの境目は子供が決めるもの

では、「子供に自由に育って欲しいから」「自立して欲しいから」と敢えて放任させる育て方や、「しつけ」として子どもに自由にさせるのはいけないことでしょうか。まず、育児放棄としつけの境目を考えてみましょう。

何をもってして育児放棄と言えるのか、というと周囲に指摘されたからではありません。子供の健全な成長を妨げる、必要な育児を行わないことを指しますが、ママ自身が決めることでもなく、子供が「嫌だった」「虐待だと感じた」のならそれは育児放棄です。「この程度なら虐待じゃないよね」と親はボーダーラインを引けません。子供がどう感じるかが、虐待かどうかを考える上で重要な視点になります。

育児放棄しないためにママができること

公園 遊具

育児放棄はあってはならないことです。さらに、適切な育児との向き合い方が分かればだれでも防ぐことはできます。

育児放棄しているのではないか、と不安に思うママは、以下の4つのポイントを意識して育児してみましょう。

育児を一人で行わない、適切な援助を受ける

子供と向き合うとき、ママは一人きりで育児を担っていないでしょうか。「パパに頼むと面倒だから」「パパは仕事があるのだから」とパートナーの助けを借りないでおくと、いつしか育児の責任や疲労が重なり、虐待に走ってしまう状況に陥るかもしれません。

子供を育てるのは相当な時間と労力が必要で、一人で育てきるのは難しいものです。決して一人で抱え込まず、パパと分担したり両親を頼ったり、自治体が運営する子育てサポートなどを利用しましょう。

限界が近づくと、誰しも抱え込んで「正しいSOS」が出せなくなります。子供と自分の安全のために、援助を受けるのは必要不可欠です。

どうしても悩んだときに相談できる窓口を見つけておく

虐待を恐れる前に、自分で危ないと感じたらどこに連絡すればよいのかを見つけておきましょう。

児童虐待防止法では、周囲に虐待の可能性が高い場合に、虐待通告するのは「国民の義務」としています。全国共通の児童虐待通告ダイヤル「189(いちはやく)」では、電話した場所からもよりの児童相談所に連絡できます。

他にも、

  • 保健センター
  • (産後うつ状態で悩んだ場合)産院など
  • 最寄りの児童センター
  • 子育て相談窓口

でも育児に関する悩みは相談可能です。この時、ママは「育児の仕方が分からない」と相談するのではなく「自分が辛い。子供に危害を加えそうで自分が怖い」と主語を自分に置き換えて話すと状況が伝わりやすいです。

子供を完璧に育てようとしない

最近ではSNSで「子育てアカウント」を取得する方も多く、育児の成功体験はたくさん見つかります。お友達の成長と我が子を比べて「うちの子はダメだ」と悩んだり、ママが「私は子育てに向いていない」と落ち込むことも多いでしょう。

育児は思い通りにいくことなんてなく、悩みなく育てているように感じても、各家庭で異なる育児の壁はいくつも存在します。

  • きちんと育てないと
  • 周りはみんな頑張っているのに
  • うちの子は元からダメなんだ

完璧に子育てをしようとすると、このように自分や子供を必要以上に責めてしまいます。気持ちに余裕が持てないと思ったらネットの情報やSNSからは少し距離を置き、目の前の我が子と向き合うことだけに集中するのも大切です。

自分を大切にする

最後は自分を大切にすることです。子供が健やかに育つのは、ママが元気だからこそ。ママの精神面が不安定になると、イライラしやすくなったり子供に当たったりと、虐待を不安に思う状況を作ってしまいます。

育児に詰まったら、最近ママはリラックスした時間を過ごせているかを考え直してみましょう。「疲れているな」と感じたら、自分の精神安定を優先させるのもOKです。

この記事にはママの育児ストレスを和らげるアイデアをまとめています。ぜひ参考にしてくださいね。

まとめ

現状、増えている児童虐待・育児放棄件数。ニュースでも取り上げられることの多い虐待ですが、育児中の私たちにとって決して他人事にはできません。

ママの中には「これは育児放棄かも」と悩んでいる方もいるかと思います。もし不安に感じたら、ご紹介したように子供との向き合い方を見つめなおしてみましょう。

【参考】

児童虐待 昨年度“20万件超” 過去最多 厚労省まとめ | 児童虐待 | NHKニュース

増え続ける子どもへの虐待は、一体誰が起こしているのか?-児童虐待を生み出し続ける日本の社会システム  Eduwell Journal

どこからがネグレクト(育児放棄)?見極め方や相談先、トラブルに巻き込まれない方法とは

児童虐待防止対策 厚生労働省

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。