自分が育児ノイローゼかな?と思ったことがあるママは、全体の8割に上ります。育児ノイローゼとはどのような症状で、なぜ起こるのでしょうか。育児ノイローゼかな?と思ったときには、どのように対処すれば良いのでしょうか。今回は、育児ノイローゼの具体的な症状や、発症のメカニズム、育児ノイローゼを疑ったときの対処法などをまとめてご紹介します。
育児ノイローゼとは
育児ノイローゼとは、乳幼児の育児をしている人が不安や困惑といったストレスから情緒不安定になり、ささいなことでも怒りっぽくなってしまったり(易怒性)、感情を失う、不安や抑うつ気分になったり、衝動性が高まったりしてしまう症状のことです。病気として診断されるものではなく、俗称として使われており、「子育て不安」や「育児ストレス」と呼ばれることもあります。
平成15年に、厚生労働省が所管する独立行政法人独立行政法人労働政策研究・研修機構(日本労働研究機構)が発表した「育児と介護と仕事の両立に関する調査」によると、自分が育児ノイローゼや産後うつではないかと思った経験がある人は、女性の81.8%、妻が育児ノイローゼや産後うつではないかと思った経験がある男性は40.3%に上ります。
多くの方が、自身の心や体で起こるSOSを感じ取っていることが分かります。実際に、育児ノイローゼは、特別な人しか発祥しないというものではなく、育児をしている人であれば、誰にでも症状が出る可能性があるものです。
産後うつとの違いは?
育児ノイローゼに似た症状として、「産後うつ」があります。育児ノイローゼと産後うつを別のものとして捉えるかは、医師のなかでも意見が分かれますが、発症時期の違いで、別のものだとする意見が多くあります。
産後うつとは、多くの場合で出産後3カ月以内に発症し、生活環境の変化やホルモンバランスの急激な変化により発症するのでは?と考えられています。産後うつから幼児期まで続く育児ノイローゼをまとめて「産褥うつ」と呼ばれることもあります。
もしかして育児ノイローゼ?よくある症状とは
ひとくちに育児ノイローゼといっても、現れる症状や深刻度合いは人によって異なります。本人が自覚するケースもあれば、知らず知らずのうちに症状が進み、周りの人が気付くケースも少なくありません。よくある症状をチェックしてみましょう。
□ 子供を可愛く思えない
□ 育児が面倒・負担
□ 子供の行動に過剰にイライラする
□ 些細なことで子供に怒鳴る
□ 「この子さえいなければ」「産まなければよかった」と思ってしまう
□ 育児も家事もやりたくないし何事にも興味がない
□ 夜眠れない
□ 気分が落ち込んだり、わけもなく悲しくなり、涙が出る
□ 食欲衰退、または過食してしまう
育児ノイローゼにつながる要因
育児ノイローゼになってしまう原因は、特定されているわけではなく、さまざまな要因が重なって引き起こされると考えられています。育児ノイローゼの要因とは何なのでしょうか。
ワンオペ育児による肉体的疲労
核家族化が進む現代では、夫婦だけで子供を育てることになるため、夫婦の時間のすれ違いや夫婦の関係からワンオペ育児が増えています。肉体的な疲労が蓄積すると、育児ノイローゼを発症しやすいとされています。
緊張が続くことによる精神的負担
育児ノイローゼは、精神的負担が要因になることも多くあります。育児は小さな命を預かることになるため、毎日、緊張の連続です。特に初めての育児の場合は、自分の育児に自信がなかったり不安になったりすることが多く、精神的な負担が大きくなりがちです。
スムーズに進まないことへのストレス
育児は育児書通りに進むことはありません。大人の思い通りに進まない子育てにストレスを感じ、ストレスが蓄積することで、育児ノイローゼに進んでしまうケースも多くあるとされています。
育児ノイローゼになるメカニズム
育児ノイローゼは、なぜ起こってしまうのでしょうか。厚生労働省が公開しているe-ヘルスネットの内容から、育児ノイローゼになるメカニズムをまとめました。
産後から乳幼児の育児中は、女性ホルモンが大きく変化し、脳のストレスに耐えうる抵抗力が低下している時期です。それにも関わらず、ストレスを抱えがちな事柄が続き、なおかつ、周囲のサポートが不十分であると、ストレスを処理しきれなくなり、脳が機能不全を起こしてしまいます。結果、物事を悪く捉える傾向が強くなるとされています。
しかし、育児を頑張るママは「母親なので~しなければならない」と責任を感じ、体や心が疲れているにもかかわらず無理をしたり、悩みを抱え込んだりしてしまうことがあります。結果、悪循環が生じ、育児ノイローゼを引き起こしてしまうとされています。
育児ノイローゼかな?と思ったら
育児ノイローゼかな?と思ったときには、どのように対処すれば良いのでしょうか。症状を疑うようなことがあれば、早めに対処して、深刻化させないことをおすすめします。対処法をチェックしてみましょう。
がんばりすぎない
育児ノイローゼのメカニズムのところでも触れましたが、~しなければならないという責任感から頑張りすぎてしまうことで、心や体がオーバーヒートすると育児ノイローゼになりやすくなります。
育児は100点ではなく、70点や60点でもOKだと自分を許してあげてくださいね。手を抜けるとことは抜いて、ゆったりとした気持ちで取り組むことをおすすめします。
子供と離れる時間をもつ
ワンオペ育児では特に、子供と1対1で過ごす時間が増えるため、心にも体にも負担がかかりがちです。ときどき子供と離れる時間を持つことで、ストレスを軽減するのがおすすめ。
実家や夫、ベビーシッター、公的サービスなどに子供のお世話をお願いし、自分を取り戻す時間を作って息抜きしてみてくださいね。
ストレス発散方法を考えてみる
ストレスの処理が追いつかないことが、育児ノイローゼを深刻化させてしまいます。適度にストレスを発散できる方法を探してみましょう。
若いときにしていた趣味に関連する時間を持ったり、子供が寝ている間にできる趣味を探す、ママ友と定期的に集まっておしゃべりを楽しむ時間を持つなどもおすすめです。
身近な人に相談を
話すことがストレス緩和に繋がったり、悩みの解決の糸口が見つかったりすることもあります。身近な人に、心に溜まった悩みを相談してみるのもひとつの手です。
前出の「育児と介護と仕事の両立に関する調査」によると、育児ノイローゼや産後うつを疑った時に、夫にしてほしかったことは「励ます、ほめる、慰める」が 61.0%と最も高い結果でした。しかし、実際に夫がしてくれたことについては、「休みの日に育児・家事をする」が 62.5%となり、両者に温度差があることが分かります。身近な人に相談するときは、具体的に何をしてほしいかを明確にすることが、よりスピーディーな解決に繋がります。
専門家に相談を
育児ノイローゼは、心のSOSが占める部分が大きいものです。心療内科やメンタルクリニックを受診すると、症状に適した処方箋が処方してもらえる可能性が高いでしょう。
心療内科やメンタルクリニックは少し敷居が高いという場合は、カウンセリングを専門に行なっている心の相談室などを上手に使うのもおすすめです。自治体によっては、子育てに関する相談室を設けているところもあります。育児ノイローゼは誰にでも発症する可能性のあるものです。自分を責めすぎないことをポイントに、心が楽になる方法を探してみましょう。
まとめ
育児をしている人なら誰でも発症する可能性のある「育児ノイローゼ」。要因や症状は人それぞれで異なりますが、多くの人が自分は育児ノイローゼかも、という悩みを抱えながら育児をしています。頑張りすぎず、体や心からのSOSに耳を澄ませて、ママの体や心を大切にすることも忘れないであげてくださいね。
【参考・参照】
独立行政法人独立行政法人労働政策研究・研修機構(日本労働研究機構)「育児と介護と仕事の両立に関する調査」