虐待したくないのに子供を叩いてしまう…。なぜ虐待が起こるの?

虐待したくない

子育て中のママは、みんな「虐待したくない」と思っていますよね。子供はかわいくって大切で、かけがえのない守るべき存在です。

けれども、子育て中は思い通りに行くことなど一つもなく、育児によってママの時間や生活は犠牲になります。イライラしたり子供を叩きたくなったり、怒ったりしてしまうシーンは多いのかもしれません。

今回は、ママを悩ませる虐待について解説します。虐待したくない…といつか自分が過ちを犯してしまうか不安なママに向けて、対策もチェックしていきましょう。

虐待したくないのに…。子供をひどく怒ってしまうママ

虐待したくない

虐待したくないという気持ちは強いのに、ニュースでは心を痛めるような事件を見ることがあります。どうしてママなのに虐待してしまうのか、まずは虐待がなぜ起きるのかその原因を考えてみましょう。

“家族”に対するストレス

子供の虐待というのは、「虐待する可能性がゼロ」という家庭は存在しません。どんなに気を付けていてもきっかけがあれば虐待が起きるかもしれませんし、その責任は虐待をした親だけとは限りません。

子供虐待の引き金の一つになるのが、家族に対するストレス。子育ては一人で完璧にこなせるものではなく、パパの協力やご両親の協力があってこそ成り立ちます。

この部分が不完全であり、ママ一人が子供のお世話をするいわゆるワンオペ状態が続いたり、家族からのモラルハラスメントがあったりしてストレスが溜まると、その怒りのはけ口が何も抵抗できない子供に向かってしまうこともあるでしょう。

経済的な問題が引き金に

子育てするのに十分な住居が用意できない、経済的に貧困状態にある家庭は、育児のストレスを解消するのもなかなか難しいかもしれません。育児を経験した私たちなら思い当たりますが、狭いマンションで子供の笑い声や走る音、泣き声などを控えて生活するのは、相当なストレスがかかりますよね。

また、子育ては周囲の協力を得ることが大切。そう分かっていても経済的な面で子供を預けることが叶わない家庭も多いでしょう。ベビーシッターもファミリーサポートも、経済的余裕がないと利用するのには勇気が必要です。

双子・三つ子などのママは特に経済的なストレスを抱えやすいと言われています。子供を預けようと思っても費用が2倍、3倍かかり、普段から養育費が家計を圧迫しているためにサポートを利用できないからです。

ママ、親子の孤立

最後はママ自身や親子が孤立すること。例え育児のストレスが溜まっても、パパや周囲の方誰か一人にでも日々の大変さを分かってもらえるだけで、気持ち的には余裕が出ます。しかし一人親であったり友人が周囲にいない状況だと、ママは一人で毎日のストレスを抱え込むことになり虐待の引き金になりやすいのです。

ただし、この孤立とは周囲にいる人数や婚姻の有無は関係ありません。周りに育児のお手伝いをしてくれる家族に恵まれていてパパもいてくれるとしても、孤立感が高まることは「育児中のママ」においてはたくさんあります。

子供への虐待とは?

虐待したくない

子供に虐待したくない…。そう思っても、虐待してしまう可能性は誰にでもある事実は恐ろしいものです。子供への虐待は大きく分けて4つあります。知らないうちに虐待を子供に与えていないか、どういったものが虐待になるのかをご紹介します。

身体的虐待

身体的虐待は見た目にもわかりやすいものです。殴る、蹴る、叩くといった暴力を振るい、子供を身体的に虐待する種類を指します。例えしつけであっても暴力を振るう行為が日常的に行われていれば、それは立派な虐待です。

心理的虐待

心理的虐待とは、言葉を使って子供を脅したり怖がらせたり、きょうだいの中で差別をしたりする虐待の種類を言います。子供は心理的虐待によって精神的なダメージを負い、トラウマを抱える子も少なくありません。

また、子供を無視したり夫婦喧嘩を目の前で繰り返すといった間接的な関与を拒む行為も心理的虐待にあたります。

ネグレクト

ネグレクトとは日本語に直すと「無視」となり、子供の存在を無視する行為全般を指します。食事を与えなかったり衛生環境を保たなかったり、病気になっても通院させないのもネグレクトのひとつ。子供が成長すれば学校に通わせないなど、養育の拒否をするのもネグレクトの一種です。

また、配偶者が虐待している事実を把握しておきながら、子供を放置したり何の対処をしないのももう一方のネグレクトという虐待になります。

性的虐待

性的な関係を強要する、性的行為を見せる、ポルノなど被写体にするのは性的虐待です。性的行為を子供が目撃することも性的虐待です。子供が性的行為に直接関わっていなくても、虐待となるのです。子供に性的な刺激をあたえるのも虐待のひとつと頭に入れておきましょう。

性的虐待は、虐待を受けたことを他のどの虐待よりも打ち明けることが難しい物でもあります。そのために、把握されている件数よりもはるかに多く性的虐待を受けたことのある子供はいることが予測されます。

虐待したくないと思っているママへ。段階を踏んで対策をご紹介

虐待したくない

虐待したくないと思うのなら、段階を踏んで対策をしておきましょう。虐待の引き金となる原因を少しずつ取り除き、ママ自身が自分を大切にすることが重要です。

育児中だと自分を後回しにしがちですが、何よりも子供の安全を守るためにも「虐待しそう…」と感じたら対策は必要不可欠です。

まずは孤立から抜け出す

虐待が起こる前段階では、家庭内に外部の目が入らない・外部からのアドバイスをもらえないと言った孤立状態が起こっています。先ほどもお伝えしたように、この孤立はワンオペ状態であるとか両親と離れて暮らしているために育児の手が少ないといった状況とは関係ありません。周りに人がいて、一見恵まれているように見えるママだとしても、誰にも悩みが打ち明けられずにストレスが溜まっているかもしれません。

子供に関する悩みがあれば、自治体の育児相談窓口や担当の保健師に相談するのもおすすめです。子供と二人きりの生活が続いていれば、散歩でも良いので外に出かけると気分も晴れるかもしれません。児童館などオープンスペースを利用すると、月年齢が同じくらいのママ友ができることもあります。

知り合いを作って孤立から抜け出せるのなら、SNSを利用しても良いでしょう。ネット上でも友人ができれば、日々の悩みを打ち明ける良い相談相手になってくれることもあります。

まずは外部に正しくSOSを出して、自分が孤立することを防ぎましょう。友人を作らなくても、一人で充実し過ごせる時間を作っても構いません。

セルフウォッチングをする

虐待を防ぐためには、自分が「虐待してしまいそうになる」というラインがどこで訪れるか知ることが大切です。こうした自分自身を理解することを、「セルフウォッチング」と言います。

「毎日やるべきこととしては、セルフウォッチング。危険な状態になったなと気づけるかどうかは大きいです。自分をいつも観察して、このままいくと危ないなというときに、ちょっと席を外すとか、冷蔵庫を見に行くとか、スマホを見るとか、2秒間深呼吸するとか。時間の流れを中断する“タイムアウト”がすごく大事ですね」

【子どもの虐待(3)】虐待をやめるために親ができること – 記事 | NHK ハートネット

自分の中で限界が来た、と感じたら、とにかく子供から離れるようにしましょう。大きな危険がない状態、例えば室内なら、一度部屋を出て深呼吸したり気持ちを落ち着ける時間を作っても構いません。

このとき、虐待の一種「ネグレクト」に当たるのでは?と自分を責めてしまうママも多いです。しかし、一瞬だけママが一人になるのと虐待して手を出してしまうのでは、どちらが子供にとって安全かを考えてみてください。

こちらのブログでは、子供に強い怒りを感じたときに無視したり放置したりしてよいのか、解説しています。こうした「今起こっている状態」から意識を反らせることを心理学の中では「タイムアウト」と呼び、子供に感情的に接さないために大切な心の休憩です。

ちょうどいいしつけのレベルを知り実践する

子供へのしつけが過激化して虐待に…。こうしたパターンも珍しくありません。ですが、しつけのために叩いたりぶったりして子供に虐待を加えても、それは子供をしつけたのではなく言うことを聞かせただけにすぎません。

しつけとは、親が子供を正しい道に導くことを指します。決して言うことを聞かせたり、親の言う通りにさせるものではありません。子供を怒鳴らず言い聞かせする方法を実践し、ちょうどいい子供への叱り方やしつけのレベルを知るようにしましょう。

子供への言い聞かせの方法は以下の記事も参考にしてくださいね。▼

まとめ

子供を虐待したくないと願うママ達。虐待はあってはならないことですが、みなさんも分かるように「いつ自分が当事者になるか分からない」リスクのあるものです。

日々育児に奔走するママは、自分を二の次にしがち。ですが、子供と適切な距離感を保ち気持ちよく子育てするためには、まずはママ自身を大切にしましょう。その上で子供を虐待しないための方法を実践してみてくださいね。

【参考】

虐待はなぜ起きるのでしょう – 子どもの虐待防止センター

【子どもの虐待(3)】虐待をやめるために親ができること – 記事 | NHK ハートネット

“ちょうどいい”しつけで親も子もハッピーに【虐待を防ぐには(5)】 – 記事 | NHK ハートネット

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。