「9歳の壁」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
育児にはいくつも「壁」と呼ばれるものがありますが、特に心の成長に目を向けたいのが9歳の壁です。
小学4年生を迎える9歳の子ども。一体子どもの心の中ではどんな成長が起こっているのか、また9歳の子を持つママとしてできることなど、今回は詳しく解説します。
9歳の壁とは何を指すの?
9歳前後の子どもは、小学3~4年生を迎えます。学校は低学年から中学年へ。伴ってお勉強の範囲ややり方、人間関係なども変化します。
さらに働くママにとっては「小学3年生から公立学童が利用できなくなる」といった壁も存在するのです。この9歳の壁とは何を指すのか、まずはチェックしていきましょう。
「自分はこれでいいのかな?」と悩み始めること
9歳の壁とは、子どもがこれまでの「自分中心だった世界」から成長し「他者がいて自分がいる世界」を感じることの困難を指します。端的に言うと、「主観的な視点から脱して客観的な判断ができるようになる」ということ。ここで、自分と他者の違いを明確に感じられるようになると、子どもは自己肯定感が下がりやすく、自分に対して自信が持てなくなることもあるのです。
これまでの子どもは「自分はこのままでいいのかな?」「これでいいのかな?」と疑う余地を持ちません。ですが、心の成長とともに将来のことや周囲から見た自分が気になるようになり、自信を喪失しかねないのが9歳の壁です。
「壁」という言葉を使っているために、「そんな心配をさせないように育てよう」と思うママもいるかもしれません。しかし、9歳の壁は立派な成長過程のひとつ。心が豊かに育まれている証拠ではありますが、この時期の子どもには適切なケアとサポートが必要です。
シュタイナーの「9歳の壁」とは
哲学者であり教育者のルドルフ・シュタイナーは、この9歳の子どもの時期を「児童期第1期と第2期の過渡期」としています。7~9歳の子どもは、身体の動きと別に頭を使って「思考して物事に取り組む」ことを覚える年齢です。
また、児童第2期へと移行する子どもは、「自己意識」も強くなるとされています。自分と世界を区別する力を身につける時期だからこそ、学校で習う分野は「自分の考え」だけでは解けない難しい段階に入り、子どもにとっては勉強に困難を感じる時期に入るのです。
9歳の壁が起こる原因
9歳の壁はどうして起こるのでしょうか。その原因を3つに分けて考えてみましょう。
授業は「抽象的内容」を含む過程に。難しく感じる子も
先ほども少し触れましたが、9歳(小学4年生)からは授業の内容がこれまでよりも変化します。文部科学省では、
9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。
3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題:文部科学省
と言われており、この頃の子どもには客観的な視点、多角的視点を育むことが重要視されます。授業の内容では図形やグラフが出てくる、文章問題が増える、身近ではないテーマの分野が始まるなど、概念では理解しにくい抽象的な内容が増えるでしょう。
これまでは基礎的な教科学習が多いのですが、高学年になるにつれて本格的な学習も始まります。勉強のつまずきが生まれやすくなり、これまで以上に考えることが要求されるために、学習に慣れる時間が必要となる子も出てくるのです。
人間関係で悩みを持つ
低学年のころは「ママ同士が仲良しだから」「家が近いから」という理由で仲良くすることもありますが、中学年・高学年になると「趣味が同じだから」「同じ考えを持つ子だから」といった理由が増え、自分で仲良くしたい子を選び、交友関係が広がっていきます。お友達と深い仲になることも多く、仲間内でグループができトラブルが生じるケースも増えるのが9歳の壁の特徴です。
また、勉強ができる・できないで苦手意識が生まれ、周囲と自分を比較して交友関係にも影響が出ることも。子ども同士の中で同調圧力が起きたり、小さなトラブルから仲間外れが起こったりすることも珍しくありません。
共働き世帯では働き方を変えなくてはいけないことも
最後はママにとっての「9歳の壁」です。公立学童のほとんどが小学3年生まで利用することができますが、9歳以降は子どもが一人でお留守番する必要が出てきます。民間学童に移動する、家で見てくれる保護者がいるのであれば構わないのですが、共働き世帯ではママの方が働き方を変えなくてはならないこともあるかもしれません。
また、子どもはご紹介したように心情環境は非常に過敏な時期に入ります。ママ・パパが子どもと向き合う時間が少なくなり、9歳の壁を感じることもあるでしょう。
9歳の壁を迎えた子どもとの向き合い方
9歳の壁を迎えた子ども。しかし、この壁は誰にでも訪れることで、適切なケアができれば親子で乗り越えられます。
9歳の壁とどう向き合えば良いのか、その方法をチェックしていきましょう。
どんな子どもでも認める。否定しない
心の成長期に入った子どもだからこそ、この頃は「自分はこれでいいの?」と自信を失いがちです。子どもの行動をすべて肯定するという意味ではなく、もしお勉強に遅れが出ても、お友達とトラブルが起きても、「ママはいつもあなたの味方」である立場は崩さないようにしましょう。
どんな子どもでも「そうなんだね。それでいいよ」とママが認めてあげることが安心につながります。この頃の子は親の一挙一動で深く傷つくこともあり、ママがさりげなく言った否定の言葉をよく覚えています。心が成長している子どもを「子ども扱い」することなく、一人の人間として真剣に向き合うようにしましょう。
9歳の学習は「得意」を伸ばす
学習面で苦手意識が強くなり、勉強に遅れが出ている場合はこれまでの学習をおさらいすると良いといいます。分からない苦手分野を何度も繰り返し解いて頭に叩き込むのではなく、「分かる範囲」「得意な分野」に立ち戻ってそこから復讐しなおすのです。
高学年へと向かう9歳といっても、子どもの学習能力はまだまだ伸びしろがあります。理解できないと途端に学習意欲が薄れてしまいますが、「正解!」を繰り返すと夢中になって勉強に取り組んでくれることも。
また、得意な科目というくくりで見るのではなく
- 暗記が得意
- 計算が得意
- 絵で見て学ぶのが得意
と子どもの特性を知ることで、どのように勉強を進めると我が子の強みが発揮できるかも理解できます。
家庭のルールを見直す
公立学童が終わり、一人でお留守番する機会が増えるとき。また、子どもの交友関係を親がすべて把握できなくなる頃が9歳の壁です。
- どこに遊びに行くのかママに知らせておいてね
- 〇時には帰ってくるようにしよう
- 家の中でやっていいこと、ダメなこと
こういった家庭のルールを見直して、子どもとあらかじめ約束できると安心です。
親がいない間にお留守番させることが必ずしもNGではありません。また、「9歳の壁だから」といって子どもの行動やお友達関係に親が口を出して解決するわけでもないでしょう。
大切なのは必要な約束を決めた上で子どもを信じ、我が子の成長を見守ってあげることです。
子どもとお話する、子どもの話を聞く時間は必ずとる
親の働き方を見直す必要もある9歳の壁ですが、親子の対話はこのとき必要不可欠です。どんなに忙しくても子どもと会話しコミュニケーションを取り続けるようにしましょう。
繰り返しになりますが、子どもを会話でコントロールしようとは思ってはいけません。子どもの主張や悩んでいることを受け止め、認めて、解決できる道を一緒に探すことこそママにやって欲しいことです。
忙しいママは「夕食は一緒にとる」「習い事の送り迎えのときに二人きりでおしゃべりする」といった時間を定期的に作ると良いかもしれません。
まとめ
誰にでも起こる9歳の壁。これまでの育児や子どもとのやり取りでは通用しなくなるため、子どもだけでなくママ自身も不安に思うことも増えます。ですが、9歳の壁は乗り越えると親子にとって大きな成長につながるはずです。
9歳の壁を迎えたら、これまで以上に我が子を認めてあげて、低下しがちな自己肯定感を育むようにしましょう。
【参考】
9歳の壁、小4の壁とは?乗り越えるための保護者のサポートや対処法を紹介|ベネッセ教育情報サイト
「9歳の壁」とは?子どもに起きる変化と実践したい三つの対策 [ママリ]