ビックファイブ理論とは、「人間の性格は5つの因子によって構成される」という学説を指します。少し難しい考え方ですが、ママたちが普段「子どもの特性を伸ばそう!」「性格形成を見守ろう」と思ったときに利用できる理論です。
では、このビックファイブ理論を理解すれば、子育てによって性格を修正したり、伸ばしたりできるのでしょうか?
子どもの性格との向き合い方を、わかりやすく解説します。
この記事ではこんなことがわかります▼
- ビックファイブ理論をわかりやすく解説
- ビックファイブ理論と子育ての関係性
- 子どもの特性や性格を伸ばす方法、考え方
ビッグファイブ理論とは
ビックファイブ理論とは、ルイス・R・ゴールドバーグという心理学者が提唱した理論です。人間の性格を5つの因子によって説明するものであり、この因子を紐解くと個人の性格はどういう特徴があるのか、どういう面に役立てられるのかがわかります。
性格というのは、なかなか大人になっても自分を客観視できないものです。自分の持つ良い面がわからないという方もいれば、悪いところに気づけないというママも多いですよね。この性格を客観して考えるときに、ビックファイブ理論を利用します。
まずは、ビックファイブ理論が持つ5つの因子を押さえておきましょう。
外向性
外向性とは、積極性や外の世界への興味がある、活発であるといった性格を指します。
外向性が高い子は、新しい環境でもお友達をすぐ作ることができ、大人数での交流を好みます。一方、外向性が低い子は比較的一人の時間を好み、限られた人間関係での交流が得意といえるでしょう。
誠実性
誠実性とは、責任感が強い、自分の思考や行動をコントロールできる力を指します。
誠実性が高い子は、真面目で責任感が強く、物事を計画立てて達成させることが得意です。低い子はというと、「誠実でない」のではなく、計画性よりも直感的な行動を得意とし、迅速に行動できるといえます。「フットワークの軽さ」もこの因子で説明できます。
調和性
調和性とは、周囲への思いやり、配慮や共感する力のことです。
この因子が強いと対立や争いを好まず、他者に協力的な貢献をすることを好みます。一方で、低い子は個人的な感情に流されず、「自分」を持った冷静な判断ができるといえるでしょう。
開放性
文化や知的好奇心、新しい体験に対する開放度や好奇心を指します。この因子が高い子は想像力が豊かで、新しいアイデアを生み出すことに長けています。低い子は手堅い選択を好み、物事を慎重に進めることができるでしょう。
神経質的傾向
情緒面や感情面がどの程度安定しているのか、ネガティブな刺激、物事への耐性を指します。
この因子が高いと、不安や緊張を感じやすく、ストレスの多い状況では精神的にも身体的にも影響を受けやすいです。一方で、感受性が豊かであり繊細な気配りができる性格でもあります。
一方で神経質的傾向が低いと、情緒が安定してストレスを感じにくいのが特徴。どんな状況でも冷静な対応が可能です。
ビッグファイブ理論を含む性格は「子育て」で変えられる?
ビックファイブ理論で説明ができる性格。この理論を理解すれば、子育てによって子どもの性格を変えることはできるのでしょうか。
どのママも、「子どもには強く生きて欲しい」「ちょっとの出来事で負けないように、しっかりした性格になって欲しい」と思いますよね。では、この理論子育てで性格は変えられるのか見ていきましょう。
行動遺伝学では3つの要素で性格が決定される
ビッグファイブ理論を含める性格とは、何によって決定されるのでしょうか。
この性格は、「遺伝+共有環境+非共有環境」という3つの要素で決まるといわれています。
- 遺伝……親族、家族から引き継いだもの「ママも苦手なものが、子どもも苦手になる」など
- 共有環境……家庭環境や親の影響「お兄ちゃんにあこがれてスポーツが好きになる」など
- 非共有環境……幼稚園や保育園、お友達同士のかかわりなど子ども自身の体験「お友達に誘われて苦手を克服した」など
なんとなく、ママの中には「遺伝がすべて」「共有環境が強い」と思うイメージもありますが、性格には「子ども自身の体験」も含まれることに注意が必要です。
双生児の実験によると「非共有環境」が性格を左右する
遺伝と共有環境、非共有環境はどのように性格に影響するのかというと、これは双生児である双子の実験によって実証されています。行動遺伝学に関する有識者である安藤寿康氏による調査によると、
30~50%が遺伝、そのほかは非共有環境。共有環境の影響は、性格には与えられない
慶應義塾大学学術情報リポジトリ 双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究
とされています。
双子ママに聞いてみても、共有環境が同等であり遺伝も引き継ぐ双子は、一卵性双生児・二卵性双生児にかかわらず性格が一致することは少ないです。つまり「子ども自身の体験によって性格は形成される」と考える説が、現状では有力です。
実は「子育て」では子どもの特性は変えられない
ビッグファイブ理論を見ても、「子どもには積極的になって欲しいから、外向性に長けて欲しい」「誠実性が高い子のほうが、いい子に違いない」と伸ばしたい特性を「ママ自身が決めてしまう」ことは多いです。どのママも、子どもには素晴らしい性格の持ち主であってほしい、自分が経験した失敗を繰り返してほしくないと思うはずです。
しかし、双生児法による調査では、子育てで子どもの特性や性格を変えることはできません。性格とはそもそも個人が持つ「誰にも侵略されない部分」であり、ビッグファイブ理論のどの因子を伸ばすのかは、親がコントロールできないのです。
では、ママとしては子どもの性格や特性に対して、なんのアプローチもできないのかというとそうではありません。次は、子どもの性格に対してママができることをチェックしていきましょう。
子どものビッグファイブにママができることとは?
子どもの性格は子育てでは伸ばせない。変えられない。そういわれると、「親は無力なのかな?」と悩むママもいますよね。
しかし、だからといって子どもは勝手に育つとは言えません。子どもの特性を伸ばし、「生きやすい性格」へと導くために、ママができることをチェックしていきましょう。
子どもの「知る、学ぶ、楽しむ」体験をたくさん与える
性格を形作る「共有環境」というのは、実はベースとなる大切な部分です。例えばサッカーの才能にあふれていた子がいたとして、毎日練習に励みたいのに共有環境に恵まれていないと、その才能は開花されません。
まずは子どもの無限の可能性を信じて、「知る、学ぶ、楽しむ」という体験をたくさん与えてみましょう。
休日にお出かけをしたり、普段はさせないダイナミックな工作を体験させたりするのも一つの手段です。他の家庭ではダメっていうかもしれないけれど、子どもの特性を見極めて「思い切り遊んでごらん」とやらせてみるのもよい体験です。
子どもの経験環境を整える
次に、子どもの経験環境を整えます。子どもが興味を持つことがあったら、ママとしては全力で応援させてみましょう。
- 子どもが絵を描くことが大好き。だから、絵を描く道具は惜しみなく用意している
- 身体を動かすことが大好きな子ども。なるべく広い運動施設にお出かけしてみる
- プログラミングに興味を持ったから、親のパソコンを貸してあげる
など、経験環境を整えると子どもは柔軟に興味を吸収し、性格の形成に役立つかもしれません。
無理に特性を押し付けない、子どもの主体性に任せる
「親にできること」があると、つい子どもを親の好みの性格にしてしまいたくなります。「誠実性は高いほうがいい」「開放性は控えめのほうがいいんじゃないかな?」など、ママとしても口を出したくなりますよね。
しかし、このママのコントロールは結局性格に影響されませんし、そこで形成された性格というのは「親にとっての都合がいい子」でしかありません。
子どもにも、ママが理解できない性格や好み、考えがあります。子どもを「親が支配できるもの」として考えず、まずは信じて主体性に任せてみましょう。
まとめ
少し難しい考えであるビックファイブ理論。ですが、この理論を紐解いて考えてみると、子どもの性格には何が影響しているのか、どうして親子なのに性格的に違う部分、子どもとの考えにギャップが生じるのかも理解できます。
ただ、子どもの性格に親は「何もできない」のではなく、もっとよりよい向き合い方も用意されています。わが子の成長を温かく見守って、親子の絆を深めていきましょう。
【参考】
慶應義塾大学学術情報リポジトリ 双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究
ビッグファイブ理論とは?構成する5つの因子や分析するメリットを解説
子どもの「ビッグ・ファイブ」因子に家庭での教育は影響しない | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
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