心理学者トーマスが提唱した9つの気質とは、持って生まれた子どもの個性を指します。
育児をしているとどうしても「この子には育児サイト通りの言い聞かせは通用しない」といった壁を感じますよね。それは、ママの育て方のせいでもなく子どもがうまく成長していないわけでもなく、子どもの個性が見せるものかもしれません。
今回は我が子だけの“個性”に注目するために、育児に役立つ心理学「トーマスの9つの気質」について詳しく知っていきましょう。
トーマスの9つの気質とは
アメリカの精神科医・心理学者であるトーマス。トーマス博士は数々の子どもに対する研究を進めており、特に「個人差」について着目した理論を多く発表しました。今でも子育てや教育現場では活用されており、心理学を知らないママにとっても知っておくと役立つ研究結果がたくさんあります。
トーマスの9つの気質とは、そんなトーマス博士が見出した理論です。これは「子どもはみな生まれ持った性格・気質がある」というもので、9つのタイプに分かれます。
この気質とは何を指すのでしょうか。まずは「子どもの個性とは?」という点を詳しく考えていきます。
そもそも「気質」とは?
このトーマスの9つの気質にもある「気質」とは、子どもの個性です。一人ひとり違う気質を持っていて、これは変えようとしても簡単には変わりません。
育児をしているママなら誰しも感じることですが、例えば「トイトレがうまくいかない…」と悩んだとき、調べて出てきた方法のいくつかに効果が見られたけれどそれ以外は全然刺さらなかったというケースはよくあるものです。これは子どもには個性があるため、子どもが理解できる言葉や気分の乗せ方や、伝わる声掛けは一人ひとり違うのが原因です。
ママは子どもに「普通」を押し付けていない?
トーマスの9つの気質をなぜママが知るとよいのかというと、ついママをはじめとする大人は「普通・一般的」を子どもにも押し付けてしまいます。
- 周りの子はできるのになんでうちの子はできないの?
- この声掛けでできるようになるはず
- 子どもはみんな遊園地に行きたがるのに
など、よく思ってしまいがちですがどれも子どもの気質に合わない考えかもしれません。
気質は簡単には変わらないと説明しました。つまり、子どもの個性を理解しないとママと子どもは分かり合えないままで、どんどん関係に溝が生まれます。反対に個性があると認めると、「じゃあこの声掛けにしてみよう」とママが方向性を変えることでうまくいくこともぐっと増えるのです。
トーマスの9つの気質を解説
では、トーマスは子どもに見られる生まれ持った気質をどのように分類しているのでしょうか。9つの気質を見ていきましょう。
いずれかの気質にすべてが合致するわけではなく、場面によって異なる気質が現れることもあります。子どもがどの気質に当てはまるのか、チェックしてみてくださいね。
活動の活発さ
活発な子、穏やかな子といった指標をさす気質です。運動や外遊びが生まれつき好きな子もいれば、家の中で静かに過ごすのが好きな子もいるでしょう。
注意の逸れやすさ
注意の逸れやすさとは、外部からの刺激でどの程度気が逸れやすいかを指します。集中できない、注意力散漫、細かなことが気になる繊細さといったネガティブなものから、ぐずってもすぐに違う遊びへと注意を向けられるといったポジティブなものも含まれます。
粘り強さ
課題や特定の物事に対して、どれほど粘れるかという指標です。
粘り強い、根気がある子は理想的かもしれませんが、粘り強さにもポジティブな面とネガティブな面があり、例えば「ママに叱られたのに反抗して粘る」というのはネガティブな粘り強さです。
新環境への反応
新しい環境や体験したことのない場面、新しい人に出会ったときにどう反応するかの指標です。人見知りをせずすぐに輪の中でのびのびと活動できる子もいれば、ママを求めてなかなか一歩が踏み出せない子など、さまざまな気質があります。
規則正しさ
決まった時間にお腹がすき、決まった時間に眠くなる。1日の生活リズムが決まっている子もいれば、そうでない子もいます。「なかなか子どもが寝ない」というのは、生まれつき規則正しさの要素が少ないのかもしれません。
変化に対する順応
物事が変化したときにどれだけ早く順応できるかを指します。学校のクラス替えといった大きな物事でなくても、児童館に行ったらお休みだった。予定を変更して公園に遊びに行く、といった場面ですぐに切り替えられるかがこの要素に当てはまります。
今日だけ寝るのが遅くなってしまった場面や、お風呂と晩ご飯の順番を入れ替えても違和感を覚えないか?なども変化に対する順応が影響します。
五感
五感がどれほど鋭いかを指します。もちろんメリット・デメリットがありますが、特定の感覚だけが優れており、敏感に反応する子もいます。
喜怒哀楽の度合い
物事に対する反応の強さです。嬉しいときに思い切り喜べる、なんでも自分なりに楽しめるといったポジティブな要素から、怒りっぽく泣き虫といったネガティブな要素までさまざまです。
基礎的な気質
元々気難しい子、楽観的な子、心配ごとが多い子、慎重な子、大胆な子など日常の大半をどのような気分で過ごすことが多いかを、この気質では表しています。これは単に「その子の性格・気質」そのものですが、さまざまな基礎的な気質がある中で注視されるのは「物事をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるか」という傾向です。
個性を生かした子育てとは?
トーマスの9つの気質をざっと知った上で、個性を生かした子育てとは何かを今一度考えてみましょう。
子どもは「一般論」では育たない
この9つの分類だけでもたくさんの気質が見られましたが、説明したように「どれかに100%当てはまる」わけではありません。例えば「物事をネガティブに捉えがちだけど、特定の条件があればきょうだいよりも勇敢に取り組むことができるし、集中力も発揮する」といった複数の気質が複雑に絡まって人間は成り立っています。
そして大切なのは、その子の気質はその子だけのものであり、ママの常識を押し付けても子どもに合うかどうかはわからない点です。
「育児書通りにやっても育児がうまくいかない」のはこれが原因で、ママの育て方が悪いわけでも叱りすぎているわけでも、子どもが何かおかしいわけでもありません。ママともパパとも違う子どもは、一般論では育たないことを頭に入れておきましょう。
ママ自身も一人の人間。あなたにも気質はある
「子どもの気質」ばかりに気を取られて、ママの気質は二の次になりがちです。当たり前ですがママ自身も一人の人間であり、あなたにも気質はあります。
「この子は外遊びが大好きだけど、私は家の中で静かに遊ぶのが好きだな」と思っても、決しておかしいことではないのです。また、気質という個性があるからこそ、例え我が子であっても相性が良い場面・悪い場面はでてきます。
大切なのは自分の考えにそって子どもは従うべき、と子どもの個性を無視した育児をせず、「そういう気質もあるんだね。でも、この点は分かり合える」と理解を示すことです。子どもの個性を生かした子育てというのは、まず子どもの個性を認めて、その中で過ごしやすい環境や思考へとママがサポートして導くことをいいます。
まとめ
子どもの気質とは、トーマス博士の9つの気質を参考にするとよく理解できます。持って生まれたものであり、個性は簡単には変えられません。
ときどき、変えられないものを互いに変えようとして、ママは育児とにらめっこしがちです。「私の考えとは違うけれど、これはこの子の個性」と認めてあげた上で、親子の相互理解を進めるとよいでしょう。
【参考】
トマス(Thomas, A.)とチェス(Chess, S.)の気質 – 世界一わかりやすい心理学
わが子の個性が分かる!持って生まれた「9つの気質」を知ると子育てが楽になる – SHINGA FARM