エリクソンの発達段階とは?発達を知ると育児の悩みも解決できる!

エリクソン 発達段階

みなさんはエリクソンの発達段階という言葉を聞いたことがありますか?「なんだか難しそう…」とイメージを持たれがちなこの言葉は、心理学者のエリクソンが提唱する「人間の一生を8段階に分けた成長段階」を指します。

人間は成長によってさまざまな心の変化、課題が見つかりますが、エリクソンの発達段階を知ると子育てに役立ったり、悩みの解決方法が見つかったりすることも。今回はそんなエリクソンの発達段階を分かりやすく解説していきましょう。

子供の育て方や育児の壁にぶつかっているママは、ぜひ参考にしてください。

エリクソンの発達段階とは?

エリクソンの発達段階、聞いたことがある方もない方もいますよね。発達段階というと難しそうなイメージを持つかもしれませんが、まずはわかりやすく基礎知識を解説します。

人間の一生を8つの段階に分けたもの

エリク・H・エリクソンはドイツ生まれの心理学者。心理学者として著名なジークムント・フロイトの弟子として、主に発達心理学や精神分析を研究する学者でした。

エリクソンの発達段階とは、「人間の一生を8つの段階」に分けたもの。この段階は年齢に応じて現れるとされており、以下の8つに分類できます。

  1. 乳児期(0~1歳半頃)
  2. 幼児前期(1歳半~4歳頃)
  3. 幼児後期(4~6歳頃)
  4. 学童期(6~12歳頃)
  5. 青年期(12~20歳頃)
  6. 成人期(20~40歳頃)
  7. 壮年期(40~65歳頃)
  8. 老年期(65歳頃~)

見ると分かるように、生まれてから幼児期のころは細かく分類されています。その分、子供の心理的変化は激しく、大きく成長する時期だと分かりますよね。心や精神はこのように段階を追って成長していき、この成長過程でそれぞれ異なる課題や得られる心境の変化があると提唱しているのが「エリクソンの発達段階」です。

それぞれ「心理社会的危機」が存在する

エリクソンの発達段階は単に心の成長を可視化しただけでなく、それぞれの段階で「心理社会的危機」という発達上の課題があるとも示しています。発達上の課題というとぴんと来ないかもしれませんが、「その年齢に応じて自分が乗り越えにくい壁が存在し、これを超えられないと次の成長段階に向かえない」と言えばわかりやすいかもしれませんね。

心理社会的危機はいつの年齢にも訪れますし大人でも常に危惧されるものです。しかし、それぞれ適切な解決方法があります。これを身に付けると生きやすくなり、精神的な成長にもつながるでしょう。

子育てママは育児の問題解決の糸口になることも!

子育てママにとってなぜエリクソンの発達段階が重要なのかというと、自分の社会的危機を乗り越えるためにも有効です。さらには、子供の発達段階を知ることで、今直面している育児の悩み解決につながる可能性も出てきます。

のちほど詳しく説明しますが、育児というと青年期(~20歳頃)までの子供の育て方で悩みますよね。育児の悩みはご家庭でさまざまですが、大きく分類すると

  • 「イヤイヤ期で子供に参っている」
  • 「自我が出てきて言うことをなかなか聞いてもらえない」
  • 「子供と意見が対立して、進路のことで話がまとまらない」

などどれも似通ってはいるのです。

子供は今どんな心理的成長段階を迎えていて、どう社会的危機を乗り越えればよいのか。エリクソンの発達段階を知ると育児に活かせることも多いです。

エリクソンの発達段階、成人するまでの5つの段階とは

エリクソン 発達段階

では、エリクソンの発達段階上で成人するまでの「育児が必要な」子供の成長に注目してみましょう。それぞれどんな心の成長を迎え、社会的危機が存在するのかをご紹介します。

乳児期

乳児期とは生後間もなくから1歳半頃までの時期。ここでの心理社会的危機とは「基本的信頼VS不信」です。

赤ちゃんは自分で食べることができないため、泣いてママを呼び助けを求めます。周囲の大人から無条件で愛情を受け、お世話されることで育っていくのです。こうした適切なお世話を受けると赤ちゃんは大人を信頼するようになり、最終的に「希望」という心理的力を得ることができるでしょう。

反対に泣いても構ってもらえず大人への信頼が構築できないと、赤ちゃんは不安不信感を強く持つようになります。希望が持てず何事も悲観し、将来的な人生観にも大きな影響が出るでしょう。

幼児期前期

次に幼児期前期です。1歳半から4歳頃までの子供の心では、「自律性VS疑惑」という心理社会的危機が訪れます。この時期の子供というと好奇心旺盛。また、自我の芽生えを迎えてイヤイヤ期に突入するのも特徴的ですよね。

挑戦する心が芽生えるのもこの時期なので、適切な機会があれば子供のチャレンジを見守り、子供の自信を育てるチャンスでもあるのです。

反対に親や周囲の大人が本人の挑戦する機会を奪ったり、失敗を強く非難したりすると子供の自律性は失われ、「誰からも信じてもらえないし、自分はダメな人間だ」と疑惑が生まれてしまうでしょう。子供の成長を助けるためには、子供らしい好奇心をママをはじめとする大人が見守ってあげるのが大切です。

自我については、こちらで詳しく説明しています。

https://cocololabo.com/blog1/childrens-growth-ziga/

幼児期後期

5歳までの子供は幼児後期と呼ばれています。心理的社会危機は「積極性VS罪悪感」。この頃の子供は「何でもやってみたい、好きなことをしたい」という気持ちと「でもこれをすると怒られるだろうな」という気持ちが常に戦っています。

幼児後期の子供は、積極的に自分のやりたいことを選び、実行できます。さまざまな経験を通じて自分の中の「なぜ?」が解決できると、「目的意識」が獲得できるのです。

自発的な子供のチャレンジに対して、反対に経験を制限したり厳しくしつけたりすると、罪悪感が勝り心の成長がうまくいきません。3~5歳頃の時期は社会のルールを教える機会も増える時期なのですが、何事もバランスが大切と言えそうですね。

学童期

小学校に通うようになる学童期。学童期に起こる心理的社会危機とは「勤勉性VS劣等感」です。

学校でいろいろなことを学び習得する時期であり、与えられた課題をこなすことで自分の能力に気付き、「有能感」を得ることができます。しかし最初からうまくいく子は一人としておらず、失敗したり苦手なことを見つけたりするのも多いでしょう。このとき周囲の大人が適切にフォローせず、できないことばかりに注目して子供を咎めると、「自分は何をやってもダメだ」と劣等感を抱くようになります。

何でもできるようになる学童期だからこそ、親や周囲の大人は子供の話を聞いて行動を見守るのが大切です。克服するのは子供自身ですが、その克服に導いてあげられるのは大人だということを頭に入れておきましょう。

青年期

最後は青年期。中学生から20歳頃までの成長過程を指します。心理的社会危機は「自我同一性VS同一性の拡散」であり、得られるのは忠誠心です。

この頃の子供の悩みは複雑になり、思春期を迎えると大人が介入できることも少なくなるでしょう。自分の意思や周囲からの評価に悩み、「自分とは何者であるのか」を探し求める時期です。

このとき「自分はこういう人だ」と自己形成=アイデンティティの確立ができると、心理的社会危機を乗り越えられます。自分の価値が分かり、自分は社会の中でどう生きていきたいのかが分かるようになって「忠誠心」が得られるわけです。

エリクソンの発達段階、ママができる活用方法

子供 虐待しそう

エリクソンの発達段階をご紹介する中で、「今の自分の子供の課題」「育児でサポートできる部分」が少しずつ見えてきたかもしれません。最後に、この発達段階を育児でどう活用すればよいのか、発達段階を知るメリットをチェックしていきましょう。

子供が「今」何を考えているのか分かる

青年期まで成長すると子供の気持ちの変化も複雑ですが、乳児期や幼児期の子供が何を考えているのかは成長段階を見ると分かるようになります。「子供に聞いてもやり取りできないし、何が育児の正解なのか分からない…」というママは、子供が今どんな心理社会的危機を迎えていて、どんな成長過程が必要なのかを確認してみると良いでしょう。

適した言い聞かせができる

教育の仕方、子供との関わり方は親にとって大きな悩みの種です。どこまで口を出したらよいのか分からないし、かといって放っておいてもよいのかも不安ですよね。

これも、エリクソンの発達段階を見てみると分かることがあります。例えば幼児前期の3歳の子供に対して、「これもダメ」「あれもダメ」と厳しく律するのは適していないと言えるでしょう。

大人にとって許せないラインはあるものの、その中でも子供の自主性に目を向けて、適した言い聞かせ方法を見つけてみてください。

子供にとって何が成功体験なのかがわかる

子供には成功体験が大切であり、成功体験によって「やり遂げる力」や「根気強さ」が培えます。以下のブログでもみなさまにご紹介しました。

ただ、子供に与えたい成功体験が何を指すのかは、年齢によって違います。エリクソンの発達段階ではこうした「今子供が何を求めているのか」も分かるため、適切な成功体験が理解しやすいのもメリットです。

発達段階を見てみると、意外と子供の心理面は成長しているかもしれませんね。また、ママが求めている発達は子供にとって高度過ぎるかもしれません。このような「丁度良い育児」を知るためにも、エリクソンの発達段階に目を向けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

少し難しい印象もあるエリクソンの発達段階。ですが、一度参考にしてみると育児の問題を解決するヒントがたくさん見つかります。

今子育てで悩んでいるママは、ぜひ我が子がどんな心理社会的危機を乗り越えようとしているのかチェックしてみましょう。その中でママができることを見つけ、適切なアドバイスで成長を導いてあげてくださいね。

【参考】

エリクソンの漸成的発達理論 | 看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー]

エリクソンの発達段階とは? 8つの過程や理解するメリットを解説 | 教室数日本一の小学生・子ども向けプログラミング教室

エリクソンの発達段階に応じた年齢別発達課題とは | ロボ団ブログ

ライフサイクル | 武蔵浦和メンタルクリニック | さいたま市南区

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。