イヤイヤ期の子供に聞かれる「自我の芽生え」。みなさんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。
幼少期に芽生えた自我は、さまざまな経験をして自我の確立をしていきます。今回はその自我の確立がいつ起こるのか、また親ができることはあるのかどうか、ご紹介します。
自我の確立とは?自我の芽生えとどう違う?
そもそも自我の確立とは何か、自我の芽生えとどう違うのかを考えていきましょう。
「自分に気付くこと」が自我の芽生え
2歳ごろの子供は、他人と自分の違いに気付き自己主張を始めます。これを「自我の芽生え」といい、ママの中には「初めて出会う子供の“自分”の主張」に悩む方もいるかもしれません。
自己主張が強くなる自我の芽生えの時期は、第一反抗期です。通称イヤイヤ期と呼ばれる大切な成長過程のひとつではありますが、自我の芽生えに良いイメージが持てないこともあるかもしれませんね。ただ、さまざまな経験をして子供は「社会のルールやマナー」と「自我」との間で葛藤をし、次第に気持ちは落ち着いていきます。
自我の確立とは「自分が何者かを認識すること」
自我が芽生え「自我を通すばかりでは他者とうまくいかない」と理解し始めた子供は、さらに成長して自我の確立をしていきます。
自分が誰なのかを知ることは、自我同一性(アイデンティティ)を確立すると言われています。アイデンティティとはいろいろな分野で使われる言葉ですが、今回は人間の心の成長である心理学の中ではどう考えられているのかをご紹介します。
アイデンティティとは、社会の関わりの中で身につける自分の役割、自分自身の価値についての確信
発達心理学2.青年期の心理、モラトリアム、アイデンティティ、自分探し(心理学総合案内こころの散歩道)
こう考えると自我の確立は、「大変な苦労が必要で、私自身もまだ確立できていない」と思うママもいるかもしれません。反対に「自然と身につくものだ」と思えるママもいるかもしれませんね。自分が何者かを認識すること=自我の確立は、人によって難しさが変わってくるのです。
自我の確立ができる人、できない人、確立する年齢もさまざま
先ほども説明したように、自我の確立がいとも簡単にできる方もいます。反対に何年も悩み、自分が何者なのか、社会的にどんな役割を持つのかいまだにピンとこない方もいるでしょう。自我の確立は年齢もさまざまで、自分自身いつ確立するのかもわかりません。
子供の自我の確立は、特に社会との関わりが深まる12~18歳の思春期ごろに悩むことが多いです。学校の友人や習い事・趣味での人間関係、家族との関わりも、自我の確立にかかわっています。
自我の確立はどうやってするの?
「自我の確立」の意味がわかったら「じゃあどうやって確立するの?」と疑問に思いますよね。「社会の中で自分の役割が分かっており、自分自身の価値も把握している」といった自我の確立がある人間は素晴らしく思えます。
次は、自我の確立とはどうやってするのかご紹介します。
悩みもなく自我の確立ができる人もいる
先ほども説明したように、自我の確立の意味を説明して「ああ、それなら自信がある」と簡単に受け入れられる方もいます。自分が一体誰なのかが何の苦労もなく分かっている方もいるのです。
そういう方にとっては、自我の確立に悩みぬく思春期の感情は、いまいちわからないかもしれません。自我の確立は育った環境や親子の関係性ももちろん影響しますが、人それぞれ確立のタイミングや難しさは異なります。
自我を確立するにはさまざまな活動経験が必要
では自我を確立するにはどうすればよいのか、それにはさまざまな活動経験が必要と言われています。ただ闇雲に「自分とは何者か」を考えるだけでは本当の自分自身は分かりません。
学校に通って仲間と勉強し関係を築き、アルバイトをして社会経験をし、恋愛をしたり時には親と友人と喧嘩をしたりと、いろいろなことを経験しながら自分を見つけていきます。この活動経験こそが自我の確立には大切です。
また、そうして自分とは何かを考えた結果「わたしは社会にとって役に立たない人間だ」と結論が出たなら、自我の確立とは言えません。先ほど説明したように、アイデンティティは自分の社会的役割(自分の何が社会の役に立っているか)、自分自身の価値を確信することだからです。
子供の自我の確立のために親ができることとは?
自我が確立していると、自分自身の価値が分かっているので他者に自分をよりよくアピールできます。自分の何が強みなのかも認識しているため、自分自身を売り出す力も十分です。
子供の自我の確立を考えてみると、今はまだ早いかもしれませんが将来的には我が子も社会の中で生きる人間の一人になります。その時、自我の確立ができていると子供にとってポジティブな効果が得られるのは想像に難くないのです。
では、子供の自我の確立のために親は何ができるのでしょうか。これまでご紹介してきた自我の確立について振り返りながら考えていきます。
さまざまな経験をさせてあげる
自我の確立に大切なのは、さまざまな活動経験です。子供が自分で自分を見つけるためにも、さまざまな経験をさせてみましょう。
この自我の確立を提唱したのはアメリカの発達心理学者であるエリクソン氏です。エリクソンは経験不足により自我(アイデンティティ)を確立できないことを「アイデンティティ危機状態」と名付けています。思春期は「自我の確立の危機」と「自我の確立」で悩む時期。自分が何者かを分かりかけているけれど、自分を取り巻く社会のことも理解が深まり、現実の理想のギャップで苦しむ子供は多いです。
しかし、このアイデンティティ危機状態を回避するために、自分自身を見つめなおして考える時間も設けられています。これはエリクソンによると「モラトリアム」と呼ばれ、同じく思春期ごろが当てはまるのです。
自我の確立と自我の危機、そのはざまであるモラトリアムの中にいる子供。我が子の自我の確立のためには親はさまざまな経験を用意し、あくまで子供が主体で「どう経験していくのか」を見守ると良いでしょう。
大人が子供の自我を確立できないと強く認識する
自我の確立は社会で生きていく上で大切な要素です。そう分かっていても、大人が子供の自我の確立を早めたり、大人の理想通りの自我が確立できるわけではありません。
どんな育て方をしても、自我は子供本人だけのものです。親がコントロールできるものではないことは、しっかり頭に入れておきましょう。
繰り返しになりますが、自我の確立は大人だってできていないこともあります。自分は何者なんだろう?と考えている最中の方もいるかもしれません。思春期ごろに自我の確立で悩むのはあくまで目安であって、思春期を過ぎて悩んでいたとしても決して遅いことではありません。
子供のペースで自我の確立をしていく様子を、しっかり見守ってあげましょう。
まとめ
自我の芽生えから始まり、社会の中から見た「自分自身」が分かるようになるのが自我の確立です。少し難しいかもしれませんが、子供の自我の確立は大切な心の成長過程です。
つい子供のことだからと口を挟みたくなるかもしれません。しかし、自我の確立は一人ひとりが行うことで、周囲がどんなに指示してもコントロールできるわけではないのです。
大事なポイントはママをはじめとする大人は、子供の心の成長をサポートし見守ること。日々の親子のやり取りや経験を通して、一体自分は何者なのか、ともに見つめなおしていきましょう。
【参考】
発達心理学2.青年期の心理、モラトリアム、アイデンティティ、自分探し(心理学総合案内こころの散歩道)
思春期とアイデンティティ:自己理解の重要性 | Katsuiku Academy