つい子どもに言ってしまう、「早く寝なさい!」「お片付けはしたの?」「そっちじゃなくてこっちを選んで」などの口出し。ママの中で、子どもに口を出したことは一切ないという方はほとんどいないのではないでしょうか。
しかし、この言い聞かせは行き過ぎると逆効果に。この説を論じたのがアドラーの「課題の分離」です。
今回は難しい子どもへのしつけの方法、言い聞かせの方法を、課題の分離を生かす方法を解説します。親子関係を築くために大切な要素を押さえておきましょう。
この記事では以下のことがわかります▼
- アドラー心理学「課題の分離」をわかりやすく解説
- 課題の分離を親子関係に生かす方法
- 課題の分離の実践方法
アドラー心理学の課題の分離とは
記事冒頭でもお伝えした、アドラーの課題の分離。アドラー心理学は、育児に生かせることが多く、たくさんのママも触れることの多い論説です。育児本でも紹介されているため、一度は目にしたことのある方も多いかもしれません。
まずは、このアドラー心理学の課題の分離とは何かを見ていきましょう。
「何とかしたい」と思ったときに「それは誰の課題?」と思い直すこと
課題の分離とは、名前の通り「それぞれの課題を分けて考える」という理論です。主に「他人の課題に介入しないこと」「自分の課題に他人を介入させないこと」を考える思考を指します。
例えば、ママが普段子どもに対して口出ししていることとはなんでしょうか?
- 子どもの宿題「宿題はやったの?まだ終わっていないの?」
- きょうだい喧嘩「喧嘩しないで!お兄ちゃんだから我慢しなさい!」
- ゲームやテレビをずっとしている…など
他にもたくさんの口出しがありますが、育児をしているとほとんど毎日ママが口にしていることかもしれません。
この口出しに関して、ママがイライラしてしまうのは当然です。しかし、一つ一つ課題を見てみると、ほとんどが「子どもの課題」であることに気づきます。
宿題をやらないから困るのは「子どもの課題」きょうだい喧嘩で仲たがいが起こるのは「きょうだいの課題」ゲームやテレビをずっとしていて、目が悪くなる、他の用事が済ませられないのは「子どもの課題」。
とっさに口出ししてしまうものですが、この何とかしたいと思ったことは“課題”、さらにこの課題は誰の課題なのかを思いなおすのが、アドラーの課題の分離の最初の一歩です。
分離とは「境界線を引く」こと
次は、分離を解説します。先ほど課題を見つけて「誰の課題?」を考え直したら、自分の課題には他者を介入させず、他人の課題にも介入しないよう境界線を引きます。
なぜ、分離が必要なのかというと、いざ自分の課題を乗り越えるときが来たら「自分で乗り越え方がわからない」ことになるからです。例えば子どもが宿題をしないという課題を、ママが必死に口出しして終わらせたとしても、今後ずっとママが言い続けるのは不可能です。
宿題をしないからできていなくって、翌日先生に注意されるのは子どもの話。ここにママは関係ありません。宿題をせずに勉強が理解できなくなり、授業についていけなくても、困るのは子どもであってママではありません。
このように課題をきちんと分け、境界線を引くことをアドラー心理学の課題の分離は提唱しています。難しいことかもしれませんが、理にかなった説ではあると気付けるママもいるかもしれませんね。
課題の分離と放任主義の違い
とはいえ、「課題の分離」を間違って考えてしまうと単なる放任主義になります。「これは子どもの課題だから、親は介入しない」とすべてを手放してしまうのも、あまりに無責任です。
例えば小学1年生の初めての宿題が出されたとき、「課題の分離だから」といってママが何一つ見てあげないというのは、あまりにも過酷な状況です。子どもが「困っている」「どうしたらいい?」と悩みを打ち明けているのを、無視することが課題の分離というわけでもありません。
課題の分離とは責任をすべて放り出す放任主義を推奨するものではありません。課題の分離は「親は何もしなくていい」という魔法の言葉のようにも思えますが、正しく親子の中で実践するには課題の選定と親がどうサポートするのかを慎重に見極める必要があり、実はとても難しいものなのです。
親子の課題の分離には無理がある?
課題の分離とはビジネスシーンでも活用されるものですが、特に親子関係では重要な役割を持ちます。口出しというのは、ママとしては「できるならやりたくないし…」と思うものですし、課題の分離で問題がさっと解決できれば難しさは感じないものです。
しかし、実際に「では親子で課題の分離をしてみましょう」としたときに、いくつか問題点が思い浮かびますよね。なぜ、親子の課題の分離は難しいのか、その問題点をいくつかチェックしていきます。
ずっと子どもが課題を乗り越えなかったらどうしよう?
子どもの年齢にもよりますが、課題を与えたとしても子どもが課題を「敢えて乗り越えない」ことも考えられます。これは親の手助けがなくては乗り越えられない大きな課題ではなく、些細な課題でも起こることです。
例えば…
- 勉強には価値を感じないから、宿題をしない
- 部屋が散らかっていても、誰も困らないから片付けをしない
- 寝不足でも遅刻するのは自分の責任。だから早く寝る必要性を感じない
このように自分の意志で子どもが課題を設定しない、乗り越えない場合は「自然の結末を体験させる」というのもアドラー心理学には説かれています。
宿題をしなければ授業や学校で困ることが起こりますし、散らかったままの部屋では気分も落ち着かず、探しものも見当たらないかもしれません。友達が遊びにきたら、恥ずかしい思いをするかもしれませんね。遅刻を繰り返すと、もちろん叱られます。
このように課題の分離をするなら、その課題を乗り越える・乗り越えないというのも子どもの選択に任せるのも一つの手段。自然の結末を体験させて、子どもに課題を自覚してもらうのもよいかもしれません。
親のせいって思われたら?
「課題の分離だから、口出しはしない!」と思っても、なかなかそううまくはいかない場面も多いです。「なんで親は放置しているんだろう?」「あの子が問題を起こすのは、親のせいでしょう」など、他者が介入してくることも決して珍しくありません。
子どものイヤイヤ期を考えてみるとよいかもしれませんね。どこでも癇癪を起こして泣いてしまうわが子。公共の場にいるときに「課題の分離だから」といって放置はできないはずです。
課題の分離とは従来の「子どもの行動は親の責任」という日本の子育て論とは対極にあります。今すぐ世間が理解してくれる、というわけではないので、ママとしてはできることやっておきましょう。
例えば子どもに「なぜ課題を乗り越えないといけないのか」を最低限話してもよいかもしれません。子どもに乗り越えられない課題であれば、先回りして「課題が出ない状況」を作っても問題解決につながります。
ただ、本来は「子どもの課題は親のせいではない」のが根本的な考えです。「そうはいっても世間から認めてもらうのは難しい」と理解の上で、気持ちを持ち直して実践するのも人湯の手段です。
子どもが課題に気づけないときは?
そもそも、子どもが課題に気づけないこともあります。例えば「今ここで騒ぐと危険なことが起こる」という予測や「宿題をしないと学校で困る」といった想像力がなく、課題の分離が難しいかもしれませんね。
この「〇〇すると〇〇になる」という倫理的思考や想像力が育つのは、成人以降です。大人でも課題を見つけることは難しいので、必要な場合はヒントを出したり、課題を提示してあげるといった見守る行動もママには必要です。
まとめ
アドラー心理学の「課題の分離」。毎日口出しばかりでイライラしてしまう、というママは、今一度口出しが「子どもの課題解決の障害になっていないか」を考えてみてもよいかもしれません。
ただし、ご紹介したように課題の分離を親子関係に生かすのは難しいもの。世間的な「子育て」にもまだまだ追いついていない思考法のため、その点を割り切って「どこまで活用するか」も大切なポイントになります。
子育てをもっと気楽に楽しく向き合えるように、課題の分離をぜひ実践してみてくださいね。
【参考】
「課題の分離」こそがあなたを変え、あなたを自由にする!【書籍オンライン編集部セレクション】 | 嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え | ダイヤモンド・オンライン
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