子供には自分に対して自信があり、自分を認められる、自己肯定感の高い子になって欲しい!ママなら、みなさんそう願っているかもしれません。
ですが、育児の現場でたびたび「ダブルバインド」と呼ばれる声掛けが使われることがあります。このダブルバインドは、せっかく築いた子供の自己肯定感を低めてしまう恐れがあるのです。
今回はダブルバインドとは何か、ダブルバインドが子供に与える影響や正しい子供との向き合い方をご紹介します。
育児におけるダブルバインドとは?
ダブルバインドは時々育児書にも書かれるものですが、普段は聞きなじみのない言葉かもしれません。まずはダブルバインドそのものの意味から知っておきましょう。
ダブルバインドの意味
ダブルバインドを日本語にすると「二重拘束」になります。これは「二つの矛盾するメッセージを出し、相手を混乱させるコミュニケーション」を指します。
今回は育児におけるダブルバインドをご紹介しますが、子育て中だけでなく社会の至るところにダブルバインドは使われています。例えば新しく勤めることになった職場で上司から「何でも聞いてね」と声を掛けてもらったのに、いざ質問すると
- 「それは今聞くことなの?」
- 「何度も聞かないで」
- 「今忙しいから質問はあとにして」
など自分の行動を否定されることも珍しくありません。当初の声掛けと矛盾しており、理不尽を感じますよね。これが、ダブルバインドと呼ばれるコミュニケーションです。
育児においてダブルバインドが使われる場面
知らず知らずのうちに、ダブルバインドは育児の現場でも使われてしまいます。ひとつのケースを見てみましょう。
子供「じゃあ、中学卒業したらすぐ一人暮らししてアイドルになりたい!」
ママ「それはダメ!」
上記の会話を見て、ママとしては「親の言い分もわかる」と納得できるのではないでしょうか。しかし、子供側からすると「自由に選んでいいと言ったのに、ダメなの?」と矛盾を感じてしまいます。
このほかにも「おもちゃを片付けないと全部捨てちゃうからね」「帰らないならママ先に行くからね」といった「○○しないと○○するよ」の声掛けも、子供の意思を無視した一方的なもの。親の意見を強制する、ダブルバインドです。
ダブルバインドは子供にどんな影響が出る?
ダブルバインドを見て問題点は分かるけれど、「うちもよくやっている」と心当たりのあるママも多いかもしれません。このダブルバインドが続くと、子供にはどのような影響が出るのでしょうか。
強いストレスになる
大人にとっても子供にとっても、ダブルバインドは強いストレスを伴うものです。小さな子供ほど「なんで?どうして?」と自分の中で疑問を感じても、その発散方法や矛盾を訴える手段を持っていません。
いきすぎるダブルバインドを常に続けていると、混乱状態から引き起るストレスも一緒に蓄積します。常に精神状態が不安定になり、体調の悪化や夜尿症やチック症など神経症状が現れる可能性も高まります。
一度ダブルバインドがあったからといってすべての子が精神不安になるわけではありませんが、こうした恐ろしい状況にもつながる誤ったコミュニケーションであることは、知っておくとよいでしょう。
「何をやってもダメなんだ」と自己肯定感が否定される
自分の意見を聞き入れてもらえない、正しいと思って返答したのに拒否される。そんなダブルバインドは子供の自己肯定感をも低めてしまいます。「何をやってもダメなんだ」と子供が最初から意欲を失ってしまい、挑戦する心ややる気、自分への自信がなくなることも。
親としては自己肯定感を高め、子供自身がありのままの自分を好きでいて欲しいですよね。しかし、ダブルバインドがあると「親にとって都合のよい子」にしかならずかえって自尊心を失ってしまうのです。
自分の主張をしなくなる
大人でもそうですが考えを否定され相手の言うことばかりを強制されると、次第に自分の意思はなくなります。自己主張をしない子になり、自分で物事を取捨選択できなくなるのです。
親から見ると聞き分けの良い子に映るかもしれません。しかし、実際には「親の顔色を伺う子」でしかなく、子供の自由な発想や意欲をなくすコミュニケーションこそダブルバインドです。
ダブルバインドにならない声掛けとは
ダブルバインドから私たちが学ぶべきなのは、「こうした矛盾したメッセージにならないようにする」ことです。ダブルバインドの特徴やその実態を知ると、ダブルバインドを回避して子供と向き合えます。
次は、ダブルバインドにならない声掛けをチェックしておきましょう。具体例と合わせてご紹介します。
子供の主張をきちんと受け入れる
ママとしては止めたい意見、聞き入れがたい意見が子供から出たとしても、一度きちんと受け入れましょう。頭ごなしに叱っても、「これを言うとママは怒る」と認識され肝心の「なぜ怒られたのか」は子供は学びません。
- 公園から帰りたくないんだね
- そのおやつが欲しいんだね
- そっかあ。今はやりたくないんだね
その上で、なぜ否定するのかを子供にも分かりやすい優しい言葉で説明します。
「何でも一つおやつを買っていいって言ったけど、そのチョコレートは大きくて食べきれないんだ。おうちにもチョコレートはあるから、違うおやつを選んで欲しいな」
このとき、怒らずに冷静にお話するのがポイントです。「怒らないから」と言っておきながら表情が怖かったり、行動が乱暴だったりすると子供を怖がらせてしまいます。これも、言葉のないダブルバインドとなるので注意が必要です。
提案する、選択肢を与える
先ほどの例にあげた親子の会話を参考に、ダブルバインドを回避する受け答えを考えてみましょう。
「将来、アイドルになりたいんだね。その夢は応援するよ。それでも高校進学はした方がいいと思うけど、どうかな?」
このように、子供の意見は認めつつ強制せずに提案するのも、よいコミュニケーションのひとつです。その他にも、
「今からおもちゃお片付けするのと、おやつの前にお片付けするのどっちがいい?ママも手伝うよ」
このように子供にどちらがよいかを選択させるのもおすすめです。この場合は結果としてお片付けをポジティブに提案しているので、子供にとっても強制されるよりストレスが大きくありません。
ルールを作る
それでも子供と意見が合わない、どうしても言い聞かせないといけない場面は多くあります。「早く帰って晩ご飯を作らないと家庭が回らないのに、子供は公園から帰りたがらない」「どう言い聞かせてもテレビをずっと見続け、お風呂に入ってくれない」ママとしては、あるあるのシーンですよね。
このときは、簡単なルールを提示して落としどころを見つけましょう。
- 「じゃあ、あと3分経ったら帰ろうか!」
- 「そのアニメが終わったら、テレビ切ってお片付け始めようね」
- 「この3つの中なら、どのおやつを選んでもいいよ」
あらかじめ条件を決めておくと、ママとしても想定外の答えが返ってこずスムーズにコミュニケーションが取れます。
子供の行動や考え方は、親の想像をはるかに超えるものです。育児が思ったように進まないように、子供もママとは「別の人間」であり常に納得できる返事があるわけではありません。一度頭に「子供は予想外のことをするもの」と思い留めておけば、ちょっとしたことでもイライラせず冷静でいられるかもしれません。
まとめ
子供の自己肯定感を低めてしまうダブルバインド。また、例を見るとわかるように子供と暮らす場面では、ダブルバインドはありふれたやり取りでもあります。
ダブルバインドとは何かをしっかり理解し、子供の個性や主張を受け入れるやり取りを徹底すると、強制したり叱ったりするよりもずっと親子関係はよくなります。ぜひ意識してみてくださいね。
【参考】
ダブルバインドとは?意味・具体例・対処法・活用法を解説 COE LOG
ママ「進路は自由に選びなさい」