非認知能力というと、「認知能力」に「非」がついているので「認知しない能力のこと?」というイメージがあるかもしれません。今よく見るワードである非認知能力ですが、正しい定義はよくわからないという方も多いですよね。
今回は非認知能力によくある勘違いを、言い換えることで分かりやすく解説します。非認知能力が高いとどうなるのか、子どもの非認知能力を高めるためにはママは何をすればよいのかもチェックしていきましょう。
非認知能力を言い換えると?起こる勘違い
非認知能力という言葉は少し難しい印象があります。「認知能力?」「さらに非がついているので、打ち消した意味?」と混乱してしまいますよね。
この能力は言い換えると「社会性」「情動コントロール」です。もっと優しく言い換えると「人を思いやる力」ですが、この非認知能力についてよくありがちな勘違いをまずはご紹介します。
育児における「成長」「発達」「認知」とは?
育児においてよく見られる成長や発達、認知という言葉。特に成長と発達はよく混同されて考えられがちな言葉です。しかし、この3つには厳密には違いがあります。
- 成長……数値でわかる身体の変化、身長が伸びた、体重が増えたなど
- 発達……働きや質に着目した心身の変化、手先がうまく動かせるようになった、数字を理解できるようになったなど
- 認知……ものごとがわかること、知覚・運動・学習・判断・記憶などすべてにかかわるもの
このことを考えると、「外遊びは子どもの発達を促す」とよく言われる意味も分かりますよね。子どもの心身を育むものが発達、数値に見えるものが成長、そしてものごとがわかることを認知といいます。認知的な働きは子どもでは特に顕著であり、生活習慣から社会生活などで常に育まれています。
では「非認知」は認知できないってこと?
では、認知の意味を考えると非認知能力とは、「認知できない」という意味を持つと考えてしまいますよね。例えば認知症という病名がありますが、これは「認知が困難になる病気」です。正しくは認知障害と呼べるものであり、認知という言葉だけで考えると誤解を感じる人もいるでしょう。
同じように、非認知能力も勘違いされやすいもの。非認知能力とはヘックマンにより名づけられ、「(研究者にとって)数字でわかる認知能力」「(研究者にとって)数字ではわからない認知能力」という意味を持つものです。非認知能力は「子どもの認知」ではなく、名づけた研究者の立場から見た言葉であることを頭に入れておきましょう。
非認知能力とは、数字でわかる認知能力以外の考える力、社会性や自律性、協調性などさまざまな能力を指します。わかりやすく言うと、IQ以外の力すべてが非認知能力です。
非認知能力は言い換えると社会性や情動コントロールを指す
勘違いされやすい非認知能力。そこで、非認知能力を言い換えることもできます。
この能力を言い換えると、社会性や情動コントロールと呼べるでしょう。大人になってトラブルが勤め先やご近所が起きた場合、どううまく収めるのかは関係者の社会性が問われます。この問題解決能力はまさに非認知能力です。
情動コントロールとは文字通り、感情と行動がきちんと自分で操れることを指します。大人になって怒りっぽかったり感情のままに動いたりするのは、問題を起してしまいがちです。情緒を自分で安定でき、行動をコントロールできる人は非認知能力が高いといえるでしょう。
自由気ままに遊ぶのが非認知能力ではない
お勉強以外の能力である非認知能力は、確かに勉強をする以外の方法で高めることができます。例えば外遊びやごっこ遊びなど、子どもが楽しく過ごす遊びには非認知能力を高める要素がたくさん詰まっているでしょう。
ここにも、気を付けなくてはならない勘違いが潜んでいます。「子どもの好きに遊ばせれば社会性が育つ」「子どもの自由にさせておけばよい」といった考えでは、非認知能力は身につきません。
自由に遊ぶのは、あくまで周囲の人間関係を築くために最低限のルールの上でのみ。そうしないと協調性や自律性は育まれず、自己中心的な考えになってしまうでしょう。確かに子どもに決定権をゆだね、大人はあれこれ口出ししないことは大切ですが「なんでも許される」というわけではなく、ママを含める大人は子どもが周りと足並みをそろえて楽しく自由に遊べるよう見守る必要があります。
注目される非認知能力。高い人の特徴とは?
注目される非認知能力。ではなぜ、このように重要視されるのでしょうか。次は非認知能力が高い人の特徴をご紹介します。
感情のコントロールができる
非認知能力が高いと、自分の限界や行動パターンを正しく理解できます。例えば理不尽な出来事や大きなトラブルが起きた場合、どう解決すればよいのか、自分はどう考えればよいのかがわかるために、感情に流されず適切にコントロールできるでしょう。
非認知能力とは言い換えると「情動コントロール」なので、わかりやすいかもしれませんね。
感情のコントロールができると社会でも「付き合いやすい人」とみなされ、周囲との良好なコミュニケーションが築きやすいです。たとえ学力だけ高くても、このコントロールが不足すると人間関係がうまくいかないこともあります。
他人と正しい距離間で向き合える
対人関係の悩みは、生きている限り尽きません。この悩みを解決するには他人との適切な距離感をしっかり把握する必要がありますが、さきほど説明したように非認知能力が高い人は周囲の人間関係を良好に保ちやすく、他人との距離間も守りながら向き合えます。
社会人になるとこのスキルは特に大切で、一緒に仕事する人との距離間や取引先とのやり取りがスムーズになり、社会的にも成功しやすいでしょう。
自分のご機嫌が取れるため幸福度が高い
非認知能力の高い人は、自分自身を正しく理解できているので、不機嫌なことや不快感があっても自分でご機嫌を取ることができます。感情のコントロールにも通じるものがありますが、そのために人生において幸福度が高くなるという研究結果も出ています。
ママにとって、「自分のご機嫌を自分で取る」というのは大切なことだとよく理解できますよね。落ち込みにくく前向きなので、たとえ困難が起きても適切に対応できるでしょう。
このように数字化できない心の豊かさや社会性の高さが、非認知能力の備わっている人の特徴です。
非認知能力を高めるためには?
幼児教育などにおいて重要視される非認知能力。実は、高めるためには特別なプログラムが必要なわけではなく、日常生活で意識するだけで鍛えることができます。
そこで、非認知能力を高めるために取り入れたいポイントを3つにまとめました。一つずつ見ていきましょう。
非認知能力を高める遊びを取り入れる
非認知能力を高める遊びとは、
- おままごと
- 外遊び(水遊び、どろんこ遊び、お散歩など)
- 絵本の読み聞かせ
- 鬼ごっこやかくれんぼ
などさまざま。これらはいつでもできることで、ささいな遊びから非認知能力を鍛えることができます。
大切なのはこの遊びは、お友達や家族など誰かと一緒に遊ぶことです。周囲の人と協力して遊ぶことで、協調性やコミュニケーション能力が育めるでしょう。
「子どもは6歳を過ぎたから…」といって諦めない
非認知能力は特に3歳~6歳で顕著に伸び、この時期の非認知能力を鍛える教えはとても重要と言われています。また、幼児教育(~6歳)では非認知能力を鍛え、小学校に上がると認知能力にシフトするとよいとも聞くかもしれません。
ですが、幼児教育で認知能力を高めるのが間違いとも言えませんし、非認知能力は6歳以降の学習では育めないわけではありません。どの年齢になっても、極端に言うと大人でも非認知能力を高めることはできるので、子どもが成長したママでも今から始めてみましょう。
親も一緒になって子どもと遊ぶ
最後は親も一緒になって非認知能力を高めるための遊びや考え方を取り入れることです。遊びひとつにとっても、説明したように「誰かと遊ぶ経験」はとても大切。ママと遊ぶことで親子の協調性や絆が育め、互いの理解が進むメリットもあります。
「遊びをさせれば非認知能力が高まるんだから」と子どもが一人遊びをするのではなく、親も一緒に体を動かし遊んでみてくださいね。子どもの豊かな発想力や転換力に気づくことができ、大人の非認知能力を鍛えることにもつながります。
まとめ
何となく勘違いされやすい非認知能力。ですが、言い換えると情動コントロール、社会性となるように、生きるために必要な力全般のことを非認知能力と呼びます。
認知の意識が絶え間なく育っている子どもにとって、非認知能力は重要な要素。家庭でも非認知能力を高めることはできるので、ぜひ今すぐ試してみてくださいね。
【参考】
「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”
非認知能力とは?重要性と大人が高める方法を解説 – 2023/06/13 [Schoo]
【教育動向】「非認知能力」ってナニ? 実は次期指導要領でも重視(1/2ページ) – 産経ニュース
「非認知能力」ってナニ? 実は次期指導要領でも重視|ベネッセ教育情報サイト
非認知能力とは?概要や認知能力との違いをわかりやすく解説|愛知のプリスクール SukuSuku English Preschool