子どもは生まれてから数年の間で、心身共に劇的な成長を遂げます。 3歳までに、脳の80%が作られるなどと言いますが、心理学的には3歳から5歳頃にかけての心の成長は大きなものの1つ。
こちらの記事ではこの時期の子どもの心の発達についてお伝えします。
相手の気持ち
私たち大人にとっては、日常生活の中で相手の気持ちや立場を想像したり察するということは無意識のうちにたくさん行っているほど、生活に密接したスキルです。
ご近所の人にいつも通り挨拶をしたのに、返事が返ってこなかった。そんな時には、「こちらに気づかなかったのかしら」「急いでいたのかしら」「何か気に障るようなことをしたかしら」などと様々な考えが頭の中をよぎるでしょう。
このようなことを考えられるのは、相手の立場に立って「挨拶をされたのに挨拶を返さない」という状況がどうして起こっているのか、その理由や背景にある気持ちや状況を想像することが出来るからです。
この「相手の立場に立って考える」というのは、心がある程度成長していないと出来ないことなのです。
1歳や2歳の子どもが、お友だちのオモチャを奪った時に、「そんなことしたら、お友だちどんな気持ちになる?」という質問をするママがたくさんいます。 これは
- 物事の善悪を教える
- 相手に嫌な想いをさせた時にきちんと謝れる子どもにしつける
- 子どもの思いやりの気持ちを育む
ために、ママがよく投げかける質問です。 「お友だち、どんな気持ちかな?」
この質問、上記の「『相手の立場に立って考える』というのは、心がある程度成長していないと出来ないこと」ということを踏まえると、高度な質問を子どもにしているということに気づくでしょう。
子どもは「心の理論」という他の人の気持ちを推測して、理解する力を4,5歳頃までに発達させると言われています。
つまり、4,5歳以前の「心の理論」が発達していない年齢の子どもに 「他の子はどんな気持ち?」という質問をすることは、子どもにとって超難題をぶつけていることと同じなのです。
中には「うちの子は2歳だけれども、そう質問すると『嫌な気持ち』や『悲しい気持ち』ときちんと答えられるわ。」というママもいるかもしれません。 そのお子さんを直接知らないので、おそらくですが、そういう子は、何度もママから質問された「どんな気持ち?」というフレーズには、「イヤな気持ち」「悲しい気持ち」と答えれば良い、というパターンを学習している可能性が高いです。
質問された時に、その場で相手の気持ちを推測するのではなく、ただパターン化されたやりとりを暗記している、言葉を言ってはいるけれど、理解して言っているのではなく、ただ機械的に言っているだけ、ということです。
ただ、子どもの発達は、個人差が大きいです。4歳よりも前に心の理論を獲得する子どもいれば、小学校入学近くまで獲得しない子もいますので、年齢はあくまでも目安としてくださいね。
心の理論
「心の理論」を持っているかどうかを知るためによく使われるのが「誤信念課題」と言われる質問です。 この誤信念課題の質問も、たくさんありますが、おそらく一番有名な「サリーとアン」についてこちらではご紹介します。
サリーとアン
登場人物:サリーとアンの二人 場面: ある部屋
サリーとアンは初め、同じ部屋にいます。 部屋にはサリーのカゴとアンの箱があります。 サリーは自分の人形をカゴに入れて、部屋を出ます。 その間にアンが人形を自分の箱に移動します。 その後部屋に戻ってきたサリーは、人形を取りだそうとするとき、どこを探すでしょう?
という質問です。
大人の私たちは、当然その答えが「カゴの中」と答えられます。サリーはアンが人形を移したことを見ていないので、サリーは今人形が箱の中にあると知らないので、カゴの中を探すと推測出来るのです。
しかし、この質問を3歳の子どもにすると「箱の中」と答える子どもが多いのです。(4~5歳になると、「カゴの中」と答える子どもが多くなります。) 3歳の子どもにとって、今自分が見て知っていること(人形が箱の中にある)と、サリーがどう思うか(人形はしまっておいたカゴの中にある)ということに違いがあることを理解するのが難しいのです。
まとめ
個人差も大きいですが、おしゃべりが上手な子どもであると、3歳の頃には随分と語彙も増えて、大人とのやりとりもスムーズに出来ることも多く、時には大人が驚くような言い回しや発言をすることもあります。
しかし、相手の気持ちや立場を推測するなどという複雑なことは、まだまだ出来ていないのです。
会話ややることが一丁前になってくると、ついつい大人も同じような目線で会話をしがちですが、その子の心の成長に合わせた声掛けをしていくことが大切です。
「心の理論」が獲得できるのは、4歳以降。それまでは「相手の気持ち」がわからないもの、ということをぜひ覚えておいてくださいね。