べき思考とは、母親ならこうあるべき、子どもとは家族とはこうでなくてはならないという考えに陥るものです。ママがこの思考を持つと日々の生活が制限されてしまい、強いストレスを抱えたり対人関係のトラブルに発展することもあるでしょう。
こうしたべき思考は「認知の歪み」と呼ばれ、心理学では認知行動療法で直すことができます。
今回はママを苦しめる思考について、認知行動療法に基づいた「家庭でできる思考の癖の取り方」をご紹介します。
- べき思考を直したいけれど挫折してしまった方
- 認知行動療法とは何かを知りたい方
- 育児ストレスに悩んでいるママ
- 認知行動療法をわかりやすく解説
- べき思考を直すためにできることをご紹介
- べき思考と育児ストレスの関係性
ママを悩ませるべき思考とは?

育児をするママが気を付けたいのは「育児ストレス」です。育児はどうやってもたくさんのストレスに悩まされますが、心に余裕がないと次に生まれてくるのは、さらに自分を苦しめる「べき思考」と言われています。
まずは本記事のテーマでもあるべき思考とは何かを見ていきましょう。
育児でたびたび起こるべき思考
べき思考とは、簡単にいうと「〇〇すべき」と考えることです。べき思考そのものはだれしも持つものですが、育児中で問題になるべき思考とは、「べき思考に支配された状態」。それ以外は考える余地もないものが、避けたいべき思考です。
- 母親なんだからこのぐらいは我慢して当然
- 子どもだから外で元気に遊ぶべき
- 父親とはこうでなくてはならない
など、自分に対するべき思考はママ自身を生きづらくし、子どもやパパなど周囲に対するべき思考の押し付けは対人トラブルにつながります。
なぜべき思考にママが悩むのかというと、これは理想やイメージが固まっている母親だからという説もあります。幼少期の頃形成された「母親とはこうあるべき」という固定概念から抜け切れず、理論的な考えができない状況がべき思考にとらわれた状態です。
つまり、今子どもにママのべき思考を強制していると、わが子の将来も危うくなります。ママ自身も「自分がこう育てられたのだから、子どももこう育つべき」と考えてはいないでしょうか?
べき思考を手放すと起こるメリット
べき思考は手放すとたくさんのメリットがあります。べき思考は自分の行動や思考を制限してしまうため、手放すと柔軟な考えが持てるでしょう。
また、ストレスを溜めがちな人にとってはストレスに強くなるのもメリットです。「まあいいか」「そういうこともあるよね」と許せると、イレギュラーな経験にも落ち着いて対応できます。
例えば働いているママは「仕事も育児も完璧にするべき」と毎日頑張りすぎてしまうかもしれません。そんなときに子どもが風邪を引くと「自分のべき思考が達成できない!」と強いストレスを感じてしまいます。ただ、子どもが風邪を引くのは避けられることではありませんし、イライラしても仕方がありません。
「こういう日もあるか」と許すことで、育児で感じるストレスはぐっと減るうえ、冷静に状況に応じて行動できます。今育児に強いストレスを持っている方は、もしかするとべき思考が強いのかもしれません。
認知行動療法とは?べき思考にできる対処法はある?

べき思考は「思考の癖」であり、誰にでも起こることで自覚するのが難しいのが特徴です。こうした問題の多い考え方を直すには、認知行動療法を行います。
よく耳にする認知行動療法ですが、べき思考にはどのようにアプローチするのかをここから見ていきましょう。
べき思考とは「認知の歪み」
まず、べき思考は「認知の歪み」です。人はみんな物事を自分なりに解釈して理解=認知していますが、認知が歪むと強い偏りやこだわりが生まれ、客観的に考えられなかったり柔軟性に欠けることがあります。
べき思考も認知の歪みの1つであり、「母親だからこうあるべき」という自分の強いこだわりと偏りが特徴です。この認知の歪みをそのままにしておくと、感情の浮き沈みやストレスによって日々のイライラが強まり、ママが笑顔で毎日過ごせなくなります。さらに、ひどくなるとうつ病やノイローゼの原因になるのも厄介なポイントです。
認知行動療法とは病院・カウンセリングで行う治療法のこと
こうした認知の歪みを修正するのが、認知行動療法です。認知行動療法は病院やカウンセリングで行う治療法であり、投薬などは使わず呼びかけや考え方を振り返りながら行われます。
誰しも自分の考えは正しいと思っていますが、うつ状態や精神が不安定なときは健康時に比べ物事を柔軟に解釈することが難しいです。こうした症状が進行した状態で「べき思考を手放そう!」と思っても難しいもの。そのため、病院の診断や心理士の判断によって認知行動療法が使われます。
べき思考を調整するための認知行動療法の一例
べき思考に対して認知行動療法がおこなわれる一例を見ていきましょう。
例えば「知り合いにばったり出くわした。こちらが挨拶をしたが、相手は気づかず歩いて行った。どう思う?」という事象に対して仮説を立てます。
- 無視されたということは、相手に嫌われているのかもしれない
- 過去に知り合いに自分が言ったことに対して、怒っているのかな?
- 挨拶を返さないなんて、なんてひどい人だ!
- 聞こえていなかったのかもしれないな
このときにとっさに出た思考をすぐ否定し取り除く必要はありません。自分の中の思考の偏りに気づき、事実に基づいたバランスのとれた考え方を目指すのが目的です。
こうした仮説を立てて考えるうちに、見落としていた事実や考えも気づけますよね。ゆっくりと自分の思考を整理し、自分の認知を修正していくのが認知行動療法です。
自宅でできる!自分で行う「べき思考」の治し方

育児ストレスの原因はべき思考かも、べき思考から抜け出したい。そう思ってもなかなか「病院に掛かるまでではないのかも」と悩むママも多いですよね。
認知行動療法は自分で行えます。以下に、自分で行うべき思考の気づき方、直し方をご紹介します。
育児中に起こる「べき思考」を書き留める
まずはべき思考=とっさに出てきた自分の思考を書き留めることから始めましょう。
- 「子どもが朝ごはんを食べなかったとき、完食するべきだと考えた」
- 「夜遅くになってしまったとき、子どもは早く寝るべきと思った」
- 「どうしても夕食を作りたくないけれど、母親だから頑張るべきだと思った」
など、自分を縛り付けるべき思考はさまざまなところにあります。すぐにべき思考を打ち消すのではなく、まずは自覚することが大切です。
1日の終わりに「べき思考」を見直す習慣を
書き留めたべき思考は、1日の終わりに見直してみましょう。
- 子どもがご飯を食べきらなくても、大人でも食欲がないときがあるし仕方ないよね
- 今日くらいは夜遅くなっても、子どもの生活リズムが乱れるわけないじゃない
- 家事が完璧にできなくても大丈夫、また別の日に頑張ればOK
など、柔軟に考えてみるとべき思考のほとんどはちっぽけなことだと気付けます。振り返って考えることで、代替案や気づけなかった事実も見えてくるでしょう。
これを繰り返すことで、自分のべき思考に気づくと自然と心が修正します。「これくらいは大丈夫」と思えるようになると、パパや子どもにも寛容に接することができるでしょう。
体と心のコンディションを整える
最後に大切なのは、気持ちに余裕を持つためには体も健康にすることです。育児中で疲労が溜まり、寝不足や体力不足を感じるときはどうしてもべき思考に陥りがちです。
そもそも、べき思考とは頑張ったママだからこそ陥ってしまうもの。これまで自分はずっと頑張ってきたのだから、一度ゆっくり休む時間を持っても良いかもしれませんね。
心のコンディションを整えるには、まずは体から整えましょう。定期的にリフレッシュする時間を持ち、自分を大切にしてくださいね。
まとめ
育児中のママを苦しめるべき思考。どんなに頑張っても育児が楽に思えない、生きづらさを感じる方の中には、自覚できないべき思考がたくさん隠れているのかもしれません。
認知行動療法は病院でも実施される治療法ですが、自宅でできることもたくさんあります。ぜひ試せるところから始めて、ママが毎日笑顔で暮らすことを目標にしてみましょう。
【参考】
認知のゆがみとは?10パターンの具体例や原因、治し方、チェック【公認心理師監修】 丨コグラボ- Cognitive Behavioral Therapy Lab
認知行動療法~しなやかな考え方でうつ気分やストレスを緩和しよう・とんぼヶ丘クリニックへのブログ|名古屋市天白区の神経科・心療内科