子育て中、「子供の自我が出てきた」「自我の芽生え」などを耳にすることはありますよね。みなさんはこの「自我」とは何かをご存じですか?
「子供の性格?」
「イヤイヤ期のわがままのこと?」
こんな声も聞かれそうですが、実は詳しく知らない方もいるかもしれません。そこで今回は自我とは何か心理学的に分かりやすく解説します。自我の芽生えが起きた子供とどう接すればよいのかも、あわせて考えてみましょう。
自我心理学とは
「自我が強い」「自我が出てきた」と子供の心の変化について使われる自我。何となく「成長過程の一つなんだろうな」と思えますよね。まずは自我について心理学的に少し詳しく解説していきます。
心理学的に見た「自我」とはどんな意味?
オーストリアの心理学者であり精神科医のフロイトは、自分自身を感じる心「わたし」という感覚そのものを自我と名前を付けました。普段意識していませんが、みなさんも「自分自身」という感覚は分かっていますよね。これが自我です。
さらにフロイトは自我に加えて、「超自我」「エス」も心の構造を作る要素だとしています。エスとは本能のまま、欲求のままに働く衝動です。超自我は社会で生きていくために必要な価値観・倫理・道徳を指します。エスと超自我は対極にあり、互いに対立しているとフロイトは提唱しています。
ただし、エスも超自我も考えてみるとどちらも強く出過ぎるとうまく生きていけません。本能のままに行動できない場面もたくさんありますし、社会性や倫理に固められながら過ごすのは窮屈です。ここで程よく心のバランスをとるために自我が出てきます。「自我の目覚め」「自我が強い」と言われるために自我=わがまま・自己中心的というイメージがあるかもしれませんが、フロイトの考えだと社会性や倫理と自分の本能や衝動を結びつけるのが自我なのです。
子供の健やかな成長のために大切な自我
では、子供の自我に戻って考えてみましょう。特に子供のイヤイヤ期がやってくると、「自我が目覚めたから自己主張を始めた」「自我が出てきた」と表現しますよね。
自我の意味を紐解いていくと、これは自分自身の主張や本能に気付き、しかし現実的には「ママからダメと言われた」「どうしても自分の願いがかなえられない」と要望が通らないことにも気付きそのはざまで子供は悩むのです。自我が出てきたというのは、子供が単にわがままを言うわけではありません。心が健やかに成長している証拠なのです。
また、フロイトは超自我とエスどちらかだけでは心を支えられないとも残しています。超自我だけが存在すれば「親のしつけに反抗せず言いなりになって、自分の意見がない人間」になりますし、エスだけだと「衝動ばかりに従って社会性のない人間」になります。
自我は単なる調整役ではなく、人生を活性化させるために大切なものです。子供の自我が出てきたというのは、「子供が大事な成長をした」と捉えて見守ってあげましょう。
自我の芽生えは何歳から?
子供だけでなく大人にもある自我。この自我の芽生えは2歳ごろと言われています。実は自我は生まれたときから存在するもの。しかし、自分で言葉を話すようになり自分で歩くようになる2歳ごろでないと、子供も自我を表現できないのです。
自我が芽生えると内なる衝動と現実とのギャップで、子供の気持ちは不安定になります。いわゆるイヤイヤ期がこの頃で、これまでにない育児の苦労や悩みが出てくるママもたくさんいるでしょう。
次は、この子供の自我とどう向き合っていけばよいのか、子供との関わりで大切な3つのポイントをご紹介します。
自我が芽生えたら子供とどう接すればいいの?
自我の芽生えを迎えた子供は、これまでとは違って要求が複雑になり、また自分でも自我をうまく表現できないことからママとしては困るシーンが増えます。
「やっとお話できるようになったのに、わがままばかり」
「何をしてもヤダヤダばかりで、もうお手上げ」
そう感じる方はほとんどです。
この子供の自我とどう向かい合っていけばよいのか、3つのポイントにまとめてお伝えします。
子供の自我を認めてあげる
初めにやっておきたいのは、子供の自我や要望を一度ママの中で認めてあげることです。例えばご飯の時間に「おやつが食べたい!」と言い出した子供に対して、「ダメよ。ご飯を食べて!」と正論で返していないでしょうか。
もちろんママの行動は間違っていません。ご飯を食べる時間であり、きちんと食べてくれるとママも助かります。しかし、子供はまだ心の成長途中なので自分の意見をそう簡単に変えることはできません。
一度「そうなのね。おやつが食べたいのね」と認めてあげましょう。子供が理解できなくても、声に出すだけできっと伝わっています。また言葉に表せない自我をママが代弁してくれることで、子供も気持ちが満足するかもしれません。
自我のサインを見逃さない
この時期の子育てはとても大変です。ちょっとしたことで癇癪を起したりぐずったり、泣き出したりと子供の扱いに困ることもあるでしょう。さらにきちんと自分の気持ちをお話できれば解決できるのですが、2歳ごろの子供はまだおしゃべりもおぼつかないものです。
できる限りで良いので、なぜ子供が泣き出したのか。その子供の気持ちを分かってあげましょう。
- 「〇〇したかったの?」
- 「これがいやだった?」
- 「じゃあ、〇〇と〇〇どちらがいい?」
など、小さな子供でも分かる言い方で呼びかけてみてはいかがでしょうか。
特に選択肢を与えると、答えやすいです。例えばおもちゃやおやつなど、実際のものをママが二つ持ち「どっちがいいの?指で教えてね」と尋ねてみれば、子供の気持ちが混乱している最中でもコミュニケーションが取りやすいでしょう。
子供に愛情表現を伝え続ける
言葉と行動を尽くしても、子供の言うことが分からない。何をしても響かない!という状況。これももちろん珍しいことではないのです。子供が自己主張を始める理由はさまざまあります。
- 色が嫌だった
- 今眠たい、お腹が減っている
- 単純にママに甘えたいだけ
さらに泣いているうちに、本来の自分の目的を忘れてしまうこともあります。疲れている時や気持ちに余裕がない時にイヤイヤが始まると、ママも「もう何も言いたくない…」と諦めてしまうかもしれません。
それでも、ママはみんな「子供がわざとわがままを言っている」「困らせるために駄々をこねている」のではないと気付いていますよね。忙しくて時間がない時は、子供の自己主張に付き合うのは不可能です。そんな場面でも愛情表現だけは子供に伝え続けてあげましょう。
スキンシップだけでも構いません。2歳ごろの子供は「ママにかまって欲しい」という甘えたい気持ちもあるので、ママが抱きしめてあげるだけでも気分の切り替えがしやすくなります。「ママに甘えたい」という子供の気持ちも、ぜひ受け止めてあげてくださいね。
まとめ
子供の心の成長である、大切な自我の芽生え。自我とは何かを考えると、「大変で苦労の多いイヤイヤ期」も子供にとっては重要な時期だと知ることができます。
大人は無意識に自我をコントロールできますが、自我の芽生えたてである子供にはまだまだ先の話。さらに子供自身は自我の芽生えに気付いていません。
突然のわがままやこだわり、自己主張にママはイライラすることもあるかもしれません。しかし、子供にとって「今は自己表現の練習期間」だと受け止めて見守ってあげてください。また、ママ自身も子供の自我をコントロールはできません。子供のペースで心が成長しているのを、ゆっくり応援できると良いですね。
【参考】