HSCをご存じですか?ハイリーセンシティブチャイルドの略であり、子どもの生まれ持った気質、概念をこう呼びます。
HSCは人一倍敏感。周りからの影響を強く受けやすく、怖がりや不安感が強い子もいます。
そんなHSCにとって、小学校はどんな存在なのでしょうか。今回はHSCが小学校に上がったときに気を付けたいポイント、在学中に起こるHSCならではのお悩みを詳しく解説します。
HSCにとって小学校は「ストレスだらけの場所」
人一倍敏感な子どもであるHSC。結論から言うと、HSCにとって小学校はストレスだらけの場所です。なぜこう思えるのか、HSCの特徴に沿ってご紹介します。
席替えやクラス替えなど環境が変わりやすい
HSCは環境の変化や大勢が集まる場所を苦手とする傾向にありますが、小学校はまさに環境がこれまでとは大きく異なり、1クラス30人程度の児童が集う場所です。自分のペースが乱され、集団生活をしなくてはならないことでストレスを感じやすいでしょう。
HSCを持つ親からは、「月に1度の席替えや2年に1度のクラス替えが特に不安に感じるみたい」という声も聞かれました。隣の子と仲良くなれなかったらどうしよう、先生の目の前の席になったらどうしよう、と怖くなって夜眠れないことも。このように変化に敏感な子どもゆえに、家族が安心できる声掛けを心がけたいものです。
友人関係は高学年になるにつれて複雑に
HSCに限ったことではありませんが、友人関係は小学校高学年になるにつれて複雑になります。お友達のグループができたり、お友達同士でトラブルが起きたり、喧嘩や仲違いも珍しくありません。
このような友人関係の構築段階において、HSCはお友達に言われた一言をずっと引きずり、時には「学校に行きたくない」と親に訴えることもあるでしょう。
友人関係ばかりは、親も介入が難しいです。子どものお友達は低学年のうちは全部把握できていても、高学年になると「誰と仲が良いのか、誰と仲良くしたいのかは分からない」と子どもだけの関係ができていきます。
敏感な味覚だと給食が苦痛になることも
HSCが苦手とするのは、集団生活や環境だけではありません。光や匂い、味覚にも敏感で、特に「みんなが食べる給食」では苦痛を感じやすいでしょう。我が子の好みや特性が分かっている家庭では配慮した食事を用意できますが、給食は個人個人の味覚は考慮されないからです。
どうしても食べられないものがあって、食べ終わるのに時間がかかる。この先ずっと給食が続くのなら、もう学校に行きたくない…。こんな風に給食がネックとなり、小学校に対してストレスを感じる子もいることを頭に入れておきましょう。
HSCを持つ親へ、小学校に入る前に知っておくこと
以上のように小学校生活を考えると、HSCにとっては壁がいくつも現れる段階に入ります。我が子は敏感な子、HSCという自覚があるママにとっては、小学校に入ってから起こるトラブルの多さにびっくりするかもしれません。
そこで、小学校に入る前に覚えておきたいポイントを3つにまとめました。一つずつ見ていきましょう。
HSCの親と情報共有する
HSCは5人に1人の割合で存在すると言われています。今、SNSなどでじわじわ知られている言葉ではありますが、HSCの特徴を知り始めて「うちの子は障害でも病気でもなく、敏感で育てにくいのはHSCが原因なのかも」と思い当たった方もいるかもしれませんね。
HSCに悩むママは、同じように悩むママ・パパもいることを覚えておきましょう。同じ小学校でなくても、ネット上のコミュニティにはHSCの親同士がつながるものもあります。
もし小学校で解決できない問題が起きて困ったとき、同じHSCに理解のある保護者から「ここなら大丈夫だったよ」「このサービスを使うといいよ」と有益な情報をもらえるかもしれません。不安な場合はこのように親同士のコミュニティを広げておくと安心です。
小学校がストレスフルな分、家庭は安心できる環境に
説明した通り、HSCにとって小学校はストレスだらけの場所です。小学生になったんだからそれぐらい我慢しなきゃ!と子どもを励ますのではなく、子どもの不安や怖がる気持ちを共感し、家庭では安心できるようにしておきましょう。
特に小学校に上がりたてのときは、HSCに限らず子どものメンタルは不安定です。いつも以上にお話しする時間を作ったり、子どもに「何か困ったことはない?」と尋ねてみたりするのもおすすめです。HSCでも、家庭が絶対的に安心できる場所なら、小学校内で怖いことや不安なことがあってもストレス解消できます。HSCが苦手とする新しい挑戦や意欲へもつながるので、家庭内でできる限りのサポートをしてあげましょう。
必要なら小学校にHSCの情報共有を
「窓際の光が差す席だと授業に集中できない」「どうしてもこの食べ物だけは食べられず、体調不良まで起きてしまう」といった小学校生活にかかわる問題は、小学校側に伝えておくと安心です。HSCは克服できるものではなく、うまく生活の中で自分自身と向き合って乗り越えるものです。HSCへの理解が浸透しつつある現代ではありますが、小学校に配慮して欲しいことがあれば先生に伝えておくと良いですね。
ただし配慮できる範囲は各小学校で異なるため、情報共有することも選ばなくてはなりません。とはいえHSCを持つ親の中では「小学校に話すことでずっと子どもが過ごしやすくなった」と感じる方もいるため、困ったことは相談してみてはいかがでしょうか。
HSCで小学校不登校になったら?
さまざまな刺激が起こりやすい小学校。HSCの中にはどうしても通うことが難しく、通学しぶりや不登校も問題に上ります。もし、子どもが不登校ぎみになったらどうすればよいのでしょうか。親としてできることを考えてみましょう。
無理やり学校に行かせようとしない
何よりも子どもの意見を尊重し、無理やり通学を強制しないことが大切です。通学しぶりは単なるわがままなのか、それとも子ども自身が乗り越えられないほど悩んでいるのかは判断が難しいこともあります。まずは子どもの気持ちを聞いて、分かってあげることを優先しましょう。
無理に通学させると、子どもがストレスのあまり体調不良を起こすかもしれません。少しお休みすればまた小学校に通えたかもしれないのに、限界を超えたためにその後の意欲をなくしてしまうかもしれません。不安や怖がりは子どものせいでもママのせいでもないので、一度ゆっくり考える時間を作ると良いでしょう。
子どもの意思を尊重する、応援する
小学校の時期である5~12歳は、好奇心や創造性が急激に成長する時期です。この時期をうまく乗り越えることで、大きくなったときの行動力が飛躍的に伸びます。勇気や自信を付ける機会も、小学校の時期は多いですよね。
とはいえまだまだ心配な我が子のこと、ママとしては「こうした方がいいんじゃない?」「こうすればもっと良くなる」とHSCの特性を無視して口出ししたくなるかもしれません。子どもが不登校になって「家で勉強したい」と言っても、「学校で勉強した方が頭が良くなるに決まってる!」と決めつけたくなるかもしれませんね。
子どもの意思や意見は、なるべく尊重してあげましょう。また、「今日は学校に行きたくない」と考えるのも子どもの決断の一つです。ママをはじめとする家族がその決断を応援することで、子どもも通学できる勇気が出るかもしれません。
子どもを理解し、子どもの能力が生かせる場面を見つける
最後は小学校だけが選択できることでもない点です。小学校とHSCの相性が悪いのは、気質上仕方のない部分もあります。また小学校ではたくさんの児童が通うため、その子一人に合わせられない実情もあるでしょう。
もし子どもがどうしても登校できないのなら、フリースクールや付き添い登校、好きな授業だけ参加するというやり方もあります。もちろん現実的に選べないこともありますが、小学校のうちは頑張って通って、中学校から受験して学区を変えることで通えるようになったケースもあります。
このようにHSCでも子どもの能力が生かせる場面はたくさんあるでしょう。ママとしては、不登校になったからすべてを諦めるというのではなく、次に我が子が輝ける場所はどこかな?と探してみてください。一般的な「当たり前」にとらわれるのではなく、子どもの個性を生かして成長をサポートできると理想的です。
まとめ
HSCと小学校。HSCに限らず子どもが小学校に通うようになると、これまでと環境や友人関係が変化して大きなストレスを感じやすいです。親としては、小学校がストレスで溢れているからこそ家庭内でできる最大の応援をしておきたいですね。
【参考】
人一倍感受性の強い気質、HSCの子どもたち 最適な学校選びと環境づくりには 家族と専門家に聞く|学習と健康・成長|朝日新聞EduA
小学校に入る前に知っておきたい! HSCの子育て3つのポイント | 1万年堂ライフ