ヘックマンの「幼児期の非認知能力を育む重要性」をわかりやすく解説!

非認知能力 ヘックマン

「幼児教育は大切!」「非認知能力を高めよう」など、こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか?

幼児教育というと、お勉強を子どもにさせたらいいの?非認知能力って特殊な学び方があるの?と思うママも多いかもしれませんが、これらを紐解いてみるとありふれた「家庭の中でも学べるもの」です。

今回はヘックマンが提唱する幼児教育の重要性、ヘックマンの研究から何がわかるのか、少し難しい言葉をわかりやすくかみ砕いて解説します。

ヘックマンが提唱する幼児教育の重要性とは

奇声 子供

ジェームズヘックマン教授とは、ノーベル経済学賞を受賞した幼児教育の一人者です。ヘックマンは今話題にのぼっている「非認知能力」の重要性を解き、この能力は特に就学前に高めることが大切と結論づけました。

では、非認知能力とは何か、幼児教育とは何を指すのか、またどうして就学前の子どもにとってこれらは大切な要素となるのかを解説します。

6歳までに子どもの脳神経は急成長する

脳科学の研究において、「人間の脳は6歳までに90%完成する」ことが明らかになっています。ユニセフの「世界子供白書」にも、子ども時期の親子関係や会話は子どもの脳の発達に大きな影響を及ぼすと書かれているほど、子どもの成長というのは大変著しいものです。

さまざまな研究によって子どもの心身の成長は大切であることが分かっているため、ヘックマンも「幼児教育は大変重要」と結論付けました。

この幼児教育とは、「0歳から始める英語」や「2歳から数字をしっかり教え込む」といった早期教育ではありません。お友達との付き合い方など社会性、身の回りのことができるようになる自律性など、心身の成長を促す教育を指します。

この幼児教育はどうして子どもにとって大切なのかというと、6歳までに子どもはたくさんのことを吸収し、学ぶ力を持っているから、といえるでしょう。

特に非認知能力を高めることが大切

幼児教育を提唱するヘックマンは、特に子ども時期では非認知能力を高めることが大切としています。

非認知能力とは、IQや学力などの数値化できる能力以外の幅広い能力のこと想像力や発想力、問題解決能力やコミュニケーション能力、協調性などさまざまな力を指します。この非認知能力は学力があるだけでは解決できない人生を幸せに生き抜く力に影響し、能力が備わっていると将来的に成功しやすいともいわれるほどです。

ヘックマンは研究の中で、非認知能力はその後の人生に大きな影響を与えると語っています。そのため、子どものうちから意識して育んでいきましょう、というのが幼児教育の重要性です。

ヘックマンが行った教育プログラムとは

赤ちゃん 遊ぶ

ヘックマンは幼児教育の重要性を語る中で、その根拠を教育プログラムとして行った実験により証明しています。この教育プログラムにはママたちにとっても興味深い結果が含まれているので、詳しく見ていきましょう。

子どもには遊びが大切な要素になる

「子どもにとって大切なもの」とは、誰よりも文字が読めて書けること、計算ができることといった単純な学力だけではありません。もちろん学習能力も大切な指標の一つですが、ヘックマンは特に「遊び」が大切な要素になると論じています。

これを証明するために、ヘックマンが行った「ペリー就学前プログラム」を説明しましょう。

経済的に恵まれない3~4歳の子どもを対象に就学前教育を行い、教育を受けなかった同じ経済状況の子どもと比較した。40歳までの追跡調査をすると、経済状況が同じであったのにもかかわらず、就学前教育を行ったグループは経済的に成功している可能性が高いことがわかった。

この就学前教育=幼児教育とは、勉強ではなく遊びによる自主性を重んじる教育中心です。また、この教育を受けた子どもは、

  • 学歴が高い(大学進学率が高い)
  • 逮捕率や生活保護受給率が低い
  • 6歳まではIQテスト、学力テストの結果が高い

ことも分かっています。

この研究からは、子ども時期の遊びの重要性がわかりますよね。幼児教育とは必ずしも高度な勉強を教え込んだり外国語を学ばせたりすることでなく、思いきり遊びを楽しむことでも将来へのよい影響が生まれるのです。また、学ぶ家庭の経済状況は必ずしも子どもの将来を左右するものではありません。

子どもの学力は家庭環境に依存しない

次は子どもの学力は家庭環境に依存しないことを根拠にした、「アベセダリアンプロジェクト」を見ていきましょう。

子ども111人を対象に、8歳になるまで毎日6~8時間の授業を受けさせ、その後この学習経験がどのように人生に影響を及ぼすかを調査した。

この対象者には低所得層も含まれていますが、

  • 高校卒業率は非グループが51%、参加グループが67%
  • 大学進学率は非グループが14%、参加グループが35%

と学歴が高くなる傾向が結果として出ています。

研究からは低所得層でも幼児教育によって学習能力を高めることは十分に期待でき、家庭環境は関係なく教育次第で子どもは大幅な成長が見込めると言えます。

このようなプロジェクトを経て、ヘックマンの提唱する「幼児教育の重要性」は信ぴょう性の高いものとなりました。

ポイントとしてどのプロジェクトでも、「家族ぐるみで教育に対する意識を高める」ことを徹底しており、家族みんなで子どもの教育と向き合う重要性を裏付けています。

子どもは親が思う以上に潜在能力がある

子どもとは、親が思っている以上に潜在能力を持っています。「うちはお金がないから」「お勉強ができる子ではないから」といって、親のほうが子どもの可能性を諦めていないでしょうか?

子どもの能力は、家庭環境や経済状況には依存しません。また、どんな子でも能力を高められるとその後の人生は前向きに生きやすく感じるようになります。このような結果からみると、幼児期から非認知能力を鍛える大切さがよくわかるでしょう。

非認知能力を高める3つのポイント

ダブルバインド

では、非認知能力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。この能力を育むためには、勉強をたくさんするといった学習能力へのアプローチとは違う方法が必要です。

ヘックマンはこの点を3つのポイントにしてまとめています。一つずつチェックしていきましょう。

主役は子ども。自主性を大切にする

非認知能力を高めるためには、子どもの自主性を尊重することが大切です。この自主性が高められると、探求心や自己肯定感の向上が見られ、大人になってから自分の意思を持ち意欲的に行動できる人間になります。

「子どもの自主性を尊重するには?」と悩むママもいるかもしれませんが、これはとても簡単なこと。「子どもを否定しない」だけでよいのです。もちろんしつけやルールを教える際には、「それはやったらダメ」と否定が必要な場面もありますが、やみくもに子どものすべてを否定するのではなく、ある程度の自由を子どもに与え、選び抜く力を育てることが重要です。

「それは危ないからダメ」「今時間ないからやらないで」など、子どもの意欲を無視した声かけはおすすめできません。もし否定する場合は子どもに「なぜいけないのか」を話し、説明したうえで「どうしたらいいのか」を一緒に考えるとよいでしょう。こうしたママが正解へと導くサポートをすることで、子どもの自主性は高まります。

お友達、きょうだいや親子遊びを増やす

非認知能力を高めるには、家族やお友達といった身近な人とのふれあいが重要です。

例えば人とのかかわりあいで、子どもは多様性を学びます。また、誰かと一緒に協力し成功した体験では、自己効力感や協調力も育めるでしょう。

小さなうちから誰かと一緒に協力して遊ぶというのは難しいため、親子遊びを増やすだけで構いません。ママと一緒に遊びさまざまなことを学ぶ中で、親子の絆や相互理解も高められます

ママは子どもに愛情をたっぷり注ぐ

非認知能力向上のために大切なポイントとは、大人が愛情をもって子どもに接することです。親からの無償の愛を受け取ると、子どもは安心して成長できるでしょう。懸念なく心が育つので、自分にも自信がつき、自己肯定感の向上にもつながります。

まとめ

ヘックマンの提唱する幼児教育の重要性とは、非認知能力を早期的に育む大切さが含まれています。ただ、幼児教育時期を過ぎたからといって非認知能力がまったく育たないわけではなく、大人でも非認知能力を高めることはできます

大切なのは、ママとしてできることは子どもの成長をサポートし、見守ることです。難しそうに思える非認知能力ですが、実はちょっとした意識で高めることができるため、ぜひ今日から試してみましょう。

【参考】

なぜ”6歳”か ~人間の脳は6歳までに90%完成する~ | 3歳からのグローバル教育に迷ったら。子どもの生きる力を育む教育専門家 エグゼクティブサポート コンサルティング ベビーシッティング 国際マナー|せかいく

ヘックマンが提唱する「幼児教育の重要性」とは|根拠となる研究も | 受験のことならお受験ナビ

【研究員レポート】意外と知らない”非認知能力”(1) – 内田洋行教育総合研究所

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。