「考える力」とは「哲学思考」のこと。“子どもの哲学”を一緒に考えよう

幼児 親子関係

「哲学思考」というと、ママたちはどう感じますか?難しそう、頭のいい人しか理解できない、哲学って何?など、さまざまなイメージを持ちますよね。

哲学とは有名な「我思う、ゆえに我あり」という哲学者デカルトが語るように、人間は考えるからこそ存在するという、人にだけ許された「思考そのもの」を指します。つまり、考える力とは哲学思考といえるでしょう。

では、子どもの考える力=哲学思考を育むにはどうしたらいいの?という疑問を、スタンフォード・オンラインハイスクールの校長を務める、哲学博士の星 友啓先生著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』を参考に解説します。

わかりやすい言葉でご紹介するので、哲学に苦手意識があるママも参考にしてみてください。

『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』著:星 友啓

この記事は以下の方におすすめです▼
  • 考える力を子どもに身につけさせたいと思うママ
  • 4歳~10歳のお子さんのママ
  • 考える」という意味を簡単に知りたい方
この記事は以下の情報が得られます▼
  • 考える力と哲学思考の関係性
  • 哲学思考とは何か、子どもにとって哲学が大切である意味
  • 4歳からできる「考え方」のトレーニング方法

哲学思考ってなに?

アドラー 親子関係

考える力を構成するものであり、土台にもなっているのが哲学思考です。

哲学とは、

当たり前の常識や自分の考えの前提になっている枠組みを批判的に吟味して、新しい価値観や世界観を模索する心の営み

『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』著:星 友啓

を指します。

端的にいうと、「考えること」が哲学思考ですが、今回参考にする星先生の考えをまとめると、「自分が無意識に思っている思考を、本当にこれでいい?と考えて選択する」といった意味になります。

哲学思考、子どもには早いのでは?

哲学思考の意味を知ると「子どもには早いでしょ」と思ってしまいますよね。まだまだ子どもは自分の主張や意見に、倫理観や信念を持っているとは思えません。自由に選びたいものを選択しているような気がします。

しかし、最近の研究では未就学児でも哲学的な思考ができることが判明しました。非認知能力を育む育児など、子どもの哲学的な思考をサポートすることも推奨されています。

具体的に何歳から始められるのかというと、なんと4歳から。小さなうちから哲学思考を意識することはできますが、何歳から始めても、ママが哲学思考を学ぶことだって「遅い」ということはありません。

哲学思考がなぜ「今」求められるの?

なぜ、考える力である哲学思考が求められるのでしょうか。学習指導要領にも盛り込まれた「生きる力」「考える力」は、現在のめまぐるしくかわる社会の性質が背景にあります。

社会の仕組みや共通認識は、ママが生活するだけでも十分に「変化が激しい」と感じますよね。この先も膨大な情報が交差する中、子どもたちは将来的に自分の価値観や世界観を生み出し続けないといけません。

多数の選択肢がある世の中で、考える力が足りないと「流されるだけ」の子になります。極端な表現になりますが、例えお勉強ができたとしても「ルールに合わせて無難に生きる」ことしかできません。ではどうすればよいのか、というと考える力、哲学思考を使って、激しく変化する社会の中を生きていく必要があるのです。

少し難しい考えですが、哲学思考が求められるのは今の生き方は昔と比べてずいぶんと自由になったから。よい傾向ではありますが、決められたルール通りに生きるのではなく、自主的に何がしたいかを意識できると子どもも豊かな人生が送れるはずです。

哲学思考が子どもに与えるものとは?

哲学思考は具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?

まず、考えることができれば論理力や推論力が上がります。物事への理解が深まるという意味です。「考える」という頭のトレーニングをするため、柔軟な思考も持てるでしょう。

哲学で複雑な考えを読み書きすると、文章力や相手の言うことを理解する力、自分の考えを発信するコミュニケーション能力も高まります。

さまざまなメリットがあるため、子どもの哲学思考を育むことが推奨されているのです。

ママも一緒に「子どもの哲学」を考えよう!

自動思考 チェック

では、子どもの哲学を親子で考えてみましょう。どうすれば哲学思考が鍛えられるのか、ママも一緒に行うトレーニングをご紹介するので、一度家族で「考える力」について話し合ってみるのもおすすめです。

哲学思考をサポートするママが見せる姿勢

考える力を育む親が見せる姿勢とは、何も高い学力や高価な教材を買い与えるといった、そうした教育ではありません。

子どもは親の背中を見て育つといいます。実は、ママが想像するよりもずっと子どもは親を観察し、同じような考え方や行動になる傾向があります。

つまり、子どもの哲学をサポートするには、ママのほうから行動や意識を変えてみましょう。

積極的に見せたい姿勢

子どもに積極的に見せたい姿勢とは、

  • 「これは何だろう?」調べてみよう、という問いと考える姿勢
  • 「どうしてこうなるんだろう?」理由や根拠を考える姿勢
  • 「なるほど、そうとも考えられるよね」他の考えを認めて親身に聞く姿勢

ママの生活は毎日大忙し。いつでもこのような「心に余裕があるママ」でいられるわけではありませんが、意識するだけでも変わってきます

例えば子どもが「このお花はなんて名前なんだろう?」と疑問を持ったとき「なんでもいいでしょ」「知らないわよ」とそこで思考を止めるのではなく、「なんて名前だろうね?」「なんでこんな形をしているのかな?」とコミュニケーションの一環にできるとベストです。

こうした姿勢をロールモデルとして提示しながら、あわせて避けたい姿勢や言動は避け、子どもの哲学思考に水を差さないようにしましょう。

避けたい姿勢

NGなママの向き合い方とは、

  • 0か1かで考える
  • 自分の考えをいきなり押し付ける
  • 知ったようなそぶりをする、知ったかぶりする

子どもの思考はとても豊かで、大人がときにはっとするようなものもありますよね。こうした考えを「ありえない」「そんなことはない」と、正誤だけで判断し打ち切るのは避けたい言動です。

また、いくら子どもに哲学思考を持って欲しいからといって、求めてもいないのに突然哲学を押し付けるのはNG。学んでほしいことがあるのなら、なぜこの話をママがするのかを子どもに伝わるように説明し、一方的ではなく話し合いながら進めましょう。

4歳からできる哲学エクササイズ

哲学思考は4歳から理解できます。簡単な遊びの中で育めるため、以下の哲学エクササイズを試してみましょう。

  • 例えば何?ゲーム:赤くて丸いものはなあに?足の速い動物ってだあれ?
  • 同じところどこだ?ゲーム:リンゴとメロンの同じところはどこだ?
  • ポップクイズ:桃太郎を読み聞かせしたあとで、「桃太郎はどこを流れてきたかな?」と質問する

このエクササイズはすぐに答えなくてはならないスピードを競うものでもありませんし、答えはいくつもあります。

例えわからなくっても答えに詰まってももちろんOK。大切なのは、この年齢から哲学思考をなんとなく身につけて触れておくことです。

小学生になったらやりたい思考クイズ

小学生になると、少しステップアップした思考クイズで哲学思考を育みましょう。

  • 目的さがし:「信号機ってなんであるんだと思う?」
  • 証拠さがし:「今日の晩御飯は鳥のからあげです。証拠はどこでしょう?」
  • 定義と例外:リンゴの特徴を3つあげてもらい、他にも当てはまるものがないかを探す

こちらも4歳さんからできる哲学エクササイズと同じく、答えがいくつもあるクイズです。スピードを重視するのではなく、親子で話し合い意見を出し合いながら哲学思考に触れてみましょう。

子どもの想像性は無限大です。思考クイズでは思いもよらない意見が出るかもしれません。先ほどご紹介した積極的に見せたい姿勢を意識して、ぜひ楽しく取り組んでみてくださいね。

まとめ

哲学思考というと、なんだか難しそう…と思ってしまうもの。ママ自身もよくわからないと避けてしまいそうになりますが、実は身近な考える力の根本です。

さらに、子どもの思考を覗いてみるよいチャンスになることも。親子のコミュニケーションで「考える力」はたくさん育めるので、ぜひママも子どももチャレンジしてみてくださいね。

【参考】『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』著:星 友啓

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。