「子どもに任せる子育て」障害のある子にはどう対応する?特別なわが子への向き合い方

学習障害 ADHD 自閉症スペクトラム障害

当ブログでもたびたびお伝えしてきた、脳科学の視点から見る「子どもに任せる子育て」。これらは『セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』 ネッド・ジョンソン、ウィリアム・スティクスラッド著を参考にしています。

数ある育児の指南書、サイトやSNS上の情報でも「うちには通用しない」と考える方がほとんどです。今回は特にそんな困難を覚えやすい学習障害、ADHD、自閉症スペクトラムの子への向き合い方を解説します。

本記事はすべての特性のある子に対しての最適解を伝えるものではないため、専門機関との付き合い方や特別な支援を受けるための参考としてご活用ください。

この記事は以下の方におすすめです
  • わが子に上記の障害を持つママ、特性がある子のママ
  • どの育児指南も「うちの子向けではないかも」と諦めているママ
  • 一般的な育児法ではこれまで通用しなかったママ
この記事は以下のことがわかります
  • 学習障害、ADHD、自閉症スペクトラムの子が「コントロール感」を得るために必要なこと
  • 子どもに対して、特別な支援を与える方法や専門機関を利用する考え方
  • コントロール感を得るための子どもとの向き合い方

「コントロール感」を与えるのに不適切な子はいない

空間認識能力

子ども自身が自分のやりたいことを自覚し、目標を持って達成までの方法を考え、自ら行動するというコントロール感。これを取得すると子どもの人生はとても豊かになり、多様な困難が待ち受ける現代でも幸福度を保ったまま過ごせるといいます。

しかし、このコントロール感は特性を持った子は望むべきではないのか、というと結論として特別な子こそコントロール感は必要です。まずは、障害のある子とコントロール感のつながりを考えてみましょう。

学習障害・ADHD・自閉症スペクトラムの子には課題がぐんと増える

学習障害やADHD、自閉症スペクトラムの子には、コントロール感を与えるべきではないかというとその逆です。特別な支援が必要であり、親は周囲から「特別な子育てをするべき」と常に思われているという重圧があるからこそ、子どもの意思に耳を傾ける必要があります。

ただ、当ブログでもたびたびお伝えしていたコントロール感、自律心の確立は、障害の有無にかかわらず身につけるのは難しいものです。ママでさえ、育児は完璧にできないはずなのに、子どもをコントロールし「いうことを聞かせよう」としてしまいます。

この点は、障害のある子にとってはより課題がぐんと増えるのは確かです。しかし、難しいからといってコントロール感を与えることを諦めるべきではなく、どんな年齢の子でもどんな特性を持つ子でもコントロール感を意識することは必要です。

コントロール感を諦めるべきではない

これまで、特性のある子を育てるママは「一般的な育児方法は我が家には通用しない」「流通する育児本は参考にならない」と思っていたかもしれません。確かに、特性に応じてわが子と向き合う必要があり、その子に響くやり方や言葉は限られるのは実情です。

しかし、こうした特性を持つ子ほど、「何がコントロール感を妨げているのか」を親が理解し、注意深く考える必要があります。コントロール感が得られると、ママと子どもの意思疎通がしやすくなり育児が楽になるだけでなく、子どもは「自分で決めて良い」と自信を得ることにもつながります。こうしたコントロール感の取得は、障害の有無は関係なくすべての子に適したアプローチだと言えるでしょう。

学習障害の子へのアプローチ

自己否定 止まらない

不得意な分野に対して強い自信喪失を感じさせる学習障害。この障害には特別なアプローチが必要です。コントロール感を得るためにできる3つのポイントを見ていきましょう。

介入を本人の意思に任せる

一切の介入が必要なく、決められたカリキュラムだけで成長できるかというと、学習障害の子に対してはそうではありません。特別な支援が絶対に必要です。

しかし、ここで親が強制するのは推奨されていません。介入はたいてい本人の意思に反して行われ、介入方法に子どもが選択の余地がないことがほとんどです。

親や周囲の大人に強制されると、どんな子でも反発します。まずは子どもに「どんな手段が心地良いのか」「どういうやり方だと続けられるのか」を選ばせることから始めると良いかもしれません。

「できること」を広げる学習方法にする

学習障害は得意と不得意の凹凸が大きいため、不得意なこともあれば得意なものもあるでしょう。この不得意を得意に変えるのではなく、不得意を得意でカバーする方法がおすすめされています。

少し前であれば、タブレット学習や読み上げ機能のある教科書は存在しませんでした。今ではさまざまなやり方があり、ここではテクノロジーの力も借りながら、まずはいろいろな方法を試してみましょう。

自己理解を促す、学習障害をわかりやすく説明する

「自分の子に学習障害のことを話していない」という家庭は、実は多いです。しかし、これもコントロール感を得るには自己理解が必要といえます。

まずは子どもに「あなたはこういうところが苦手なの。でもそれは、どうしようもないこと」と事実を話しましょう。さらには「苦手なものは好きなもので補う」ことも提案してみると良いかもしれませんね。

決して簡単なことではありませんが、「コントロール感は強制しなければ得られる」ことを念頭に、子どもがまずは選ぶのを第一に考えてみましょう。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の子へのアプローチ

学習障害 ADHD 自閉症スペクトラム障害

ADHDとは、注意欠陥多動性障害を指します。どのような課題が出るのかは個人差がありますが、ここではADHDの子に対して有効なアプローチをチェックしていきましょう。

脳で起きていることをわかりやすく説明する

ADHDに気付くのが、「大人になってから」「自分で病院に通い始めてから」という子は多いです。できれば、ママを含める周囲の大人がいち早く障害に気が付き、「この子の脳では何が起きているのだろう?」という点を知ってあげましょう。

さらに、何が起きているのかをわかりやすく説明します。まずは自分事としてADHDを説明することから始めましょう。

瞑想を最も簡単な方法で行う

注意散漫になる、うまく集中できないというADHDは毎日がストレスのたまることばかりです。まずは自分の行動や思考を妨げるストレス解消を第一にし、子どももママも一緒に瞑想などを行いましょう。

この通りのやり方でなくても、ただ数秒から始める瞑想でも構いません。慣れてきたら次第に時間を伸ばすと、精神力の向上につながります。

適切な支援があることを教える

ADHDの研究は年々進んでおり、世間の理解も浸透しつつあります。まだまだの部分もたくさんありますが、適切な支援があることを知り子どもにも伝えましょう。

このとき、親としては「この支援を受けるべき」と強制したくなりますよね。けれども、どんな支援をどういったように受けるのかは、子どもが決定する権利があります。

ママとしてできるのは「〇〇ができるようになりたい?」「じゃあ、〇〇という支援はどうかな」と言った風に、コンサルタントになって子どもに提案することから始めましょう。

自閉症スペクトラムの子へのアプローチ

自閉症スペクトラム障害とは、社会の理論を理解することが苦手で、その場に合わせた適切な行動がとりづらいために困難を感じます。こうした子への対応を見ていきましょう。

ストレス解消の練習を取り入れる

どの障害にも言えますが、ことさらASD(自閉症スペクトラム障害)の子はストレスフルな毎日を送っています。社会で生きる必要があるのに理論がわからず、手探りのまま毎日を過ごしているためです。

リラックスできる方法がその子の中であれば、あるいは見つけてあげることができれば、積極的に取り入れましょう。さらにそのストレス解消を練習し、子どもが自分でできるようになるとベストです。

その方法は続けられるものに限りますが、いろいろな手段を試してみることから始めても良いかもしれません。

子どもが強い興味を持つものは積極的に取り入れる

子どもが強く興味を持つものがあれば、生活に取り入れるべきです。興味を持つ対象がかなり狭い分野のものになるかもしれませんが、「こればっかりやらないで!」と大人が普通を押し付けるのはおすすめできません。

子どもの頃に興味を持つものに出会っておくと、その興味がストレス解消につながり、大人になってからこの興味の分野で活動しようと思えるコントロール感につながります。ASDに関係なく、子どもの「好き」を大人が選択し調整するのは、コントロール感の喪失につながります。

困難な状況にあっても「ママのストレス」は解消し続ける

ASDの子は特別な支援が必要です。年齢によっては親がずっと付いていなくてはなりません。こうしたASDのママ達は「自分のことは後回し」「子どもを差し置いて幸せになるのはダメ」と決めつける傾向にあります。

子どものストレスを解消するには、まずはママから健全な精神状態を持つべきです。例えストレス解消が難しい場面でも、自分のストレスには目ざとく意識を向け、解消することがママのできることです。

まとめ

どの障害も個人差が大きく、一概に「コントロール感を得るにはこの方法」と決定することはできません。けれども、それはその子それぞれの個性であり、障害の有無に限らず困難や課題は出てきます。

最も大切なのは、わが子にとって最も良い方法を探り続けること。「こうするべき」と強制しないこと。「この子にはこうするべき」と思い込まないマインドセットです。今すぐには難しいかもしれませんが、ぜひ少しずつ生活の中に取り入れてみてくださいね。

【参考】

『セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』 ネッド・ジョンソン、ウィリアム・スティクスラッド著

ABOUT US
【監修】久保田 由華久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。