育児をしていると常にぶつかるのが、「子どもにどう生き方を教えればいいんだろう?」という疑問です。どうしつければよいのか、どうすればわが子が良い子に育つのかを考えるママがほとんどですよね。
今回は、そんな子どもの育て方を脳科学の視点から見た解釈をご紹介します。
なぜ、子どもは親の言うことを聞いてくれないのか。子どもにとっての親が与えるストレスとは何かを解説します。
今子育てに壁を感じているママ、子どものしつけや育児をどうすればよいのか分からないママはぜひ参考にしてください。
本記事は心理学者ウィリアム・スティクスラッドと教育者ネッド・ジョンソン著『セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』を参考にしています。
- 子どもに対してあれこれ口出ししてしまうママ
- 育児がうまくいかないと感じるママ
- 育児に対してストレスを感じているママ
- 親の口出しに対して子どもが感じるストレス
- なぜ子どもは親がコントロールできないのか、その理由
- 子どものストレスに対して親ができること、向き合い方
子どもが最もストレスに感じること

みなさんは、「親は子どもに口を出してはいけない」「命令しない、指図しないで」といった育児指南を見たことはないでしょうか。
実は、この「親が子どもをコントロールしてはならない」ことは当ブログでも繰り返しお伝えしています。
まずはなぜ親は子どもに指示を出してはいけないのか、その理由から見ていきましょう。
生活の中でストレスを引き起こすものとは
結論からいうと、子どもにとって最大のストレスとは「コントロール感を失うこと」です。
コントロール感って何?と思うかもしれませんが、ママなら一度は経験があるはず。例えば乳児期の赤ちゃんと一緒に暮らす中で、ママは自分の食事や睡眠がままならないことを知っていますよね。「(育児をするために)自分の意思で自分のことができない」というのは、最大のストレスなのです。
子どもにとってもこれは同じで、なぜ大人が子どものためを思ったとしても「必要以上の口出しをしてはならない」のかというと自分のコントロール感を失い、大きなストレスを感じるからだと言えます。
このストレスは、『セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』では以下のように分類されます。
- Novelty(真新しさ)…以前に体験したことがないこと
- Unpredictability(予測不可能性)…想像できない事態に陥ること
- Threat to the ego(自我への脅威)…人としての安全や能力が確保されないこと
- Sense of control(コントロール感の欠如)…状況を自分でコントロールできないこと
子どもに「自分で」させているか
ママとしても経験がある「自分の思い通りに行動できないストレス感」。これを知らずに子どもに与えているとすると、今すぐにやめておきたいですよね。
ただ、育児中のママはみんな「子どものためを思って」しつけをし、学習を促し、子どもを行動させます。ここにストレスを与えないようにするには、
自ら子どもが動くようにサポートする
ことが大切です。
例えば、朝の身支度を「時間がないから!」とママが先回りして準備していないでしょうか?子どものお手伝いの機会を奪い続けているかもしれませんね。
子どもに何かお願いをするときや、毎日の支度などの生活周りのことは、ママがやるのではなく子どもにさせてみましょう。大人にとってひやひやする行動かもしれませんが、子どもに少し任せるだけで「コントロール感」が得られるのです。
子どもに「選択」させているか
さらに子どもにさせたいのは、「選択」です。
先ほど朝の身支度を例に出しましたが、とはいえ未就学児に「自分で着替えて朝ごはんを食べて。食べ終わったらお皿を片付けるのよ」と言っても最初からうまくいくはずがありません。
そこで、「何かひとつは自分でやってみて」と子どもに選ばせるのです。
お着換えは自分でやる、洋服選びは自分でする。朝ごはんのフォークやコップを出すのは自分でできるから準備する、というふうに、子どもが何をするかを「選択する」機会を増やしてみましょう。
“ストレス”って何だろう?

次は、子どもが受けるこの「ストレス」について中身を詳しく見ていきましょう。
ママとしての願いは「子どもがストレスを受けないように」と思うばかりですが、しかしそれでは育児が成り立たない場面もあります。
そこで、ストレスって何だろう?と一度考え直してみましょう。
子どもが受ける3つのストレスの種類
実は「ストレスは全部が悪い」かというとそうではありません。成長の中で経験するべき必要なストレスもあります。
子どもが受けるストレスには3種類あり、
- 適度なストレス
- 許容可能なストレス
- 有害なストレス
以上に分けられます。
適度なストレスとは、発表会やスポーツの試合などで感じるストレスのこと。一時的にストレスがかかりますが、開放されると爽快感や達成感が得られます。許容可能なストレスは、例えば小さな子が保育園に行くたびに「ママ!」と求めて泣くときのストレスです。回復できる範囲のストレスであり、成長の中でストレスに対する抵抗力を作るためにも必要と言われています。
最後は長期的に避けられないような、有害なストレス。このストレスは子どもに対して与えるべきではなく、もっと怖いことに「親の口出し」も含まれるものです。
ストレスを受け続けるとどうなるの?
有害なストレスを受け続けると、最終的には脳が傷つき「学習障害」「攻撃的になるなどの行動障害」「不安やうつを感じやすくなる」といった症状がでます。
このブログでも、親が子どもに不適切な養育をする=口出しし続ける、怒鳴るなどで脳が傷つくことをお伝えしました。
このストレスフルな脳の状態は「ライオン猟師(ストレス反応システム)」と呼ばれます。
これは野生のライオンがサバンナで生きるために必要な能力ですが、いつ危険が迫ってくるかわからないジャングルでは必要なストレスであっても、現代の治安が守られた日本で暮らす子どもにとっては必要のないストレスだといえますよね。
さまざまな情報と適度なストレス、許容可能なストレスが繰り返される世界を生きる子どもにとっては、親はストレスを取り除き子どもに「コントロール感」を与える存在が望ましいです。
子どものストレスにママができること

これまで子どものストレスやコントロール感を解説しましたが、ここまで知ると「いかに親が子どもをコントロールする行為がNGか」がわかります。
最後に、ならばママはどのように子どもと向き合えばよいか、3つのポイントをチェックしていきましょう。
ストレスを正しく理解する
まずは、ストレスを正しく理解することです。
「子どもを甘やかしていては育たない」のはその通り。大人の協力がなければ、適切なストレスへの抵抗力も身につきません。
ただし、先ほどもあったように「親が良かれと思って子どもに与える行動」が有害なストレスになる可能性にも注意が必要です。この世で最もストレスに感じるのは何か、ママのあの経験を活かして子どもにも与えるべきではないことを再認識しましょう。
子どもをコントロールしない、守り切ろうとしない
次に、子どもをコントロールしないこと。子どもは親の言う通りには育ちませんし、どんなに言葉を尽くしてもお金をかけて学習機会を与えても、子どもの生き方は大人がコントロールできるわけがありません。
同時に「私が言わなきゃこの子を守れない」という思いも、少しずつ手放せるとベストです。
幼いうちはママがすべて面倒を見ることができたかもしれません。しかし、すぐに子どもは親の知らないコミュニティを作り、自分の意思で生きるようになるからです。
子どものすべてを守り切り、管理しようとすると、次はママが大きなストレスを抱えるようになります。
子どもの不安に「あなたはできる!」と声かけを
最後に、子どもがママの指示なしでは何もできない。万能感が得られないというのであれば、そのとき親が取りたい行動は「代わりにやってあげる」のではなく「子どもを信じてあげる」ことです。
「絶対にあなたはできる!ママはそう信じているよ。失敗しても大丈夫。絶対にママは味方だよ」と声かけをしてあげましょう。子どもはセルフコントロールを見失うことなく、自分の力で壁やストレスに立ち向かえるはずです。
まとめ
子どもが言うことを聞かない、自分の思い通りの育児にならない、「良い子」に育たない…。これらは本当に子どものためになっているのでしょうか。
ただ、ママが子どもに口出ししたりあれこれお世話をするのは、子どもを大切に思うからこそです。まずは「子どものことを信じられているか」を確認しながら、適切な親子の距離を見つけていきたいですね。
【参考】
『セルフドリブン・チャイルド 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方』 ネッド・ジョンソン、ウィリアム・スティクスラッド著