育児をする中で「自律性」という言葉を目にするママも多いです。この自律性とは、自ら進んで行動する、感情を持つことを指します。
子どもにとってやる気や根気、好奇心を育てるためには、基礎としてこの「自律性」が大切なのです。
今回はスタンフォード・オンラインハイスクールの校長を務める、哲学博士の星 友啓先生著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』を参考に、自律性って何?なぜ大切なのか、子どもの自律性を育むための要素とステップを学んでいきましょう。
- 「うちの子はいまいち何事もやる気がない…」と悩んでいるママ
- 結局、育児で大切な要素は何?と思っているママ
- 最新育児の考え方、子どもへの接し方を模索しているママ
- 自律性とは何か、よくある勘違いも解説
- 自律性を育む要素と呼びかけ方法
- 子どもが嫌がることを克服するためのステップを解説
そもそも自律心とは?なぜ大切なの?
今回の記事では「自律心」について詳しくお伝えします。まずは自律心とは何か、なぜ大切なのかをチェックしていきましょう。
あわせて、よく勘違いされがちな要素も解説します。
自律心とは
自律心とは、自律性や自発性、主体性、積極性などさまざまな呼ばれ方をしますが、ここではそれらの意味の違いは特に関係ありません。
広い意味での「自律性」とは、誰かに強制されたり、支配されたからではなく、自分の意志や判断に基づいて、自分からやり出そうとする心の働きのことです。
『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』著:星 友啓 第1章考える力の新レシピ p.22
ママたちはつい子どもを心配に思うあまり、「これをさせよう」「これも教えないと」と押し付けてしまいがちです。子どもの自律心に任せると、判断や行動が危うくてひやひやすることも多いです。
しかし、自律心とはすべてのやる気の源です。子どもが自ら考えて選ぶと、よりその分野や行動、感情は前向きになります。大人にも
想像できない子どもの能力を引き出すには、自律心を基本に考える必要があるのです。
自律心はなぜ大切なの?
自律心を持つと起こる効果は、さまざまな分野で研究されています。具体的な例を挙げると、
- 幸福度や自己肯定感が上がる
- 社会貢献の気持ちが増す
- 好奇心とやる気が強くなる
- 自信がアップする
- 成績が上がる
- 学校が好きになり、学業や課外活動に積極的になる
また、これらを見ると「大人が子どもをコントロールしているみたい。子どもは勉強を好きになるわけないのに」と受け止めてしまう方ももちろんいます。そこで、「自律心」が大切になるのです。
大人でも、嫌で苦手なことを生活や家族のために乗り越えなくてはなりません。この克服するときに、自律心があると苦しまずに物事を達成できます。
「成長したんだから仕方ないでしょう」「学校は行くべきもの。社会貢献はしなくちゃダメ」と押し付けることを、ママならみんなさせたくないですよね。こうしたハードルを乗り越えるために、子どもの自律サポートは大切な要素です。
自律心にありがちな勘違い
自律心とは「子どもが自ら進んで起こす気持ち」です。ここでよく起こる勘違いが、「自律心=自分勝手」「子どもの自由にさせるとよいのだから、叱らない、関与しない、好きにさせる」というもの。
自律心とは、自由や自分勝手とは違う概念です。
決して放任主義が作るものでもなく、自律心を育てるには親子の相互理解が必要です。ママも「子どものことをもっと知りたい」と自律性を見せることで、子どもにもその行動は影響します。
自律心を育むための3つの要素とは
「子どもを放置するのはNG」「でも、強制するのも違う」などなど、自律心を培うのは少し難しいものです。それほど繊細な要素ですが、実は自律心は大人も子どももみんな最初から持っています。
大切なのは、いかに引き出してあげるかです。ここでは
- 共感
- 説明
- 決定
の3つを使って、子どもとのやり取りの中で自律心を育てるポイントをご紹介します。
「ああ、わかるな」「そうだよね」
まずは、共感です。子どもが何かに苦手意識や意欲がないことを示したとき、つい「やらなきゃダメよ!」と突っ返していませんか?ここでは、共感することで自律心を刺激します。
ママは子どもの話をきちんと聞いて、「嫌なんだね」「そうだね、大変だよね」など一度は受け入れましょう。イヤイヤ期の子どもに対して効果的ともされますが、成長しても対話の基本は共感です。
ここで意識したいのは、共感とは「甘やかし」ではないことです。あくまで相手を理解する共感なので、「嫌だよね、だからやらなくていいよ」という流れは避けておきます。
共感できたら、次は何が問題なのか、どのあたりが気になるのかを尋ねてみるのもよいでしょう。嫌だと思う原因がわかれば、一緒に解決方法を考えることもできます。
「〇〇だからやらないといけないんだよね」
次に、なぜここで自律性を発揮しないといけないのかを説明しましょう。「やらなきゃいけないからやるべき」と説明にならない言い方は効果がありません。
子どもの年齢にあわせて、伝わる方法だと理想的です。
そうは言っても、確実に子どもが納得する説明は存在しません。例えば学校の宿題を嫌がっている子に対し、「やらないと先生に叱られるよ」と脅すのもあまりおすすめできない説明です。
できるなら前向きで、子どもにメリットがある言い方が好ましいです。「この前宿題をやったら〇〇だったよね。楽しく〇〇ができたよね。だから今日もやってみない?」など、行動を起こすと得られるポジティブな面を説明してみるのもおすすめします。
「じゃあ、こうしてみようか」「これから始めたらどう?」
最後は決定です。これも、親が決めて「こうしなさい」というのではなく子どもに決定させる状況を作ります。
- 今嫌なら、ご飯食べたあとでやってみる?
- じゃあここまで一緒にやってみる?
- こっちにする?
さまざまな提案をしてみて、子どもに選んでもらいましょう。もし選択肢がどれも不十分であれば、もっと細かく設定やハードルを下げても構いません。
選び決めることで、子どもの自律心は促されます。また、自分で決めたことを達成できると、成功体験のひとつにもなるのです。
子どもが嫌がることを克服するには?
上記のように、子どもの自律心は大切な要素。ですが、腰が重いことには大人でも自律性を発揮するのは大変です。
これを子どもにも克服してもらうために、5つのステップを知っておきましょう。ママ自身が試してみるのもおすすめです。
目的や理由をはっきりと
まずは、嫌がることをなぜしないといけないのか目的と理由をはっきり説明しましょう。「宿題だからやらなきゃダメ」ではなく、将来子どものやりたいことや、勉強ができるようになって楽しく過ごせる未来をわかりやすく説明し「だから、今頑張ったほうがいいんだよ」と説得することが大切です。
少しずつやるべきことを増やす
次に、少しずつやるべきことを増やしましょう。最初から高いハードルを作るのはNGです。
朝の支度が一つ自分でできた。じゃあ次は、こっちもやってみよう。もし難しければ、一度前段階に戻っても構いません。
ある程度繰り返すと、想像以上にできることが増えているはずです。子どもに「少しずつなら絶対に成果は出る」と教えると、よりモチベーションにつながるでしょう。
やる時間やタイミングを設定する
「いつやっても構わない」のであれば、大人でも後回しにしがちです。「ごはんのあと」「約束のゲーム時間の前に」「寝る前」など、生活リズムに取り入れやすい時間に実行できるよう設定します。
理想的なのは、この「嫌なことに取り組む時間」も子どもに決めてもらいます。ママの言いつけに従うわけではないため、より前向きに取り組めるようになるのです。
長期的なスケジュールを組む
新しい習慣や始めることは、1か月以上繰り返さないと習慣化しないといいます。目標を立ててできるようになるまで、ゆっくり少しずつ長期間の計画を組みましょう。
例えば「来週までにできるようになる」と計画すると、一緒に教えるママも子ども自身も焦ってしまいがちです。せっかく取り組むなら、長期的なスケジュールで安心して進めるようにしましょう。
できるようになったら比較して一緒に喜ぶ
始めに設定した目標を達成したら、親子で一緒に喜びましょう。このとき、「テストで100点が取れた」「受賞した」という結果だけを褒めるのはNGです。
取り組む前にできなかったこと、それから頑張った日々のこと、以前の自分と比べてどれだけ成長したのかを子どもに見せることで「自分もできるんだ!」と自律心を刺激します。
まとめ
よく聞く自律心、自発的行動。これは子どもみんなが持っているもので、ママがアプローチすると促せるもののひとつです。
少し難しい概念にも思えますが、意外と身近なところで自律心は育めます。この記事を参考に、今一度子どもとの向き合い方を見つめ直してみてくださいね。