子どもの心の発達では「自己中心性」という特徴を通過します。自己中心的というと、「わがまま」「自分のことしか考えられない」などネガティブなイメージを持つママも多いでしょう。
ですが、実は子どもの自己中心性は心が発達するために大切な要素であり、これを理解すると子どものぐずりや言い分をママが正しく分かるようになります。今回はそんな子どもの自己中心性とは何か、どのように子どもの心が育っていくのかを紐解いていきましょう。
自己中心性とは?
自己中心性とは決して「性格が悪い」「ママの言い聞かせが足りないからわがままな子に育った」というわけではなく、子どもなら誰もが通る心の成長段階です。
子どもが発達する中で大切な要素とされており、特に~7歳くらいまでの幼児期に見られます。まずは自己中心性について、詳しく考えてみましょう。
物事の中心が自分である認識をしていること
自己中心性とは端的にいうと「物事が自分にとってどう見えるかという視点でのみ外界を認識する」ことを指します。簡単に言い換えると、自分にとって見えている世界がすべてで、自分の考えこそ正しいと認識している状態です。
ママをはじめとする大人は、この自己中心性は通過しているので当然「他人と自分は違う存在で、異なる景色が見えている」と認識します。どんなに一緒の時間を過ごしているパパや我が子でも、ママの考えと完全に同じではありませんし「自分とは違う」と分かりますよね。
しかし、この点が自己中心性のある子どもだと認識があやふやです。意識の軸の中心は常に自分であり、他人がどう考えているかまでは思いやれません。だからこそ、子ども特有のわがままや言い聞かせが通用しない時期が起こるのです。
次第に「脱中心化」する
自己中心性はある程度経つと認識から抜け出し、脱中心化します。脱中心化とは文字通り自己中心を脱することで、「相手と自分では見えている世界や考え方が違う」と理解するものです。
個人差はありますが、脱中心化は7歳ごろ小学生に上がると始まります。ただ、脱中心化が始まったからといってある日突然子どもの聞きわけがよくなるわけではありませんし、思いやりが育まれてきょうだい喧嘩がぴたっと止むわけでもありません。心はさまざまな出来事や会話を通じて、ゆっくりと育ちます。
どうやって自己中心性は育つの?
自己中心性と脱中心化を知ると、ママとしては「早く他人の気持ちを思いやれる子になって欲しい」と思うのではないでしょうか?これは大人の都合がよい子どもに育てているわけではなく、確かに脱中心化をはじめとする適切な心の成長ができる子は、トラブルを正しく解決できる・自分の心に折り合いを付けられるなど本人にとっても過ごしやすいはずです。
個人差があるとはいえ、この自己中心性から脱中心化を目指すには、周りの大人が作る環境を整えてあげるのが理想的です。脱中心化を促すのは人と人とのやり取りを通じた人間関係であり、自己中心性の段階が十分満たされる必要があります。次のステップに進むには、自己中心性と向き合いしっかり理解しなくてはなりません。
子どもの「自己中心性」は悪いこと?
自己中心的というと「自分のことしか考えられない人」「わがまま」とネガティブな印象を受けるママも多いです。子どもには自己中心性があり、だから言い聞かせがうまくいかないと知ってはいても、「我が子の性格が悪くなってしまう」とその発達段階を否定してしまうかもしれませんね。
子どもの自己中心性とは決して悪いことではなく、個人差がありますがどの子も持っているものです。子どもの自己中心性について、少し掘り下げて考えてみましょう。
常に中心に「自分」がいるからこそ幼児期の特徴が現れる
子どもの自己中心的な態度というのは、よく見られるものです。一時的なものなら良いのですが、成長して幼稚園や保育園に通う、小学校に入るなど集団生活が始まると「お友達に迷惑をかけていない?」「うちの子はこれでいいの?」と不安に思うかもしれません。
ただし、子どもはずっと自己中心性が優位なままではありません。この自己中心的な態度とは幼児期特有のもので、子どもだからこそ常に認識の中心には自分がいます。これまで説明したように、子どもは他人との境界がまだあやふやで自分の考えとママを含める他人の考えは異なるということが理解できません。
自己中心性は言い換えると「子どもの主張」でありよく見られることです。「わがままなうちの子を直さなくちゃ」と思うのではなく、ママは我が子の自己中心性を理解するように働きかけるとよいでしょう。「今うちの子は自分自身を確立している途中なんだな」と思うと、子どものぐずりやなんで言うことを聞かないのか、少し分かるような気もしてきますね。
子どもの喧嘩の原因も自己中心性が関係する
きょうだい喧嘩やお友達との衝突、子どもは喧嘩をすることも多いです。これも、自己中心性が発達している証拠。自分と他人の意見が違うことが分かるのは少し先なので、子どもは自分中心の主張を繰り返し折り合いがつかないことがあります。
自己中心性は2~7歳ごろの子どもによく見られます。この頃の子どもは他人を思いやる理解が進んでいないので、喧嘩が起こっても何もおかしくありません。
言い聞かせするときも、「他人のことを考えなさい」と遠回しに言うよりも「○○は○○だからやらないようにしよう」と端的に伝えた方が響くこともあります。子どもの心がどのような成長段階なのか、今一度考えなおしてみましょう。
7~11歳ごろには脱中心化が進む
7歳以降は脱中心化が進むため、小学校では文章から登場人物の考えを読み取る国語や、人の気持ちを考える道徳の授業が始まります。この歳まで自己中心的な考えや態度を持っていても、「当たり前」です。
ママの中には、「小学生になったんだから、思いやりの気持ちがあって当たり前」と思う方もいるかもしれません。ですが、実際にはそんなことはなく少しずつ発達していきます。子どものわがままやお友達とぶつかることも、子どもの成長過程の一つとしておおらかに受け止めたいものです。
子どもの自己中心性と向き合うために
自己中心性を考えてみると、大人でももちろん完全に他人を思いやれているかというとそうではありません。自分の自己中心的な態度に罪悪感を覚えることもあるでしょう。
この子どもの自己中心性は、しっかり向き合って育てることで脱中心化が進みます。3つのやっておきたいことをチェックしていきましょう。
自己中は悪いことではない!子どもを見守る意識を持つ
お伝えしているように、自己中心的というのは悪いわけではありません。子どもの特徴のひとつであり、その点にママが気付いているのなら大丈夫です。
最初から心優しく他人の気持ちを汲み取れる子はいません。さまざまな体験や対話を通して育っていくので、子どもの態度すべてを否定するのではなく受け止めて見守る意識を持ちましょう。
「ママは○○って思ったよ」
例えばお友達と喧嘩したとき、「○○ちゃんはイヤな気持ちになったんじゃない?」とママが教えたとしても、子どもが生活の中で関わる心の言葉のレパートリーが少ないと学びがありません。
ママが子どもに叱るとき、言い聞かせをしたいときは心境を分かりやすく伝えましょう。
- ごはんを食べてくれないから、ママは悲しかったよ
- ○○ちゃんが「○○」って言って、ママはイヤな気持ちになったよ
など、ママの気持ちを素直に話すとよいでしょう。
ただし、子どもには気持ちを伝えるだけです。「だからあなたが悪い!」と責めるのではなく、冷静に伝えるのが大切です。
「○○ちゃんはどんな気持ちだったかな?」
脱中心化に向かうためには、一度他人の気持ちを想像させることが大切です。自己中心性のある幼児期から、少しずつトレーニングしておくとよいでしょう。
ママは「喧嘩したとき、○○ちゃんはどう思ったかな?」と問いかけて一緒に考えるだけで構いません。子どもに正解だけを与えるのではなく、親子で他人の気持ちを考える時間を作ることがポイントです。
まとめ
子どもの問題行動と捉えてしまいがちな自己中心性。その本質は決しておかしいことではなく、子どもなら誰でも通過する心の成長過程の一つです。この時期に大切なのは大人とのかかわりややり取りなので、子どもの心を豊かに育むために毎日のコミュニケーションを大切にしましょう。
【参考】
自己中心性と脱中心化 – スタジオ便り – 児童発達支援事業所 スパーク運動療育 西京極スタジオ – 京都・大阪北部から通えるスタジオ
自己中心性・脱中心化とは何か?ピアジェの背景理論とともに具体例で解説 – Psycho Psycho