子どもには過保護にしたくないし過干渉もしたくない。この「過保護と過干渉」には微妙な違いがあり、両方ともネガティブなイメージを持つ言葉として知られています。
もしかすると混合して考えられているかもしれない過保護と過干渉。今回は両者の違いや、どちらかというと目指したい「過保護な子育て」とは何かを解説します。
子どもにとって悪影響を及ぼすいわゆる毒親にならないために、今からできることをチェックしていきましょう。
過保護と過干渉は別のもの?同じこと?
過保護と過干渉、みなさんはそれぞれどんなイメージを持ちますか?過保護は必要以上に子どもに構って、親がなんでもやってあげる甘やかす印象がありますよね。過干渉は必要以上に子どもに踏み込んで親がなんでも決めてかかる、という想像をするかもしれません。
そう考えると過保護と過干渉は同じ意味合いにも思えます。ですが、この二つには微妙な違いが存在するのです。まずは過保護と過干渉とは何か、その定義を考えてみましょう。
過保護とは親が過度に保護すること
過保護とは、親が子どもを過剰に保護することを指します。例えば、
- 子どもが外遊びが好きだから、庭のあるおうちへ引っ越す
- 子どものために好きなおもちゃをたくさん用意する
- 子どもの望むものを買ってあげる
というのは過保護の範疇に入ります。どれも確かに客観的にみると「甘やかしすぎ」かもしれませんが、根底には「子どものために」という親の思いが隠れていますよね。
過保護な親というのは、ネガティブなイメージを持たれるものの一概に全部が悪いとは言えません。例えばドラえもんのスネ夫のおうちは裕福で、おもちゃやゲームなどを何でも買い与えてあげています。これは甘やかしていると見られがちですが、もし親が答えてあげられるようなリクエストであれば、子どもに対してそれを無視する理由はないと言えるでしょう。
親が子どもの要求に答えてあげることで、子どもは「ママがお話を聞いてくれた」という一種の安心感と満足感を得ます。これは「泣くとミルクがもらえる」という親子の最初のやり取りと同じで、次第に子どもは要求を激化するのではなく満足したことで自立するようになるでしょう。
精神科医の佐々木正美さんは、
「過保護は自立の芽を育て、過干渉は自立の芽を摘む」
「過保護」と「過干渉」の大きな違い。「過保護」に育てると子どもは自立します!
とも提唱しています。過保護はすべてが悪いわけではないので、この点は頭に入れておきましょう。
過干渉とは親が必要以上に干渉すること
過干渉とは、言葉の通り過度に(行き過ぎた)子どもに干渉することを指します。例えば、
- 誰と仲良くするかお友達は親の許す子しか関わっちゃダメ
- 子どもの意思に関係なく習い事や予定を立て、詰め込む
- 今子どもが何をしているのか、携帯電話やスマートフォンの中身までしっかりチェックする
こうした行動は親の過干渉です。「どれも子どものためなのに」と思えるかもしれませんが、頭の良い子とお友達になって子どもにも頭の良い子に育って欲しい、子どもには多彩な趣味・教養を身につけて欲しいといった親の願いは、「親の理想を子どもに押し付けている」だけにすぎません。そこに子どもの意思は反映されていないからです。
過干渉はどの親も避けて通りたい状況であり、また過干渉をしていると子どもの健やかな成長をも妨げます。
過保護と過干渉。目指したいのは「適度に過保護な子育て」
過保護と過干渉の違いが分かったところで、目指したいのは「適度に過保護な子育て」です。過保護であれば何でもしていいのではなく、そこに親のコントロール願望や行き過ぎた甘やかしが含まれていないかを確認したうえで、適切な親子関係を築いていきましょう。
過保護にはメリットも
過干渉にはメリットは一つもありませんが、過保護にはメリットがあります。先ほども説明したように、過保護というのは子どもの心を満たしてあげる親の気持ちが根底にあり、満足した子どもは次第に自立できる点が挙げられます。
例えばおっぱい離れを経験したママなら気付けるかもしれませんが、周りがどんなに「甘やかしすぎ」と言っても、環境や状況が許せば断乳はいつまで引き伸ばしても構いませんよね。そして次第に満足して「おっぱいバイバイ」できる時期がくれば、子どもは自然と自立します。
このように子どもの心を育てるのは過保護の持つ大きなメリットです。
どうして過干渉、過保護になるの?原因を考えて
ただし、過保護は手放しで推奨できるものではありません。先ほどのスネ夫のおうちを例に挙げると、作中でスネ夫が望んでもいない贅沢や喜びもしないおもちゃはひとつも買い与えられていません。これは、両親が「子どもの望むものを」と思っているからこそ。やりすぎな過保護とは、
- 子どもに嫌われたくないから言う通りにする
- ぐずって欲しくない、黙って一人で遊んでいて欲しいからおもちゃを買い与える
と親の都合が実は優先されています。
このような思いで子どものためを装って育児したとしても、子どもにはママ・パパの気持ちは伝わりません。「せっかく“やってあげてる”のに恩知らずな」という思考回路は、まさに子どもに悪影響を及ぼす毒親の考え方です。
目指したいのは「適度に過保護な子育て」
では、目指したいのは適度に過保護な子育てです。これまでご紹介したように、過保護とはすでに「過剰な」という意味も含まれていますが、過保護のメリットだけを生かした子育てだと理想的ですね。
甘やかしているのか子どもの要求に答えているのかというのは、当事者であるママでも見極めが難しいものです。そんなときは今一度なぜ過保護・過干渉になるのかを考えて、子どもをまず優先して尊重することを大切にしましょう。そこに親の都合は含まれておらず、子どもを大切に思っていればとても簡単です。
また、過保護といっても親が優先して子どものことを何でもやってあげるのも控えたいですね。大切に育てるというのは「やってあげる」ことではなく「できるように親が適切なお手伝いをする」ことです。
過保護と過干渉を防ぐために。今すぐできることとは?
では、行き過ぎた過保護と過干渉を防ぐために、今すぐできることをチェックしていきましょう。
子どもとの適切な距離が分かれば、親子関係構築はもっと楽しくなります。
「子どもファースト」か考えてみる
ご紹介したように、親の考えや願望、コントロールしたいという気持ちが優先されていると子どものためにはなりません。子どものことをまずは考えられているか、子どもの意思が尊重されているかを今一度考えてみましょう。
すでにできることなのに、親がなんでも準備してあげて身の回りのお世話をするのは果たして良い過保護でしょうか。そこには、「朝の忙しい時間だから親がやることで楽したい」と子どもの自主性を無視しているかもしれませんね。
もちろん答えられないこともたくさんありますが、気付いたときに一歩引いて子どもに任せることで、度を越えた過保護は防げます。
他人の子と我が子を比べない
過保護と過干渉を防ぐためには、子どもを比較対象に出さないことも大切です。「○○ちゃんに比べてうちの子は」と子ども自身がどうにもできない点を指摘すると、それは子どもにとって過干渉でしかありません。
「うちはうち。よそはよそ」という言葉があるように、子どもにも我が家と他の家庭には違いがある点を分かってもらわないといけません。過保護はむしろメリットがあるともお伝えしましたが、他の家庭ができることでも我が家では不可能なケースもたくさんあるからです。
ママ自身の不安と向き合う
過干渉と過保護には、どちらも親が子を心配に思う気持ちがあります。心配に思うなら何をしても良いのかというとそうではなく、これはママ自身の不安と向き合い自分の気持ちに折り合いをつけるべきと言えるでしょう。
子どもが何かができなくてもどかしく思う、不安に思うのは、自分の願望を子どもに託している証拠です。育児はママの気持ちの余裕がないとどんどん悪い方向に向かっていくので、今一度立ち止ってママ自身も整理すると良いかもしれませんね。
まとめ
過保護と過干渉には違いがあり、どちらかというと過保護な育児にはメリットがあるとご紹介しました。しかし、どちらも「度が過ぎた育児」であることには変わりありません。
目指したいのは適度に過保護な子育て。いつでも子どもの気持ちを無視せず尊重して、親子関係を築いてくださいね。
【参考】
「過保護」と「過干渉」の大きな違い。「過保護」に育てると子どもは自立します!