人間の脳は3歳までに80%、6歳までに90%が完成すると言われています。
この、3歳までの乳幼児期に、赤ちゃんの脳はどう発達しているのでしょうか。
こちらの記事ではママと子どものための心の相談室 こころラボ代表
公認心理師*臨床心理士YUKAが赤ちゃんの脳の発達についてお伝えします。
脳における言葉~言語処理能力~
「赤ちゃんの言葉の習得と3歳までの育児でこころがけたいこと」でお伝えしたように、
産まれてから3歳までにどれだけの言葉に触れるかという環境は、
子どもの言葉の発達に大きな影響を与えます。
これは、子どもの脳の「言語処理能力」(ある単語を聞いた時に、その言葉を知っている単語だ!とわかり、そしてその意味が○○であるとわかるまでにかかる時間のこと)に影響しているのです。
この言語処理能力は子どもの一生に影響します。
多くの言葉に触れて育ってきた子どもは単語を認識して、その意味がわかる!となるまでの時間がとても速いです。
一方で、あまり言葉に触れてこなかった子どもはこのプロセスに時間がかかります。 ここに時間がかかると、その次に続く知識を増やしていくことや、思考へ影響が出てきてしまうのです。
人間の知的活動というのは、言語をもとにしています。物を覚える上でも、考えていく上でも、言葉を使ってその過程を経ていきます。ですから、言語処理能力は、知的活動を行う上で最も大切な基礎となることなのです。
赤ちゃんの脳の発達
産まれたての赤ちゃんの脳はまだまだ作り途中です。
そして生後数年間の間で脳の大半が完成されます。
この脳が作られていくことに影響するのは
・遺伝
・産まれて間もない期間の経験
・遺伝と経験の相互作用
この三つです。
逆に、脳の発達に悪影響となるもの。
それは強いストレスです。
強いストレスを常に感じている赤ちゃんの脳にはコルチゾールというストレスホルモンが多く作られ、そしてこのようなストレスホルモンをたくさん浴びることで脳の構造が変わっていってしまうのです。
強いストレスとは、具体的には身の安全が保障されていなかったり、いつも脅威に脅かされているような状況があげられます。
ママやパパからの日常的な虐待といったことは、この強いストレスにあたります。
慢性的なストレスにさらされていた赤ちゃんの脳は、行動や健康、そして学習においても問題にぶつかりやすくなるのです。
認知発達や言語発達に影響するだけでなく、行動、自己制御、感情の安定性、社会性の発達、心身の健康という全ての面において影響が表れるのです。
逆に、ママなどの赤ちゃんをお世話してくれる人との温かい関わりと安定した関係のある赤ちゃんは、脳の成長も安定していることになります。
脳の神経細胞
人間の脳は1000億の神経細胞があり、その繋がりによってその能力が決まってきます。
産まれてから3歳までの間には1秒ごとに700から1000もの新しい神経細胞のつながりが出来ているのです。
この時期に刺激を受けた神経細胞はどんどん繋がりを増やしていき、
将来その能力を開花させやすい状態になっていきます。
一方で、この時期に刺激を与えられなかったことは、
神経細胞が繋がることもなくなります。
生まれつきの障害で、目の見えない赤ちゃん/耳の聴こえない赤ちゃんというのは、特定の刺激(目が見えない赤ちゃんは視力に関する刺激・耳の聴こえない赤ちゃんは聴力に関する刺激)を一切受けずに育ちます。
これらの赤ちゃんは、ある時期までに外科的手術を受けて見る力・聴く力を回復させないと、大人になってから外科的手術で物理的に見えるはず・聴こえるはずになったとしても、脳がその刺激を処理する力が育たずに、結局見えないまま・聴こえないままで一生過ごすことになるということなのです。
脳は、ある時期までに刺激を受けなかったことに関しては、神経細胞が繋がることなく、そのままその能力が開花することはなくなるように出来ているのです。
こんな実験もあります。
ワシントン大学のクール教授は、7カ月の日本人の赤ちゃんはⅬとRの音を聴き分けられていたが、その3か月後には聴き分けが出来なくなっているということを実験から発見したのです。
たった三ヶ月の間に、日本語で聴き分けの必要のないLとRの違いは、赤ちゃんの脳に「必要のないもの」と判断され、その音の違いを聴き分けられる能力が育たなくなったのです。
子どもに将来、あらゆる能力を開花させてあげるためには、3歳までの乳幼児期に、あらゆる経験をさせてあげることが大切なのは、こういった理由からなのです。
人とのやりとりから学ぶ赤ちゃんの脳
ある時期までに刺激を受けることが大切ということは、十分にわかったと思います。
それでは、赤ちゃんにラジオやテレビでたくさんの言語の音を聴かせといたらいいのか、と思う人がいるかもしれません。
英語だけならまだしも、ママやパパが話すことの出来ないフランス語、スペイン語、イタリア語、中国語、様々な語学を身に着けてほしい!だからその音を聴き分けられるようになるために、3歳までにたくさんの外国語のDVDを観せたり、ラジオを聞かせたりしよう。
この行動は効果的なのでしょうか。
こんな実験があります。
アメリカで9カ月の赤ちゃんを対象に行った実験です。
中国語が母国語でない赤ちゃんを集め、3つのグループにわけます。
1.親戚のおばさんのように、赤ちゃんを抱きながら中国人の実験者が赤ちゃんに話しかける。
2.実験者が赤ちゃんを抱きながら中国語の録画を観る。
3.実験者が赤ちゃんを抱きながら、中国語の録音を聴く。
この3つのグループで、赤ちゃんが中国語を認識するようになったのは、
実際の人間が赤ちゃんに直接語りかけた1グループのみでした。
この実験からも、赤ちゃんは単に「音」をなんでも拾いとって、知識として蓄えているわけではなく、人とのやりとりの中で学んでいることがいえます。
まとめ
産まれて数年の間に劇的に成長する赤ちゃんの脳。
その成長において、
・赤ちゃんのうちからたくさんの言葉に触れること
・言語処理能力は一生の財産になること
・脳の発達に日常的なストレスは悪影響であること
・脳の神経細胞は刺激を受けることで繋がっていくこと
・脳は人とのやりとりの中で言葉を学ぶこと
がわかりました。
ぜひ、これらの知識をご自身の子育てに活かしていきましょう。
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