脳の発達

人間の脳はどのように発達するのでしょう。
脳の発達について知れば、脳科学的アプローチでお子さんの可能性を最大限に伸ばすことが出来ます。

こちらの記事では脳の発達とお子さんへのアプローチについて
ママと子どもの心の相談室 こころラボ 代表
公認心理師*臨床心理士YUKAがお伝えします。

脳の成長について知ることでお子さんの成長に適した関わり方をしていきたいですね。

スキャモンの成長曲線がとても有名ですが、人間の脳は3歳までに80%6歳までに90%が完成します。

人間の脳はそれぞれの部位によって違う役割を担っています。脳は溝によって前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉と分かれています。大まかにいうと、それぞれが以下のような役割があります。

脳の部位と機能

前頭葉

実行機能といって、人間らしい行動(感情のままではなく、考えて行動すること。良い行動を選択したり、何かを我慢したりすること)を行う役割があります。
また、長期記憶といって、一度覚えたらずっと覚えていられる記憶も担っています。
長期記憶は以下のような3種類の記憶についてです。
1.「『指』とは手の先にある5本に分かれたもので、左右一つずつある身体の一部」というような言葉の意味について。
2.お正月におばあちゃんの家に行ってみんなで初詣に行った時、お参り直前に子どもが「トイレ!」と言って人ごみの中トイレに慌てて連れて行った、などというエピソードについて。
3.自転車の乗り方や包丁の使い方など、身体で覚えている物事のやり方

頭頂葉

体の感覚を認識したり、空間認知、読み書き計算に関わっています。
この頭頂葉にケガをすると半側空間失認(右側の頭頂葉が傷つくと、左半分に見えているものを無視する症状)ゲルストマン症候群(字を書けない、計算が出来ない、左右がわからない、などの症状)着衣失行(服を着たり脱いだりすることが出来なくなる症状)などの症状が出ることがあります。

後頭葉

物を見ることや色彩認識の役割があります。
この後頭葉がケガをすると、視力はあるので、見えてはいるけれど、それが何かを認識できない、(よく知っている人の顔であっても、人がいることはわかるけれど、それが誰だかわからないなど)ということがあります。

側頭葉

聴覚や記憶、言葉の理解に関わっています。
この側頭葉をケガすると昔のことは覚えているのに、新しいことが記憶出来ないといった記憶障害声を流ちょうに出すことは出来るけれど、意味の分からない言葉になっていて、コミュニケーションがとれないなどの症状が出ることがあります。

脳の成長

脳には1000億のニューロン(神経細胞)があると言われています。
このニューロンは刺激を受けたものは成長して次々とニューロン同士で手を繋ぎ、3歳までに刺激の受けないものはそこで成長がとまります。

ニューロンは道をイメージするとわかりやすいです。
都市部のように、たくさんの道がある所では移動もしやすく、たくさんの車が走ることが出来ます。
一方で、山間部や人のあまり住んでいないような地域ですと道がとても少なく限られています。その中を移動するのは、出来なくはありませんが、大回りをしなくてはいけなかったり、時間がかかることがあります。

3歳までに刺激を受けたことに関しては都市部のように道がたくさん出来るので、その能力へのアクセスはよくなります。
一方で、刺激を受けなかったことは山間部のように道がほとんど作られないので、その能力を伸ばしていくにはとても時間がかかるようになるのです。

「脳の可塑性」と言って、何歳になっても脳は新しい刺激によって成長することが出来ることがわかっています。交通事故や病気などによって脳の一部に障害を負った人の脳は、その機能を補うように他の部位が発達することがわかっています。

しかし、この成長は限定されたものであり、3歳までの脳の成長は比べ物にならないくらい早くたくさん出来るので、やはり可能であれば、出来るだけ3歳までに成長させてあげる方が効率的です。

ダナ・サスキンドの発見

小児人口内耳外科医のダナ・サスキンドは子どもの人口内耳移植の手術を行う上で、とても大切な発見をしました。

生まれつき耳の聞こえない子どもに、耳が聞こえるようになる装置(人口内耳)を手術によってとりつけることによって、子どもは生まれて初めて「音」が聞こえるようになるのです。

しかし、この手術を何歳でやるかということがとても重要だそうです。前述のように、脳は3歳までに80%が成長するので、「言語を処理する脳神経経路が育っていく時期」より前にその手術を行わないと、意味がないのです。

そして、ザックとミシェルという二人の患者を例にとり、その環境がいかに大切かということについても述べています。

二人とも、1歳になる前にダナ・サスキンドのクリニックに訪れ、人口内耳の手術を受けました。もともとの耳の障害のレベルや、受けた医学的サポートは同じでしたが、この二人の術後は全く違っていたのです。

ザックは裕福な家庭の下に産まれ、母親は耳の聞こえないザックに対しても、自分の喉にザックの手をあてて歌ってあげたり、産まれた時から物理的には聞こえていなくても、聞こえることを前提に接していました。そして1歳の時に受けた人口内耳の手術後は物理的にも聞こえるようになり、小学校3年生時点で標準の読み書きレベルに達したのです。
それまで、手話のみによって教育を受けた大人の識字レベルは小学校4年生程度と言われているので、劇的な達成レベルです。

一方で、ミシェルは貧困の家庭に産まれ、父親には遺伝的聴覚障害もありました。一度はクリニックを訪れたものの、1年程来なくなり、そしてミシェルが2歳を過ぎた頃、やはり人口内耳の手術を受けると再度クリニックを訪れたのです。原因がなにであるか、はっきりは述べられていませんが、ミシェルは手話も発話もあまり上達しなかったということです。

この二人の大きな経過の違いに疑問を持ったサスキンドはハートとレズリーの研究に興味を持ちました。
ハートとレズリーは貧困層の家庭の子ども達の成績を上げる研究をしていました。この研究の結果が、サスキンドの求めている答えに合致したのです。

裕福層の家庭と貧困層の家庭の最も大きな違い。それは言語環境だったのです。豊富な言語でより多くの数によって育てられてきた子ども(一般的には裕福層であるが、経済的背景とは必ずしも一致しない)は学校の成績が良くなり、
質の良くない、少ない数の言葉によって育てられた子どもの成績はよくなかったのです。

脳の成長が著しい3歳までにいかに豊かな言語環境を与えられるか、

これがその子の一生の土台に大きく影響する要素なのです。

参考文献:3000万語の格差 ダナ・サスキンド著 掛札逸美訳 明石出版ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/

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