2015年頃からよく耳にするようになった「非認知能力」。
2020年以降学校教育にも取り入れられるようになりますが、
そもそも非認知能力とは何か、親として子どもにどのようなことを意識して関わっていけばいいのでしょうか。
この記事ではママと子どものための心の相談室こころラボ代表
公認心理師*臨床心理士YUKAがそんな非認知能力についてお伝えします。
ペリー就学前プロジェクト
「非認知能力」が着目されるようになったのは、このペリー就学前プロジェクトの成果の一つです。
2000年ノーベル経済学賞受賞 ジェームス・ヘックマンが1960年代、
アメリカミシガン州において低所得者層の2,3歳の123人に対して質の高い教育を提供し、その後40歳時点まで追跡調査を行ったのです。
具体的には、
・子ども6人に対して先生1人くらいの少人数制
・平日2時間半の授業
・毎週1時間半の家庭訪問
を就学まで提供しました。
この「ペリー就学前プロジェクト」では、もともとIQの低い幼児のIQ向上のためのプロジェクトでした。
長期追跡調査を行うことで、子ども達はIQではなく「非認知能力」を獲得して、
それが40歳時点での
・学歴
・収入
・犯罪率(の低さ)
・持ち家率
・既婚率
などに影響していることが明らかになりました。
非認知能力とは
正式な定義があるわけではないので、専門家によって異なった表現をされていますが、「社会的情動スキル」とも言われ、以下のような能力のことを言います。
・グリッド(粘り強さ)
・忍耐力
・主体性
・自信
・社交性
・協調性
・好奇心
・自制心
・誠実さ
・楽観的な捉え方
これらの能力をを持つ子どもというのは、何か自分の興味のあることを見つけて、それに熱中し、上手くいかなくてもすぐには諦めず、試行錯誤をするようになるのです。
つまり、それは学校での学業への成功にも繋がっていますし、将来、社会においてどんな仕事をするにおいても大切な能力です。
そして、これからAIが進歩する中、単純作業はロボットが行うであろう、私たち子どもの未来には人間ならではの能力、それは創造力であったり、発想力などが特に大切な能力となってくることでしょう。
これらの非認知能力をいかに幼少期のうちにのばしてあげられるかが、その子の一生を左右する土台作りになるのです。
非認知能力を伸ばすには
1.アタッチメント
非認知能力を育てる上で、最も大切なのは親子アタッチメント(愛着関係)です。このアタッチメントが子どもの心が育つ上でも、非認知能力を育てる上でも、大切な基礎となります。
アタッチメントとはママ(などの養育者)が赤ちゃんを愛し、無条件に受け入れることによってママと赤ちゃんの間に産まれる絆のことです。
ママは赤ちゃんが産まれたら、
お腹の空いた時には授乳をして、
オムツが汚れた時にはオムツを取り換えて、
泣いてぐずっている時にはあやして、と心身ともにお世話をします。
この行動により、赤ちゃんの中で「ママがいれば安心」という安心感やママに対しての基本的信頼感を育てることになります。
これらの安心感や信頼感が、アタッチメントにおいて不可欠なことです。
ママと子どもの間にアタッチメントが作られ、心の安全基地が出来ている子どもは、幼少期にどんどん外に向かって探究活動に行くことが出来るようになります。
このアタッチメントが作られていない子どもは、脳の発達が悪かったり、アタッチメント障害という精神科疾患の病気になる子どももいます。
2.子ども自らの遊び
非認知能力を育てる上で大切にしたいことは、子ども自らが行っている「遊び」です。大人にとっては「遊び」や「イタズラ」と見えている子どもの行動。
実はその一つ一つが子どもにとっては「学び」や「実験」、「研究」、「探求」といった能力を伸ばすための行動なのです。この子ども自らの遊びを思う存分にさせてあげることが大切です。
子どもが自ら何かに熱中している時、それは自分で興味のあることを見つけた時です。
そして、その行動の何かに疑問を持ったり、出来るようになりたい!と思ったりしています。
例えば子どものイタズラの鉄板。
「箱ティッシュのティッシュを全部出す」というイタズラは何を学んでいるのでしょうか。
「引っ張る」という行為は多くの赤ちゃんが成長過程のどこかではまることが多い行動の一つです。それには、肩やひじの動きや、手指でつまむという身体の動きがスムーズに出来ないと難しい行為です。これらの身体の動きが出来るようになりたい!と思っているのかもしれません。
または、引っ張ると次々出てくるティッシュ。どうしてこんなに出てくるんだろう?とその仕組みを疑問に思って、よく見て研究しているのかもしれません。その仕組みを究明するために、何枚も何枚も、気づいたらひと箱全部ティッシュを出しているのかもしれません。
まだまだ他に、色々な理由があるのかもしれませんが、いずれにせよ、これらの行動をしている子どもは、主体性を持って好奇心を持ち、集中して、粘り強く活動を行い、満足するまでやることで達成感を覚えます。自分でやりきった時に、それが自信へと繋がります。
とは言え、子どもが興味を示すものは、ママのお財布だったり、携帯だったり、ママが遊んで欲しくない、と思う物であることも多いです。
子どもは(大人もですが)禁止されていることには魅力を感じたりしますよね。そして、大好きなママがいつも大切そうにしている物は、当然気になります。
ですので、お古のお財布におもちゃのお金や不要になったカードを入れて渡してあげるなど、ママが「これならいい」と思える環境を工夫して作ってあげてくださいね。
3.親子のコミュニケーション(会話)
育児・家事(そして働くママであれば、さらに仕事)に追われるママたち。
週末など人手や時間のゆとりがある時はまだしも、
平日の慌ただしいお料理の最中に「ママみて!ママきいて!」の子どもの声になかなか時間を割いて向き合えないこともあるかと思います。
しかし、この親子の会話こそが、子どもの自尊心を育て続ける上で大切なことなのです。最初にお伝えしたアタッチメントは、生後数年間の間で基本的には作られるものですが、子どもはその後、非認知能力を伸ばし続けることが出来ます
その中でも大きな役割を果たすのが、前にお伝えした遊びとこの親子のコミュニケーションです。
子どもは無条件に親を愛し、必要としています。その子どもに注目し、愛を注ぐ行為、それがコミュニケーションです。
子どものしていることに親が興味を持ち、子どもの「みて!」「きいて!」に応えることで、子どもは親から愛されていることを実感し、自分は愛される価値がある人間だ、と自己肯定感や自尊心を育てていきます。
小さい子どもであれば、絵本の読み聞かせを通してこれらの経験をさせてあげるのもいいですね。
まとめ
今の子ども達が成人する2030年代。どれだけの仕事がAIが担って、人間にはどのような役割が必要とされていくのか。その未来に生き抜く力として大切な非認知能力。
ぜひ、幼少期からそれを育てることを意識して、子どもと関わっていきたいですね。
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