育児ノイローゼは離婚理由になる?離婚話がでる前にしておきたいこと

育児中、離婚したいと思ったことはありますか?育児ノイローゼを発症したとき、家事や育児に理解のない夫とはこれ以上一緒にいられないと、離婚を考えるママも少なくありません。

育児ノイローゼを理由に、離婚は成立するものなのでしょうか。育児ノイローゼと離婚の関係について紹介します。育児ノイローゼで離婚してしまう前に、夫婦でするべきことも合わせてまとめました。ぜひチェックしてみてください。

育児中に離婚したいと思うのはどんなとき?

離婚を考える夫婦
Hanakoママwebが行ったアンケートによると、出産後「離婚」が頭をよぎったことがあるママは53%。2人に1人は、離婚を考えたことがあるということです。では、どんなときに離婚したいと思うのでしょうか。いくつか例をチェックしてみましょう。

夫の育児や家事への不理解

育児中に「離婚したい」と思うのは、やはり夫が育児や家事へ理解してくれず、得られないとき。特にワンオペ育児がママの肩にのしかかっている状態では、ふたりの子供のはずなのに、ひとりで育てている気持ちになるというママも多いものです。

夫婦で会話がない

相談したいことがあっても、夫婦の間で会話する機会がない場合も、離婚したいと感じるママが少なくありません。ママは1日中の子供のお世話でぐったり疲れ、子供の寝かしつけのときに一緒に寝てしまうことも多いものです。夫の帰宅時間が遅い家庭では、夫婦で顔を合わせる時間がとても短く、会話したくても時間が合わないということもあります。

ママが子供につきっきり

育児中に離婚したいと思うのは、ママだけではありません。夫が同じように感じることも多くあります。夫が離婚したいと感じる理由のひとつは、ママが子供につきっきりで、自分との時間を持ってくれないと感じるというもの。夫が家事や育児に協力的になることで、お互いが理解し合えるチャンスがあります。ママが子供につきっきりだなと感じるときは、夫も育児に積極的に関わり合ってみるのがおすすめです。

育児ノイローゼは離婚理由にはならない


育児のストレスが大きくなり、育児ノイローゼを発症してしまうことは、特別なことではなく、育児をしている人なら誰でもかかる可能性のあるものです。育児ノイローゼがきっかけで夫婦仲が悪くなってしまうことがあります。育児ノイローゼは、離婚理由になるのだろうかと疑問に思う人もいるかもしれません。裁判所で離婚裁判をして離婚が成立する場合は、成立理由が決められています。育児ノイローゼだけでは、その成立理由には該当するとはいえず、育児ノイローゼが理由に離婚になる可能性は低いでしょう。

裁判で離婚が成立する理由とは

日本では、裁判で離婚が成立する際、離婚理由が民法第770条1項に基づき、次の5つに限られています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

一見、育児ノイローゼは上記の4に該当するかのようにも見えますが、4の場合、判例の多くは統合失調症によるもので、育児ノイローゼは該当しません。夫の家事・育児のへ不理解や非協力で育児ノイローゼになったので離婚したいといっても、通常の離婚裁判では認められる可能性は低いでしょう。

日本の離婚率と主な原因

厚生労働省が発表している「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」によると、2019年度の離婚件数は 21 万組、で離婚率(人口千対)は 1.70 と推計されており、前年に発表された調査結果よりも上昇傾向にあります。

裁判所が公開している資料のうち、「令和元年度 19  婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所」では、離婚理由が掲載されているのですが、1位は夫妻ともに「性格が合わない」であり、続いて2位 夫「精神的に虐待する」妻「生活費を渡さない」3位 夫「異性関係」妻「精神的に虐待する」でした。育児ノイローゼがその中に含まれるであろう「家庭を捨てて省みない」は夫婦ともに5位以下で、実際に育児ノイローゼを理由に離婚している夫婦が少ないことが分かります。

育児ノイローゼで離婚が成立するのはどんなとき?

離婚する夫婦
離婚裁判では、育児ノイローゼが原因で離婚が成立する確率が少ないことが分かりましたが、まったくないわけではありません。裁判の開廷非開廷に関わらず、育児ノイローゼが原因となる離婚が認められるのはどのようなときなのでしょうか。

夫婦関係が破綻している

前述したように、裁判離婚をする場合、育児ノイローゼになったことだけを原因として離婚が成立する可能性は低いでしょう。しかし、育児ノイローゼが発端となり長期に渡り夫婦が別居するなど、夫婦としての生活が破たんしている場合は、離婚が認められる可能性があります。

協議離婚・調停離婚は可能

離婚する方法は裁判を行なうだけでなく、ふたりで話し合いをして離婚を選ぶ協議離婚や、協議離婚で話がまとまらず調停委員が間に入って話し合いを行なう調停離婚の場合は、法定離婚事由は必要なく、夫婦が離婚に合意するかどうかのみが争点となるため、育児ノイローゼが理由で離婚になることもあります。

育児ノイローゼで離婚話が出る前に夫婦でしっかり話し合いを

夫婦
育児ノイローゼで離婚したあとは、生活費の問題や子供の親権争いなど、さまざまな困難が待ち構えている可能性があります。育児ノイローゼが原因で夫婦が離婚してしまう前に、まずは夫婦で育児ノイローゼを発症している現状をどうにかできないか考えることが大切です。育児ノイローゼで離婚話が出る前にしたいことをチェックしてみましょう。

夫に大変なことや手伝ってほしいことを具体的に話す

育児ノイローゼを発症する際、夫の家事・育児への非協力や不理解が原因のひとつになるケースが多くあります。育児に疲れたなと感じるときや、ワンオペ育児に苦しんでいるときには、何が大変で、どのような助けがほしいのかというのを夫に具体的に説明することをおすすめします。

家事や育児に携わったことがない夫は、手伝いたい気持ちはあっても、何をどのように行ったら良いか分からないという場合も珍しくありません。ママが困っている内容と、夫に求める事柄を具体的に示すだけで、問題が解決することもあります。

お互いに完璧を求めない

夫婦がお互いに完璧を求めすぎないことも、重要なポイントです。「理解してもらえるはず」のような「~のはず」という期待は、叶えられなかったときのダメージが大きいものです。期待をしてできなかったことに注目するよりも、期待をせずにできたこと(してもらったこと)に注目することで、お互いが感謝の気持ちを持てるようになります。

育児に関しても、完璧を求めすぎると心が疲れやすくなり、育児ノイローゼの発症リスクが高まります。育児は結果がすぐに見えてくるものではなく、終了があるわけではありません。完璧を求めることは、ゴールがない道を永遠に走り続けるようなものだと言っても過言ではありません。完璧ではなくほどほどという考え方で、ゆったりと取り組んでみてくださいね。

お互いへの感謝の気持ちを伝える

どちらか一方だけの努力で、家庭が成立するものではありません。お互いへの感謝の気持ちを忘れないことだけでなく、それを相手に伝える努力も必要です。育児ノイローゼを発症するママのなかには、自分の行なっていることへの対価が感じられず、育児に一生懸命取り組んでいることが馬鹿らしく感じてしまうという、無気力感を訴える方もいます。感謝とねぎらいの言葉や態度が伝われば、馬鹿らしく感じることはないでしょう。

第三者を交えた話し合いも

家事や育児の負担について夫婦で話し合おうと思っても、どうしてもケンカや険悪なムードになってしまうという場合は、第三者に立ち会ってもらい、ふたりだけでの話し合いを避けるものひとつの手です。ふたりだけで話し合うからケンカになってしまい、離婚の文字がちらついてしまうことも。

お互いの両親や共通の友人、カウンセラーなど第三者を頼ってみましょう。第三者が入ることで、離婚ではなく、夫婦で家事・育児を共に取り組み、家庭を築いていくというゴールがぶれにくくなりおすすめです。

まとめ

育児ノイローゼを発症したことだけでは、裁判では離婚が認められにくいでしょう。しかし、協議離婚や調停離婚の場合は、離婚理由は特に問われないため、育児ノイローゼが離婚のきっかけになることもあります。

離婚すると、経済的な負担や子供の親権争いなど、これまでとは異なる問題も出てきます。育児ノイローゼで離婚という選択肢を選ぶ前に、夫婦でよく話し合いをし、解決の糸口を見つけることをおすすめします。

【参照】

厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」

裁判所「令和元年度  19 婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所」

Hanakoママweb「やっぱり!? 出産後「離婚」を考えたことがあるママは〇%!【ママの本音のYES&NO】」

離婚慰謝料弁護士ガイド「育児ノイローゼを原因に離婚できる?」

 

ABOUT US
【監修】 公認心理師YUKA久保田 由華
公認心理師、臨床心理士。
NY州立大学にてメンタルヘルスカウンセリングの修士号修得。NYCのNPOにてアシスタントサイコロジストとして勤務後帰国。
大学、クリニック、心理相談室等で勤務。7000ケース以上のご相談を担当。

心の相談室こころラボを設立し、カウンセリング以外にも子育てママのためのセミナーやスクール、ママのためのオンラインコミュニティを運営。