「宿題はやったの?ちゃんとやって!」
「テストがあるけど、テスト勉強はした?」
「ゲームは絶対やったらいけないからね」
こんな言い聞かせ、子どもに1度はやったことがありませんか?
育児にあるあるのママの言葉ですが、ではこの言い方が子どもに刺さったかというと「手ごたえはない…」と答える方がほとんどかもしれません。実はこの現象は、心理学の世界で「心理的リアクタンス」と呼ばれています。
今日は子どもへの言い聞かせで知っておきたい、心理的リアクタンスとは何かをご紹介。「どうして言うことを聞いてくれないの?」と悩むママは、この記事を参考にどんな点に気を付けて子どもに思いを伝えればよいのか知っていきましょう。
「勉強して!」は逆効果。心理的リアクタンスとは
結論からいうと、冒頭に出てきた「ママの注意」。これはどの家庭でも見られるもので、決して珍しいことではありません。「うちも毎日子どもに言っているかも」と思う方もいますよね。
実は、この「しなさい!」は逆効果。その原因には心理的リアクタンスがあります。
心理的リアクタンスとは
心理的リアクタンスとは、特定の条件がそろうと見られるものです。リアクタンスを日本語にすると「反抗」となり、心理的に反発したくなる状態を指します。
意見や行動を他人から強制されると反発し、かえって自分の意見に固執すること
「勉強しなさい」と叱ると逆効果になるワケ | 子育てベスト100 | ダイヤモンド・オンライン
心理的リアクタンスは子どもに限ったことではなく、大人にも見られます。みなさんも「やりなさい!」と言われるとやる気がかえってそがれ、「今は違うことがしたいのに」と反抗したくなることはないでしょうか。子どものころに止められていたゲームや漫画が、大人になってから趣味のひとつになったという方も。この現象を引き起こしてしまうのが、ママがやりがちな「しなさい!」の声掛けです。
子育て中に起こる心理的リアクタンスの例
子育て中には心理的リアクタンスが良く見られます。例えば、
- 勉強しなさい!と言われるとやりたくなくなる
- 将来はいい大学に入らなくちゃねと言い続けると違う道を歩みたくなる
- ゲームはダメ!おかしも食べちゃダメ!と厳しくするほど嗜好品に固執する
これらはよく見られること。なぜなら、ママは子どものことを心配し子どもを第一に考えるあまり、先回りして子どもに強制してしまうからです。
勉強しないとテストで困ったり、授業についていけないのは子どもです。良い大学に入らなくちゃと思うのも、ママが学歴で悩みを抱えた結果からかもしれません。ゲームもおかしも、やりすぎは禁物で子どものためになりませんよね。
この言い聞かせは完全にゼロにできるわけではありません。ただし、子どもがその通りに行動するかというとそうではなく、ほとんどの場合で効果が見られないでしょう。
では、どのように言い聞かせをすればよいのでしょうか。心理的リアクタンスを理解したうえで、子どもへの声掛け方法について考えていきましょう。
心理的リアクタンスをどう活用する?子どもへの声掛け方法
「そうはいっても、勉強しなさいって言わないとずっと勉強をしない…」と思うママもいますよね。心理的リアクタンスを理解すると、「しなさい」以外にもアプローチ方法はたくさんあることに気付きます。子どもへの声掛けで意識したいポイントを見ていきましょう。
子どもに何でも選ばせる
強制する代わりに「子どもに選ばせる」のもひとつの手段です。例えば、
- 「今から宿題する?それとも〇時になってから宿題する?」
- 「進路が決まらないのも分かるから、○○高校と○○高校の見学に行ってから決めたらどう?」
- 「あと〇回失敗したらゲームはおしまいにしようか」
など子どもに選択肢を与えると行動に区切りがつきやすいでしょう。極端な話ですがママが「宿題しなさい!」と言うと、宿題でつまずくと「ママが宿題しろって言ったから…」と子どもは責任転嫁してしまいます。一方、自分で選んだことに対しては少なからず「自分が決めたこと」と責任が持てるので守りやすくなるのです。
選ばせるといっても、ママが言葉や態度で「選んで欲しくない方」を示すのは逆効果。あくまで子どもの自主性を大切にし、選んだものは必ずママも協力してやり遂げると達成感にもつながります。
一緒に勉強する、遊ぶ
「勉強しなさい!」と一方的にぶつけるより、数分でよいのでママと一緒に勉強した方が大きな効果が見られます。時間が許すのなら、子どもの宿題を「見てあげる」のではなく「一緒に問題を解く」「協力する」のが大切です。
勉強が好きで宿題をやる子には、根底に勉強や学習に対する興味があります。知的好奇心が高く「もっと知りたい」から自ら進んでできるのでしょう。一方で勉強は嫌いだけどこなしている子は、「親や先生から叱られたくないから」という考えがあります。消極的な意欲のままでは、いくらママが「勉強しなさい!」と言ってもやる気は起こりませんよね。
子どもと一緒に学習するのは、付きっきりでなくても構いません。最初の10分程度でよいので子どもがつまずいた部分にヒントを出し、宿題に対するストレスを軽くしてあげるだけで進み方は各段によくなります。
親子で一緒に約束を作る
心理的リアクタンスを感じるのは、特に学習面です。子どもに宿題をさせることで精いっぱい、これ以上ぐちぐち言いたくない…と悩むママは実際多いことがわかります。
そこで、親子で一緒に約束を作りましょう。先ほどの「選ばせる」ことにも通じますが、ルールがあれば子どもも「やるべきこと」の優先順位を付けられます。
ルールは必ずママが一方的に決めるのではなく、子どもの意見も反映させましょう。現在の子どもは学校でさまざまな学習・活動をし、習い事や交友関係などやるべきことがたくさんあります。帰宅すると一息つきたくなるのは、大人でも理解できますよね。
「家に帰ったらすぐ宿題」と決めるのではなく、子どもが疲れると感じるなら「30分テレビを見たあと、おやつを食べたあとで宿題に取り掛かる」など配慮することが大切です。子どもにあわせたルール・約束をすることで、心理的リアクタンスを感じず「自分から宿題ができた!」と子どもの自信にもつながるでしょう。
心理的リアクタンスで勉強嫌いに…子どもの意欲を取り戻す方法
強制すればするほど逆効果。そうは分かっていても、子どもを心配するあまりしつこく「やりなさい」を続けてしまうことは多いです。
では、心理的リアクタンスによって勉強嫌いになってしまった子どもは、もう二度と意欲を取り戻さないのでしょうか?これまで心理的リアクタンスを知らず、逆効果を続けてしまったママに向けて、子どもの興味を戻す方法をご紹介します。
つい強制してしまって子どもが勉強嫌いになった…
心理的リアクタンスで困るのは学習シーン。強制してしまうあまり子どもが宿題をやらなかったり勉強嫌いが加速したりして、悩むママは多いです。
とはいえ、子どもの勉強に対する考えには興味深いデータもあります。東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の調査によると、子どもの勉強嫌いは年齢が上がるごとに増えていくことがわかりました。小学生よりも中学生が、中学生よりも高校生が勉強に苦手意識を持つようです。
これは、小学校低学年のころには理解できていた勉強が、年を重ねるごとに難しく専門的になるからと言えそうです。つまり、難しくて分からないと勉強嫌いは加速します。
ママが「勉強しなさい!」と言うから勉強嫌いになったわけではありません。もちろん理由の一つにはなりますが、勉強が分からないと「そもそも何が分からないのか分からない状態」に陥り、負の循環が始まってしまうのです。
子どもの興味を引き出す
では、どのように勉強への意欲を取りもどせばよいのでしょうか。これには、子どもが勉強に興味を持つと意欲は復活します。
いきなり難しい宿題を強制するのではなく、前段階の理解しやすいところから復習するのもおすすめです。また、苦手な勉強よりは子どもが好きと思えるカテゴリを学習した方が効率的なので、子どもの興味を知っておくのも一つの手段です。
学習は午前中がおすすめ
学習する環境を整えるのも、一つの手段です。宿題などやるべきことは比較的疲れていない午前中が取り掛かりやすいです。「金曜日の宿題をその日のうちに終わらせる」のではなく、翌日のお休みに取り掛かってもよいかもしれませんね。
午前中の学習は学校に通うために実践するのはなかなか難しいのですが、集中力の高い午前中に長期休暇中の宿題を済ませておくといった使い方ができます。
まとめ
つい言ってしまう「しなさい!」という声掛け。ですが、心理的リアクタンスが起こると逆効果です。それ以外のアプローチはいくつもあるので、我が子に合わせた意欲の引き出し方を続けていきたいですね。
【参考】
「勉強しなさい」と叱ると逆効果になるワケ | 子育てベスト100 | ダイヤモンド・オンライン
お家で使える!育児を助ける心理学④ | おやこ心理相談室 群馬県のカウンセリングルーム
なぜ子供はなかなか宿題をやらないのか…「心理的リアクタンス」を乗り越えるための3つのコツ 「自分のことは自分で決めたい」という本能 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)