今の子どもに大切な要素である「考える力」。さまざまな情報や関係であふれる現代社会を生きる子どもは、自分にとって何が必要かを選び取るために思考力が求められます。
考える力はさまざまなもので作られていますが、そのうちの一つが「クリエイティブさ」です。考える力とクリエイティビティもまた、相互関係にあるといいます。
今回は子どものクリエイティブな部分をどうやって見つけるの?クリエイティブって何?という疑問を、スタンフォード・オンラインハイスクールの校長を務める、哲学博士の星 友啓先生著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』を参考に解説します。
- 子どもにもママ自身にも「アイデア力が足りない」と感じている方
- 子どもの自由な発想をなかなか引き出せていないと思うママ
- わが子が他の子とはなんだか違う…と感じるママ
- クリエイティブな子にさせるために意識したいポイント
- 子どもの独創性をどう伸ばすか、どう向き合うかを解説
- クリエイティビティの持つ本当の意味
「クリエイティビティ」とは?まずは押さえておきたいポイント
そもそも、クリエイティビティとは何でしょうか。クリエイティブというと、何か変わったものや奇をてらったアイデアを指すイメージがありますが、ここでいう「クリエイティブ」には定義があります。
子どもの思考力を支えるクリエイティビティを、まずは押さえておきましょう。
クリエイティビティとは?
クリエイティブなものとは、斬新でかつ役立つものであること
『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』著:星 友啓
『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』には、このように定義されています。
人と全く違う意見だけがクリエイティブではなく、また例え個性が現れていても何の役にも立たないものは、本当のクリエイティブとは言いません。
「変わったこと」と思われがちですが周りに迷惑のかからない有意義なものこそが、クリエイティブであり考える力の基本を作る「アイデア」だということをまずは頭に入れておきましょう。
脳科学から見るクリエイティビティの仕組み
クリエイティブというと、どんなイメージを持ちますか?
- 生まれもっての才能
- 特別な子にだけ与えられた能力
- 普通の意見しか思い浮かばない私はクリエイティブになれない
など、なんとなく「特別感のある能力」に思えますよね。
また、右脳と左脳の働きの違いに着目したとき、クリエイターは感性が豊かであることを理由に「右脳を鍛えてクリエイティビティを高めよう!」「クリエイティブな子に育てるためには芸術に触れさせないと」といったうわさを耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、最近の脳科学では「クリエイティブさというのは、右脳と左脳どちらも働かせて作るもの」「脳の一部分を働かせるものではない」ということです。
クリエイティビティとは、脳の主要部分を構成する3つの脳内ネットワークが複雑に絡み合って生まれる働きです。
- 中央実行ネットワーク:考えて動かす部分、集中したときに活躍するところ
- デフォルト・モード・ネットワーク:集中せずぼうっとした状態で動く部分、妄想や発想が生まれるところ
- 顕著性ネットワーク:集中モードとぼうっとしたモードを切り替えるところ
つまり、右脳だけを極端に育ててもクリエイティブな子にはなれませんし、「クリエイティブのために座学は必要ない」というのも間違った考え。何かに突出した才能を持つ場合は、そのほかの働きは弱いのかと思いきや、著名なクリエイターはこの3つの脳のネットワークがバランスよく発達していることがわかっています。
クリエイティビティは遺伝する?
こんなことがなかったでしょうか。クリエイター気質な友人は、家庭内もやっぱりクリエイターが多い。筆者は芸術大学を卒業したまさに「クリエイターの教育を受けた身」ですが、音楽活動や芸術活動をする友人の両親は、やはり同じ活動家やその道の家庭が多い傾向にありました。
実際にクリエイティビティは遺伝するのかを、一卵性双生児で検証したデータが残っています。双子の一人がクリエイティブ職に就いている場合、もう一方もクリエイティブ職に就いているのは調査対象全体のうち70%だったそう。
この研究からいえるのは、「7割程度はクリエイティビティは遺伝し、残りの2~3割は遺伝しない」ということです。
クリエイターに囲まれた学生時代を送った私自身も、「遺伝した部分」は大いに感じています。小さなころから私が興味を示した本と音楽だけは惜しまず与えてくれた両親の元で育ったため、環境がクリエイティビティを構成したのかもしれません。ですが、こうした環境や遺伝は70%程度しか反映されず、あとの30%は個人的な意思とトレーニングによって鍛えられます。
「生まれつきうちの子はクリエイティブさはないみたい」とあきらめず、ママがクリエイティビティを理解して、子どもの独創性を伸ばすことは可能です。
クリエイティブな子になってもらうために必要な要素
クリエイティブさは遺伝するものではなく、鍛えることは可能。さらに「右脳だけをトレーニングする」という極端なことをしなくてもよいことがわかりました。
子どもは本来自由で柔軟なアイデアを持っています。この子どもの独創性を今よりももっと引き出すために、何をすればよいのかを見ていきましょう。
心のすき間時間を作る
先ほど脳内の3つのネットワークがクリエイティビティを構成するとお伝えしました。なんとなく「脳を鍛える」というと、しっかり勉強も文化的な活動も、運動だってやりこまなきゃ!と張り切ってしまいがちです。
しかし、3つのネットワークのうち「デフォルト・モード・ネットワーク」はぼうっとしないと働きません。
クリエイティブさを求めるために、習い事やお勉強を詰め込むと逆効果。心のすき間時間ともいえるぼうっとする時間がないと、クリエイティブな子にはなれないのです。
最近忙しくしているというご家庭は、休憩して親子でゆっくりする時間を作ってもよいかもしれませんね。
ごっこ遊びを大切に
想像力や発想力を育むのにぴったりのトレーニングは「ごっこ遊び」です。
子どもは大人も考えないような想像力で、見立て遊びやままごと、ごっこ遊びをします。これを大人は邪魔せずに、優しく見守る姿勢が大切です。
もちろん周囲の迷惑になるようなごっこ遊びはストップをかけるべきですが、例えおもちゃを正しく使っていなくても「そんなものあるわけないじゃない」と大人からみて意味の通らないものでも、一度子どもの想像を信頼して自由に遊ばせてみましょう。
逆境はクリエイティビティを育てる
子どもには逆境を与えたくないと先回りして考えてしまいますが、実は歴史に残るような芸術家はみんな逆境を乗り越えている特徴があります。
聴力を失ったベートーヴェン、共感できる友人と喧嘩別れをし耳を切り落とすまでのストレスに晒されたゴッホ、悲惨な人生を送り愛する人との間にせっかく子を授かったにも関わらず、死後に評価を受けたモディリアーニなど、芸術家は決して恵まれた環境で育ってはないことがわかります。
だからといって子どもに逆境をわざと経験させるのは違いますが、厳しい状況になってそこからどうクリエイティブなアイデアで乗り切れるかが、大切なポイントです。
「子どもには悲しい思い、悲惨な状況を味わってほしくない」という親の思いは、子どもを大切に思うからこそ。しかし、困難や挫折というのは能力を伸ばすこともできるため、あれこれと口を出さないのもまた愛情かもしれません。
うちの子はほかの子と違う?悩んだママが考えたいこと
クリエイティブさを掘り下げて考えると、やはり「他の子とは違う発想力」「少しだけ変わり者」という表現がぴったりくるかもしれません。
しかし、クリエイティビティとは「斬新で役に立つ能力」。他の子とはなんだかわが子は違って変わっているけれど、これをどう伸ばせばよいのかがいまいちピンとこないこともありますよね。
クリエイター気質とは、幼少期の頃から特徴があるといわれています。他の子とは違うのかも…とママが感じるのは、その「クリエイティブな子の特徴」に当てはまるからでしょう。
この能力は子どもの個性です。個性を「役に立たないから」「変わっているから」で潰してしまわないように、ママ自身もクリエイティビティと考える力の関係性を正しく認識しましょう。
そのうえで、子どもの個性を認めてママ自身もポジティブにとらえられると、親子関係はよりよいものになるかもしれませんね。
まとめ
クリエイティブな子になってもらいたい!と思うママも多いですし、考える力とクリエイティビティは深く関係しています。しかし、クリエイティブさに隠された勘違いや、才能だと決めつけて諦めてしまうことが多いのも、私たちママのよくある考えですよね。
子どもは元々、大人も想像しないような自由な発想を持っています。わが子の能力を信じて、上手に鍛えていきましょう。