赤ちゃんの言葉の習得と3歳までの育児で心がけたいこと

産まれたての可愛い赤ちゃん。
この赤ちゃんも1年後には動き回り、2年後にはおしゃべりもするように成長します。

赤ちゃんは言葉をどのように習得していくのでしょうか。

こちらの記事ではママと子どもの心の相談室こころラボ代表
公認心理師*臨床心理士YUKAが言葉の習得についてお伝えします。

チョムスキーとスキナーの理論

言語学者として有名なチョムスキーはヒトは生まれながらにして脳に言葉を獲得出来る仕組みが組み込まれていると主張していました。
この仕組みのおかげで、赤ちゃんは生後2,3年の短い間に爆発的に言葉を獲得しているというのです。

一方、心理学者のB.F.スキナーはオペラント条件付けよにって、子どもが言葉を発したときの周りの大人の反応により赤ちゃんは言葉を習得していく、と主張しました。

例えば赤ちゃんがまだ単語も言えない時に「ま、ま、まー、まま」と音だけを言っている中でたまたま「まま」と言ったときに、
ママが「そうよ!ままって言えるのね~。〇〇ちゃんのままよ!」などと、子どもの発言に対してポジティブな反応をしていると「まま」という音を出すとママが喜ぶ、ということを赤ちゃんは学びます。

そして「まま」をたくさん言うようになり、「まま」「ぱぱ」「ばば」などの違いから、何が「まま」を示すのかも学んでいく、ということです。

このチョムスキーとスキナーは言語習得に関して論争をしていたことも有名です。

ハートとレズリーの研究

アメリカの社会学者ハートとレズリーの研究は、子どもが聞く言葉の数の違いと言語習得の関わりを発見しました。

二人は生後約9カ月の42家族を3年間、毎月一度一時間訪れて、そのやりとりを全て記録して、そのデータを分析しました。

それまでは研究には中流社会の子どもたちだけがターゲットとなっていましたが、ハートとレズリーの研究ではあらゆる社会経済レベルの家族を対象としていました。

そしてその結果、以下のようなことがわかりました。

・子どもの聞く言葉の数に大きな差があり、それは家庭が裕福か貧しいかと関係があった。(裕福な家庭は1時間に2000語、貧しい家庭は1時間に600語)
・子どもに親がどのくらいよく反応しているかも差があった。(よく反応する親は1時間に約250回、あまり反応しない親は50回以下。)
・言葉による「承認」の数も大きく違った。(多い家庭は1時間に40回、少ない家庭は1時間に4回と1/10の数)
・よく子どもに話す家庭は、子どもが小さい頃からずっとよく話していて、3歳の終わりまでに4500万語を聞き、あまり話さない家庭では3歳の終わりまでに1300万語しか聞かない。その差は3200万語。
・3歳の時に子ども自身が話す言葉の数は、多い家庭では1116語で、少ない家庭は525語。
・家庭での言葉の環境が3歳時の子どものIQの高さと関係している。
・聞く言葉の数以外にも、
  ・禁止や命令形は子どもの言葉の成長にマイナス
  ・言葉の数だけではなく、語彙(言葉の種類)の豊かさも大切。
  ・親同士がよく話す方が、子どももよく話す

この研究後、同僚の他の研究者がこの子ども達を調査したところ、3歳までに聞いていた言葉の量と、9、10歳時点での言語スキルや学校の成績とが関係していたということです。

経済格差と子どもの成績

人間の脳は3歳までに80%が完成すると言われています。
この3歳までにいかに多くの言葉を聞いたかということが、その子の言葉の知識や学校成績に影響してくる、というのは納得の出来る研究結果です。

そして、これまでの社会では学校での成績が収入の安定した仕事や、収入の高い仕事に就ける確率と強く関係していたので、それが経済格差に直結していたのも理解出来ます。

また、裕福な家庭は学習機会(高校の卒業率が大学への進学率など)が高く、親の知識も高くなりやすい環境にあります。そしてその裕福な家庭に生まれた子どもには、生まれた時から多くの言葉に触れられる環境にある、というサイクルの中で、貧しい家庭の子ども達の成績が悪くなりがちという悪循環が出来上がっていたのです。

3歳までの育児で心がけたいこと

3歳まで~子どもの脳の80%が完成されるまで~に出来るだけ多く語りかけること、会話をすることをママやパパは心がけたいですね。

その時に注意したいことが
・子どもによく反応すること
・出来るだけ多くの語彙(言葉の種類)を使うこと
・禁止や命令形をなるべく使わない
・子どもを認めるような声掛けを多くする
・子どもとの会話だけでなく、他の家族間での会話もたくさんする
といったことです。

この時に次のようなご相談がよくあります。

1.まだ話さない赤ちゃんに話しかけるなんて独り言みたいで恥ずかしい

大人(や言葉で会話出来る人)とばかり会話している生活の中で、赤ちゃんが産まれたら、初めは戸惑うことが多いと思います。もともとあまりおしゃべりではないママにとって、言葉を返してくれるわけでもない赤ちゃんに話しかけることは難しいかもしれません。

そんな時には、ナレーターになったつもりで、ママの行動や赤ちゃんの行動を実況中継してみましょう。

「あら、泣いてるのね。どうしたのかな?
さっきおっぱい飲んだからオシッコ出たのかな?
ちょっとオムツ見せてね。
あ、やっぱりオシッコ出てるね。
オシッコ出たの教えてくれたのね。
ありがとう。なんだか濡れて気持ち悪かったね。
じゃあ、オムツ替えようね。
はーい、じゃあ、お洋服パッチンして開けるよ。
ちょっとスース―するかな?
オムツ、びりびりってするからね。
あ、オシッコいっぱいだね。
じゃーって出たね。
おしり拭きで拭くよ。
ちょっと冷たいかな。
新しいオムツに変えるからね。
あー、さっぱりしていい気持ちだね。
そしたら、お洋服のボタンもとめようねー。」
と言った感じです。

赤ちゃんはオノマトペ(擬音語や擬声語など)が大好き。スース―、びりびり、じゃーじゃー、などイメージしやすいオノマトペをたくさん使うことをお勧めします。

2.語彙を増やすって言っても、どうしたらいいの?

ママやパパがまずはお勉強しましょう。笑。
新聞を読んだり、本を読んだり。

その時ママ(パパ)自身が興味のあることでいいので、本や新聞を読むことによって、知識と語彙を増やしていきましょう。

このママ(パパ)が本を読んでいる姿を見せることも大切です。子どもは親の行動を見て真似る「モデリング」という学習方法をよく使います。
本好きになって欲しいのであれば、ぜひママが読書する姿も子どもにたくさん見せてあげてくださいね。

そして、子どもにも絵本を読んであげることです。
子どもの絵本には、様々な物があります。

月齢の低い赤ちゃんには引きつけられる絵とオノマトペの絵本など特におすすめです。

子どもの成長や興味に合わせて、少しずつストーリー性のあるお話や、大好きな車や電車が出てくる絵本など、図書館で色々な本を借りるのもいいですね。

3.子どもがやめて欲しいことばかりするから、つい「ダメ!」って言ってしまう

子どもをのびのびと育てたい!と思っていても、危ないことばかり/ママがして欲しくないことばかりするから、ついつい「ダメ!」が多くなってしまうご相談、よくあります。

まずは、ママが子どもに触れられて困るものは手の届かないところに片付けるなど、環境整備をしましょう。

そして、子どもがどうしてその行動をするのか、何をやりたいのか子どもをよく観察してみましょう。子どもの行動は子どもにとって全て意味があります。

ママが困ると感じるのはママ側の事情。子どもの立場にたって、何をしたいのかを理解することが出来れば、「ダメ」と言わない環境をママが整えてあげることが出来ます。

例えば、ママのお財布からお札を出して破ろうとしていたら、代わりに広告や新聞紙、折り紙などを手渡して、「これなら破っていいよ」と提供できますね。

また、ママのダメラインをもう一度振り返ってみてください。子どもの行動には全て意味があります。子どもなりに成長するためにとっている行動です。もちろん、命や重大な事故に繋がりかねない危険なことは、ママが子どもを止めて危険であることを教えてあげる必要があります。

でも、子どものイタズラにはどうでしょう?「ダメ!」と言ったママの言葉の背景にはどんな事情や気持ちがありますか?
・片付けが面倒臭い
・余計な仕事を増やさないで欲しい
・大切な物だから壊されたくない

どんな理由でしょう?

育児は毎日のことですから、ママにとってストレスが大きくなったり、ママが我慢することは結果的にママのためにも子どものためにもなりませんので、やめて欲しいです。

ですが、「子どもの成長のため」と思ったら、片付けもそんなストレスと感じない、ということであればママの「ダメ!」が少し減るかもしれませんね。

まとめ

赤ちゃんが産まれたその日から育児が始まります。
赤ちゃんも(お腹にいる時からですが)産まれてから、ママやパパなどの関わり方などの環境の影響を受けて成長していきます。

3歳までの関わりは、子どもの一生を左右する土台作り。ぜひこの時期の子どもには、科学的根拠のあるアプローチで子どもの可能性を最大限にしてあげたいですね。

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